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2017.04.27

ラシーヌのジョージアワイン

 引っ越してからのラシーヌにお邪魔するのはこれが初めて。外界の悪い気を遮断する特別な空間だというのは噂で耳にしていましたが、実際に入ってみると、人でごった返していながら、確かに静謐かつ清涼な気配があり、天井が低いにもかかわらず上方への伸びがあって、実際の部屋の容積よりずっと広い教会にいるかのような気になります。

 部屋に入るなり、社員の方に、「ついにカヘティの赤ワインを入れました」と言われました。合田さんも「ジョージアを扱っていながらカヘティの赤を入れないとはカヘティが分かっていない、と言われてきたもので」。まさに私がカヘティの白ではなく赤ワインのファンであることなど知っているはずもないのですが。

 カヘティの黒ブドウ、サペラヴィはゴツい品種です。もりもりしたパワー感が直接に胸ぐらを掴む感じ、線の太い隈取な感じが、私にとっては魅力的なのです。私はワインに関しては相当に守備範囲が広く、「らしい」ならなんでもいいぐらい緩いスタンス。そしてなんといってもジョージアの微甘口赤ワインが好き。しかしラシーヌはそうではなく、ゆえに今までサペラヴィの扱いがなかったことは当然だと思います。


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 その新たに入ってきたニコロズ・アンターゼのサペラヴィは、まさにサペラヴィ嫌いな人のためのサペラヴィといった味。すっきりとして骨格が細く、過剰性がなく、パステル画ではなくペン画的な精密さと彩があります。合田さん曰く、サペラヴィの種を取ってムツヴァネの果皮と種を加えて発酵・熟成したもの。それはすごいアイデアです。サンジョベーゼ100%のワインが嫌いな人が、サンジョベーゼとマルヴァージアを混醸した、みたいなもの。もちろんサペラヴィらしくはない。でも、ワインとしては見事です。


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 イメレティの赤ワインにも不思議なものがありました。ゴギタ・マカリゼのツィツカ・オツハヌリ・サペレです。オツハヌリ・サペレ単一だときつい味で薬みたいなものですが、フローラルでしなやかなツィツカをブレンドすることで上品になりました。両者ともに、いかにもラシーヌ仕様の赤。普通はどんな味かを知っている人にはものすごく楽しめるはずです。

白に関しては樹齢100年というルカツィテリに驚かされました。普通ならルカツィテリはそんなに好きではない私でも脱帽する他ない、並外れた凝縮度と複雑性と垂直性。この色気があまりない品種からこれだけの味を引き出すことができるとは。

合田さんとはいろいろな話をしていました。ひとつのトピックは、亜硫酸についてです。ジョージアは亜硫酸無添加と言っても、ワインに直接添加しないだけで、実際はけっこうな量の硫黄をクヴェヴリの中で燃やしているため、クヴェヴリからワインに溶け込みます。かの有名なアラヴェディ修道院のワインもパワーはあるにせよ、この点については粗末なもので、飲んだら頭が痛くなりました。しかしクヴェヴリをどうやって殺菌するのか。洗浄でさえ恐ろしく大変なのに。彼女が言うとおり、ジョージアのワインは基本、「家庭で造るどぶろくみたいなもの」で、それがいいのですが、「商品として日本で売るとなると、そんないい加減で不安定なものでは困る」。とはいえ亜硫酸大量添加も困る。「ジョンさん(フェザンツ・ティアーズ)みたいにお金がある人は機械を買えるけど」。これは真面目に考えねばならない次の課題です。木の皮のブラシでこすって海綿でふき取るのが伝統ですが、その程度ではやはり亜硫酸が必要でしょうし、なによりその重労働は想像しただけでぞっとします。キルヒャーの高圧洗浄機、高温スチーム掃除機、ポンプをセットにして揃え、小さいマラニを回ってクヴェヴリを洗浄する役目の人が必要かも知れません。

「ジョージアからワインを買うのだから、ジョージアらしい造りのワインでなければ意味がない」と、合田さんは言います。だから「あらゆる金属はマラニから撤去だ」、と。ところが最近は皆さんそこそこ普通の醸造器具(金属製)を設置していたりします。ラシーヌが扱うラマズ・ニコラゼもそうで、「新しいセラーにはステンレスタンクがあって、クヴェヴリから抜いたワインはそこに入れるでしょう」と言うと、「だからラシーヌ用のワインはこれからタンクを使わないようにしてもらう」。ラマズさんのワインは素晴らしいのですが、タンクに長く入っているとどうしても味がぺたっとしてこじんまりしてしまう。今年のヴィンテージが期待ですね。

それにしてもジョージアワインは以前と比べて洗練された味になりました。クヴェヴリ臭くないし、素直で、ピュアで、きめ細かい。ジョージアで感じたことは、ラシーヌのワインからも同じように感じることができました。数年前のワイルドな味の記憶で止まってしまっている人は、最新のワインを飲んでジョージアの進化を体感してください。

 

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