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2017.04.02

スペイン、リオハ3 ファウスティーノ

 幕張で行われたフーデックスで試飲したいろいろなワインの中で、一番おいしいと思ったのは、ふらりと立ち寄ったファウスティーノのブースで飲んだリゼルバ・ファウスティーノⅤ2009年でした。瓶がなんとなく安っぽいし、ラベルのセンスも田舎臭いのですが、それもまた古典リオハのファンにとっては魅力的です。
 ファウスティーノといえば、1861年創業、650ヘクタールもの畑を所有する、リゼルバとグラン・リゼルバに関する最大メジャー生産者です。輸出市場で売られるグラン・レゼルバの半分はファウスティーノ、スペインを含めても三分の一だと聞きました。マドリッド空港の免税品店、といったイメージ。長年のワインファンなら皆お世話になってきたワインなはずですが、有名すぎて、ワインファンはあえて飲むことがないかも知れません。私も以前に飲んだのは30年も前だと思います。私の記憶の図書館の中でのワイン分類では、ファウスティーノのグラン・レゼルバは、バルビのブルネッロ・ディ・モンタルチーノやピオ・チェザーレのバローロ等と同じ書架に収まっています。当時は、正直、そこまでいいワインだという印象はありませんでした。
 

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▲グラン・レゼルバ・ファウスティーノⅠは、26か月アメリカンオークとフレンチオーク樽で熟成、3年以上瓶熟成。テンプラニーリョ、グラシアーノ、マズエロの古典的ブレンド。誰もが記憶しているだろう特徴的なレンブラント風ラベルは、美術愛好家だった三代目ファウスティーノ・マルティネスが、ワインもまた美術であることを表現すべくデザインした、と聞いた。フロストガラスの瓶もまた特徴的だ。

 ところがいま飲むと、このワインの素晴らしさがよく分かります。よい土地の味がします。老舗大手だけあって、優れた畑を所有しているのでしょう。よいワインはよいテロワールから。こればかりはどうにもなりません。何より、いかにもリオハ・アラヴェサ地区な味だというのが、いまになればよく理解できるのです。飲んだあとの印象は、昔の涼しめの年のジュヴレ・シャンベルタン、それもグラン・クリュから斜面の上の一級の味。若干のハーブ的な香りと赤系果実風味がもたらす冷涼感、くっきり感、しっかりした酸が、石灰の強いリオハ・アラヴェサの魅力です。もちろん30年前に飲んだ時にはそんなことは分かりませんでした。しかしそんなことも分からずにファウスティーノについてあれこれ先入観を持っていてもしかたない。目の前の宝石をただの石ころとみなすのと同じ愚行です。
 このワイナリーにはアポもなにもなく立ち寄ってみました。午後6時閉店のところ、到着は5時50分。門番さんに「ワインショップに行きたい」と言うと、オフィスに連絡してくれ、担当者が出てきました。工場然としたワイナリーから帰宅の路につく人たちが続々出てくるなか、併設のセラードアに行くと、質に対してずいぶんお買い得な値札に気づきます。アメリカやオーストラリアのワインの値段と比べたら、とんでもなく安い。「そう、ファウスティーノはお買い得価格ですよ!」。特にリゼルバは半ケースぐらいどの家庭にも常備しておいてもいいぐらいの値段です。3本買ったらさらに割引という告知がおいてあったので、さらに安い。レジで支払いすると、ちょっと値段が違います。「あそこに値引きの告知がありますよ」と言うと、「ああ、あれはクリスマス用プロモーションだった。そのまま下げるのを忘れてた。でも確かに値引きすると書いてあるのだから値引きしますね」と。もう3月も下旬です。クリスマスの販促物がそのままというのも、なんかのんきでいいですね。スペインの田舎に来た感じがします。

 

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▲ログローニョ市の北にあるワイナリーに併設された地味なセラードア。世界じゅうに輸出される最大ブランドとは思えませんが、これが味があっていい。
 

 多くの人がリオハのグラン・レゼルバに対して間違った印象を持っていると思います。もやっとして泥臭い味だと思ったり、アメリカンオークっぽい味だと思ったり。はっきりと言いたいのですが、ちゃんとした、状態のよい古典リオハは、びっくりするほど抜けがよく、すかっとした味です。それと温かさややさしさや柔らかさが共存しているのがすごい点なのです。

 

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