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2017.04.07

オーストリアのブラウフレンキッシュ

 

 ブラウフレンキッシュがこれほどしっかり認知される時代になったのか。オーストリアから生産者3人が来日し、オーストリア大使公邸でブラウフレンキッシュ・セミナーが行われたことそれ自体が驚きです。

 たぶん20年前は、ブラウフレンキッシュと言っても誰も知らなかった。10年前は、よほどオーストリアワインに詳しい人しか知らなかった。長年のブラウフレンキッシュファンとしては、現在の状況は喜ばしいかぎりです。

 とはいえ、「ブラウフレンキッシュが好き」という人が、そうそういるとは思いません。なぜならブラウフレンキッシュは「好き」という感情が似合わない、つまり冷たい表情や客観性、暖簾に腕押し的透明性を備えている品種だからです。

 セミナーで講師をされた坂本さんも、ブラウフレンキッシュはピノ・ノワールやシャルドネと並んで地質の違いを明快に描き出す品種だ、と言っていましたが、それはブラウフレンキッシュのもつ貴重な特性です。私は実はピノ・ノワールが、一般に言われていることとは逆に、それほど無色透明だとは思っておらず、むしろブラウフレンキッシュのほうが分かりやすいと思うほどです。

 ライタベルク、アイゼンベルク、ミッテルブルゲンラントの、ブラウフレンキッシュの三大DACに加えて、ノイジードラーゼーDACエリアに含まれるゴルスのワインが登場しました。片岩、石灰岩、砂、粘土という違いは明瞭すぎるほど明瞭です。どれがブラウフレンキッシュらしいのか、というのが議論の的になるでしょう。私は、この品種はもともと硬質で引き締まった味わいが最大の魅力だと思います。ゴルスのワインのようにふっくらとソフトで酸がおだやかなブラウフレンキッシュも好きですし、アイゼンベルクの丘の麓の平地のローム土壌のワインも厚みのある質感とダイナミックなタンニンも魅力的ですし、ミッテルブルゲンラントの粘土質土壌がもたらす緊張感と濃厚さと腰の安定感も頼りがいがあっていいとは思いますが、そういう方向性ならオーストリアのブラウフレンキッシュではなくとも世界じゅうでいろいろと候補がありそうです。もちろんオーストリアワインファンにとっては、これらのワインのほうが合う料理が多いので、忘れてはなりません。

それでもやはりカベルネ・フラン、シラー、ヴェスポリーナ的な方向性のほうが、つまり堅牢な骨格と緻密な質感と上昇力のある香りを備えたかっこいい味のワインのほうが、らしい、と思えます。その点では、ライタベルクとアイゼンベルクの丘の斜面のワインを基本にしたいと、改めて思いました。片岩がいいのか石灰岩がいいのかは気分で変わりそうです。個人的には酸の締め付けが心地よい石灰岩のワインに惹かれます。というのも、私にとってブラウフレンキッシュは、片親が白ブドウの品種らしい、色は紫でも味はどこか白ワインっぽい味のワインだからで、その白さは石灰岩の時に最も表現されると思うからです。

ですから肉を焼いた時に、赤ワイン系のソースと白ワイン系のソースのどちらがワインに合うかをチェックしてみて欲しい。ライタベルクや片岩のアイゼンベルクは白ワイン系ソースです。

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▲アイゼンベルクのサイブリッツ。これはグラン・クリュ中のグラン・クリュだと思っていて、片岩系ブラウフレンキッシュなら、私はこれが好きです。緻密、流麗、高品位。味わいの透明感が素晴らしく、簡単には口をきいてもらえない距離感がまたいい。ヴェレナー・ゾンネンウーアのブラウフレンキッシュ版というか。

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▲ミッテルブルゲンラントの中でも名高い、デュラウ畑。粘土ですから、重心は下。サイブリッツとはいろいろな意味で対極にある味ワインです。若いうちはゴツイので、熟成してから飲むべきワイン。2009年でもまだ飲み頃ではありません。この生産者はビオディナミに転換してからの進歩が大きく、質的には直近のヴィンテージが一番いいと思えます。


エスタハージー(最近とてもおいしくなったと思います、昔のように樽臭くない)から来ていたジェネラル・マネージャーのステファン・ツェッペさんに、ライタベルクに関して以前から気になっていたことを質問しました。

「ライタベルクの認可品種になぜグリューナー・ヴェルトリーナーが含まれるのかまったく理解できません。ライタベルクはグリューナーの産地ではありませんし、これは誤解のもとでしょう」。

「その通りなのだけれど、そこには政治的な理由があります。ライタベルクのエリア内に位置するDonherskirchen村だけがなぜか伝統的にグリューナーを植えていたからです」。

「ではなぜルストが含まれないのですか」。

「彼らは自由都市としての誇りがあるし、アウスブルッフの産地だし。しかし現在は甘口ワインにこだわっていても売れないだろうから、近いうちに、ああライタベルクに加わっておけばよかった、と思うようになるのでは?そうなることを期待しています。地質的にはライタベルクそのものだし、実際に素晴らしいブラウフレンキッシュを生産しています」。

ルストは本当においしいワインの宝庫ですし、ブラウフレンキッシュ、ピノ・ブラン、シャルドネに関してはライタベルクとして発売し、アウスブルッフだけは自分たちの専売にしておけば、マーケティング的にも分かりやすくなり、ひいては商売繁盛につながり、さらに彼らの伝統の尊重にもプライドの満足にもなるのではないか、と思います。

 

オープンサンドイッチが並んでいたのでブラウフレンキッシュと合わせてみました。合うのは、黒パンにクリームチーズを塗って、上に万能ねぎの小口切りを散らしたものです。ねぎの青い部分がブラウフレンキッシュ的。垂直性とすっきりした香り、ということです。だいたいロワールのカベルネ・フランが合う料理には、ブランフレンキッシュが合うものです。そう考えれば、いろいろなレストランでも使いやすいはずです。

 

 

 

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