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2017.04.26

アルザス、クリスチャン・ビネールのセミナー

 ビオディナミワインファンのあいだで長きにわたって圧倒的な支持を得てきたクリスチャン・ビネールがアルザスから来日し、テイスティングセミナーを行いました。

 
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▲最近醸造所を新築したそうです。広いので、次のヴィンテージが来ても前のヴィンテージをそのまま熟成させ続ける余力ができました。それは大きな進歩です。


 十何年か前、つまり彼がまだ二十代の終わりだった頃、ドメーヌを訪れたことがあります。その時元気いっぱいに対応してくれたのは奥さんでした。クリスチャンは静かに後ろで仕事をしていました。しかし三年前に離婚したそうです。私にとって以前のビネールのダイナミックな味、色々細かい問題点はあってもそれを上回るパワーで納得させてしまう味は、奥さんのキャラクターの反映だったような気がします。クリスチャンは見るからに真面目な人です。話の内容もそうでした。だから今のビネールは、以前とは傾向が違います。ひっそりとして求心的です。

 ドメーヌがあるのはAmmerschwihr村です。けっこう土が厚い場所だと思います。それがワインに出ています。つまり、びしっとした骨格・構造のワインではありません。この村のグラン・クリュ、ケッフェルコフもそうです。それを分かって買うなら、ビネールの丸さは役に立ちます。多くのアルザスワインは、とりわけリースリングは、普通の日本の料理に対して表情が厳しすぎ、酸が鋭角的すぎ、骨格が固すぎ、だからです。

 セミナーの中で彼がこう言っていました。「最近のアルザスのヴァン・ナチュールの生産者は酸を求めて収穫が早すぎ。自分は熟したブドウを収穫する。そのほうがあとからうまくいく」。私も同感です。収穫が早いのは辛口にするからです。アルザスで完熟にすると往々にして残糖のあるワインになってしまいます。ないしは酸が下がります。ヴァン・ナチュールは、特に日本での認識は、亜硫酸添加量の少ないもののようですから、残糖があっても酸が低くても亜硫酸添加量は増えてしまい、望まれるスペックになりません。

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▲ラベルデザインを一新したのは、過去を振り切るためのようです。



 完熟して亜硫酸添加するのと、未熟で亜硫酸無添加にするのと、どちらがいいかと言えば、私は前者です。ワインは果物のお酒ですから、熟しているのはすべての前提だと思います。気温が高くなりすぎて辛口ワインができない時代になってしまったのなら、現在の品種はやめてもっと晩熟品種を植えるか、今の品種でもっとアルコールが上がらないクローンを開発するか、それともなんらかの方法で光合成を抑制するか、もっと根本的な解決を見出していくべきです。

 完熟させてもビネールのワインには酸が保たれるのは、彼の畑の位置に理由があると、今日はじめて気づかせていただきました。地図上の彼の区画を見ると、どこもかしこも森のすぐ脇、つまりクリマの中では端に位置していることが分かります。それは現在においては、生態系の多様さという意味においてもものすごいアドバンテージだと思いました。

 ビネールでは亜硫酸無添加バージョンも作っているはずですが、今日出されたワインは瓶詰時に少量の添加をしているものです。商売を考えたらそれは正しいでしょう。

 

 隣室では試飲会が行われていました。その中で最も気に入ったワインは、パスカル・ランベールのシノン・ロゼです。ものすごくチャーミングで上品。華やかで伸びやか。やさしいフルーティさにぶれない骨格。赤ワインよりずっといいと思います。シノンのロゼでまずいものはほとんどありません。シノンのテロワールの秀逸性はロゼにするとものすごくよく分かります。これで2500円。それは安い。

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