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2017.04.02

スペイン、リオハ1 ラ・リオハ・アルタ

 Muga,Cune,Rodaと有名なワイナリーが軒を連ねるアロの町に、ラ・リオハ・アルタがあります。1890年に創業されたリオハ古典中の古典です。

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▲庭園のように手入れされたワイナリーの中庭。訪問は3月21日でしたが、もう桜が散っていました。

 1990年代のモダン・リオハ・ムーブメントはずいぶん昔の話になり、最近は世界中どこでも古典リオハが再評価されているようです。多くのワインがある意味似たようなスタイル(似たような味とは言いませんが)になる中で、数年ものあいだ樽熟成されるリオハのグラン・レゼルバの特別な味わいが、他では得られない個性として広く理解され、尊重されるようになったのは素晴らしいことです。
 リオハ・グラン・レゼルバの魅力のひとつは、酸化熟成風味にあります。熟成ワインが好きな人なら、よい酸化もあれば悪い酸化もあると分かっています。しかしなんであれ酸化を嫌う傾向が多くのプロのあいだに見られるということは、私のそれなりに長いジャパンワインチャレンジで副審査委員長としての経験から知っています。とはいえ十年前は古典タイプのスペインワインが出品された時は過半数の審査員が点数を下げたのに対して(私は常に「それこそが...スペインの魅力だ」と主張し続けていましたが)、最近ではむしろ「らしさ」としてプラスに判断されるようになったということも知っています。
 ラ・リオハ・アルタの旗艦ワインは、グラン・レゼルバ890です。その次に位置するのが940です。940は4年樽熟成、890は6年樽熟成。940でさえ見事なワインですが、890は別格です。何に似ているかといえば、70年代や80年代のコート・ド・ボーヌであり、サンテミリオンのコートです。あの味わいは今のブルゴーニュやボルドーからは逆に得られないような気がします。

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▲セラーには25000個もの樽が並ぶ。940、890ともに、樽はアメリカンオークとフレンチオークの併用。澱   引きは6か月ごと。品種別に熟成され、3年後にブレンド。
 

 熟成してタンニンや酸がしなやかになるというのは容易に想像できますが、リオハの場合は最初から決して荒々しいわけではありませんし、酸もおだやかです。では何が熟成によって得られるのかといえば、むしろクッキリ感なのです。並のテロワールのワインだと、熟成させても丸くはなってもクッキリとはしませんし、往々にしてもんやりした味になってしまいます。逆に偉大なテロワールのワインだと、熟成によって、若いころは果実味の中に隠れていた堅牢なミネラル感や、驚くべきことに鮮やかな酸が表現されるようになるのです。
 この品質のポイントは、樽です。写真はワイナリー内にある樽工房です。古い樽をきちんとメインテナンスし、劣化した板材を新しい板材に取り換えつつ使うことで、ありがちな汚い古樽臭さや悪い酸化のない、生き生きとした味わいがもたらされるのです。

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▲驚くほど整理整頓された樽工房。アメリカンオーク樽は地元リオハの樽メーカー、フレンチオーク樽はフランスの樽メーカーが製造するが、メインテナンスは自ら行う。

 酸に着目するなら、940より890のほうがずっと酸がくっきりして、後味がフレッシュ。そして心地よい味わいが何分も続きます。890の現行ヴィンテージは2004年。冬のあいだの多雨が地中に十分な水分をもたらしたおかげで、そしてそのあとは好天に恵まれたおかげで、水分ストレス感のない、極めて流麗で抜けのよい、ディティール豊かな味わいです。これを飲むと、スペインワインとしては相当に高価ですが、890は世界のトップレベルのグラン・ヴァンの中に正当に位置づけられるべきワインだと分かります。

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▲リオハのグラン・レゼルバは、発売時に飲み頃になっていながら、何十年でも瓶熟成する不思議なワイン。

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▲グラン・レゼルバ890、2007年の色調。このレンガ色から想像できる寛ぎ感と、想像が難しいフレッシュ感の、飲んだ人だけが分かる奇跡的な両立。一度でも経験すれば、誰もが忘れられなくなる。

 

スペインワインというと、安くておいしいというジャンルと、最先端でおもしろいというジャンルのワインを日本ではよく目にします。古典リオハは、日本のワインファンの中ではあまり人気がないのかなという気はします。いわば、わかりきった味、なのかも知れませんし、あえて書くこともないワイン、なのかも知れません。確かに昔からリオハを飲んでいる人にとってはそうでしょう。しかし私は、スペインのワインがレストラン(業種業態を問わず)やショップに浸透している現在の日本では、このようリオハがきちんと評価される素地がしっかりできていると思います。

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