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2017.04.12

ヴィーニョ・ヴェルデ

 ポルトガルマニアでなくとも、今やヴィーニョ・ヴェルデの白ワインは日常生活に不可欠なワインになっているという人は多いはず。ここ数年、日本ではヴィーニョ・ヴェルデ・ブームといえる現象が起きています。日本に輸出されるヴィーニョ・ヴェルデの数字を見てみると、2014年は170,702リットル、398,112ユーロ。2015年は246,023リットル、596,741ユーロ、2015年は272,648リットル、726,286ユーロと、驚くべき伸長。ワイン市場が安定飛行している日本でこの数字、とりわけ価格の伸びが数量の伸びを上回っていることはすごいですね。

 30軒のワイナリーがポルトガルから東京に集まって行われた試飲会も大盛況。このイベントのことを先日他の試飲会で偶然耳にしてよかったです。セミナーも二回行われたようですが、もちろん満席で、聴講不可。次に機会があれば私もヴィーニョ・ヴェルデの話を聞いてみたいものです。  ヴィーニョ・ヴェルデは、ポップな響きのある名前からすると最近できたワインっぽいですが、産地としてはポルトガルで最も古いところのひとつで、2000年前からブドウ栽培が行われ、中世にはすでに北欧やイギリスに輸出されていたそうです。場所はポルトガル北西部ですから、輸出には好都合ですね。地質は花崗岩がほとんどで一部シスト。だからワインは基本的にふっくらなめらかで、酸もあたりが優しい。すっきりしていながら、キツさがない、というのはとても貴重な個性。他の国のすっきりタイプのワインは性格がもっと激しい気がします。スケール感もこじんまりしているため、インパクトはありませんが、余韻は案外と長く、いい土地なのだなと分かります。

 45もの栽培品種(それにしてもポルトガルは地場品種の宝庫!)のうち、主要な白品種はアルバリーニョ、ロウレイロ、トラジャドゥーラ、アヴェッソ、アリント。単一品種ワインも多いのですが、伝統的には3品種ぐらいのブレンドだとのこと。アルバリーニョは骨格がしっかりしてリースリング的な直線性があり、ロウレイロは軽やかでフローラルでミュスカ的、トラジャドゥーラは甘く、酸が低く、トロピカルなフルーティさがあってゲヴュルツ的、アヴェッソは硬質で酸がはっきりして強く、若干の苦みもあってソーヴィニヨン的という印象。アリントは今回の試飲ではよく把握できなかったのですが、飲んだワインはやさしくすっきりおとなしいフルーティさ、という感じです。一本だけ選ぶなら、ブレンドのほうが多面性がありますし、上から下まで味が伸びるので使いやすいと思います。

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▲あか抜けて欲張らない味わいが素晴らしいQuinta de Santa Cristina。ベーシックな左端のワインはArinto,Azal, Loureiro,Trajaduraのブレンドで、さっぱりしつつ適度な複雑性と柔らかさがあり、多くの日本料理店にお勧め。アルコールは11度。右のAlvarinho&Louriro, Alvarinho&Trajaduraのブレンドはより熟度が高く、表現力が豊か。それぞれの品種が期待通りの役割を果たしています。Avesso品種なら、Quinta do Ferroがよい。標高300メートルと600メートルふたつの畑それぞれのアヴェッソの違いは教科書的に分かりやすく、使いやすい。

 しかし品種の個性を理解して料理へピンポイントに合わせるなら、単一品種ワインの明確な個性は役に立ちます。ヴィーニョ・ヴェルデがもっとも生きるシチュエーションを考えるなら、初夏から夏の陽光のもとでのランチ用、また軽い前菜用ワインでしょうから、その点では陽気で軽快なロウレイロが一番いい。フランスワイン的な方向性の堅牢さ、芯の強さ、そして酸の力強さを求めるなら、アヴェッソです。プロやマニアが高く評価しそうなキャラクターです。

 アヴェッソは酸が強いので、スパークリングワインにも向きます。泡は世界的に人気なので、将来性のあるスタイルではあります。しかし私はシャンパーニュ方式の泡には反対です。このことについてはある生産者と相当語り合いました。シャンパーニュ法の問題はふたつあります。それは必然的に長い澱上熟成をもたらすから、ワインの味が複雑になるかも知れないがすっきり感や軽やかさが失われる。そもそもヴィーニョ・ヴェルデ(グリーンワイン)の意味とは、収穫後半年以内にリリースされるワインということ。フレッシュな風味やビビッドな活力こそが本質中の本質なのではないでしょうか。もうひとつは、二次発酵によって1・5度のアルコールが生成されるため、ブドウをそのぶん早く収穫せざるをえないことです。つまり未熟なブドウで造るワインになってしまう。これまたヴィーニョ・ヴェルデの最大の魅力のひとつは香りの華やかさでありボリューム感なのですから、未熟なブドウではそれが失われてしまい、何がしたいのか分からないワインになってしまいます。この問題はヴィーニョ・ヴェルデだけの話ではなく、スティルワインに好適な産地で同じブドウでシャンパーニュ方式でスパークリングワインを造るすべての場合に当てはまります。

 そういうわけで、泡を作りたいなら、方法はふたつです。ひとつはシャルマ方式で気圧3バール程度に仕上げる。これなら澱っぽさや無意味な熟成感から逃れられ、6気圧にするよりはまだ熟したブドウを使えます。もうひとつはアンセストラル方式です。たぶんこれが一番いい。きちんと熟したブドウが使えます。そもそも昔のヴィーニョ・ヴェルデは瓶内MLFによって若干の泡があったらしいですから、珍奇に受け取られることはないでしょう。  30軒、200種類以上のワインが並んでいて、感心させられるのは、どれも揃って上質だったこと。こういった場ではすっとんきょうなワインやまずいワインも紛れるものですが、そういうへんなワインが一本もない。産地の底力がどれだけ高いか分かりますし、生産者のあいだでの情報や技術の共有ができている(他の例を挙げるならシャンパーニュやプロヴァンス・ロゼでしょう)のだと想像できます。ただ、それは反面、予定調和でおもしろくない、と言う人もいるでしょう。あまりにどれもが判で押したように似たワインになってしまうと、最近スペインのルエダに対して言われているように、工業的、との批判も生まれかねません

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▲Adega Ponte de Limaは会員数2000軒、50万リットルの生産能力をもつ協同組合。ここのロゼの、肩肘張らずにいい感じに流した、性格のよいチャーミングな味が素敵です。写真の女性がワインを造っています。

 ところでヴィーニョ・ヴェルデは白だけではありません。おすすめはロゼです。ふっくら、しっとり、かわいらしい、というこの産地の個性が、ロゼに期待したい特徴と重なり合って、とりわけ魅力的です。ロゼを飲まれたことがない方は、見つけたら是非試してみて下さい。

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