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2017.05.12

Wineplat11社合同試飲会

 インポーター約30社と契約してワインの検索から発注までを一貫して行うことができるワインの総合プラットフォーム、Wineplatがサービスを開始し、11社のインポーターのワインを集めた合同試飲会が銀座で行われました。まずはB to Bサービスから始めたようです。11社の商品を試飲するために各社ごとの試飲会に行くには時間的に大変ですし、そもそもそれぞれの会社から案内が来なければ試飲会があることさえ分からなかったのですから、このワンストップショッピングはとても便利だと思います。卸値が会社をとわず一律というのもいいですね。ちなみに出展者は、会場で配られたカタログのページ順に記すと、BMO、JSRトレーディング、イーストライン、いろはわいん、ヴァンクール、ヴァンクロス、ラフィネ、布袋ワインズ、オルヴォー、和泉屋、ディオニーでした。

年内には一般消費者向けサービスも始まるようです。どういう形になるかは分かりませんが、Wineplatの試飲会に消費者が参加してインポーターからその場で購入できるなら、買ってみて失敗した、ということがなくなります。インポーターにとっても小売価格で消費者に直接販売するなら利幅倍増です。試飲せずに正しいワインを選ぶためには尋常ではない経験と知識が要求されるので、試飲販売は常にありがたい機会です。

パリやリールやリヨンやストラスブールで行われているヴィニュロン・アンデパンダンのサロンを思い出します。生産者が何百人も集まって直接消費者に試飲販売する場です。数千本のワインを試飲してそこから必要なワインを打率10割で選ぶことができる。Wineplatも将来は東京ドームやビッグサイト借り切りで、日本の数百のインポーターの数千種類のワインを直接試飲販売するイベントを秋冬に開催し、数万人のワインファンがそこでワインを買うような仕組みになるかも知れません。まあそうなった時は、普通の人は酔っ払いますから、8時間連続で1000本のワインを飲んだらとんでもない醜態が繰り広げられる心配がありますね!

 

会場には一時間しかいなかったので残念ながら入って左側にブースを設けていた会社のワインしか試飲できなかったのですが、気に入ったワイン、興味深いワインのいくつかを紹介します。

 

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Sylvin Raspaut
 Tangerine 2015
          希望小売価格(以下同)3400

 ルーション、カラマニーの造り手です。シャルドネ75%、ソーヴィニヨン・ブラン25%。温かい果実味と、やさしい酸と、明るいミネラル感。カラマニーのシャルドネ・ソーヴィニヨンなど今まで選択肢の中にありませんでしたが、そして飲む前までは期待もしていませんでしたが、飲んでみてびっくりの素直においしいワインです。ルーションらしいスケールの大きさが印象的です。

 

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▲Un Pas de Coteの薄い色あい。

 


Le Temps des Cerises
 Un Pas de Cote 2015 3780

 ラングドック、オート・ヴァレ・ド・ロルブ(サンシニャンのあたり)の造り手。グルナッシュ100%、MC法、ピジャージュもルモンタージュもナシ、低温発酵、SO2無添加。想像できる通りの薄い色とふわーんとした酸とかわいらしいストロベリー風味とたっぷりとした旨み。同時にくっきりとしたミネラル感と適度な緊張感があって、サンシニャンあたりの内陸で標高が高めの個性も備わっています。スタイル的には流行りのヴァン・ナチュールといえばそれまでですが、完成度が高く、スタイル先行のワインになっていません。写真左のルーションの2本を飲んだあとだと特に、内陸ラングドックらしいタイトな骨格がよく分かります。

 

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▲Ferdinand Ablarino。写真は生産者のホームページから

 


Ferdinand
 Albarino 2015 
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初めての収穫体験が2006年フランス、ルーションのモーリー、という若きEvan Frazier2010年に創立したワイナリー。彼はアルバリーニョ、カリニャン&グルナッシュ、テンプラニーリョの、計3種類のワインだけを造ります。モーリーからスペインはすぐですし、ルーションはカタルーニャの一部ですから、当主がスペイン品種に興味をもつのは自然な流れだったようです。

ブドウはカリフォルニア、ローダイにあるMarkus BokischVista Luna畑産です。この畑にはヴェルデホやグルナッシュ・ブランもあります。カリフォルニアの気候を考えてもシャルドネやカベルネを栽培するよりそれらスペイン品種のほうが理にかなっていると思います。実際ナパのイングルヌックでも19世紀にはパロミノが植えられていたと聞いたことがありますし、何がふさわしい品種なのかを再考すべきなのです。とはいえ生産者だけで議論しても市場がなければ売れません。消費者のほうでも、クール・クライメイトを意識して海岸沿いか山の上の畑のワインを追い求めるだけでなく、既存産地でどうすればいいのかの議論を進めるべきです。

ローダイはさらさらの砂質土壌が多いはずですが、Vista Luna畑は砂利質ローム。このワインも軽快感と同時になかなかがっちりとした芯があります。アルバリーニョらしい垂直性と明快なエッジ(芯はソフト)とタイトな酸。鮮やかなレモンやミントの香り。後味は意外とふわんとしているのがカリフォルニアらしいところ。ローダイのような暑いところですから、収穫は730日と8月1日という早さ。7月収穫とはすごいですね。    

ローダイの生産者組織が制定したLodi Rules(見てみると総ページ数141ページ!)を遵守してCertified Greenの認証を取得しています。オーガニックではありませんが、この認証を取得するためには人的物的側面を含めて、負荷がかからないナチュラルな方向の造りしかありません。醸造も自然酵母で温度調整なしにニュートラルオーク発酵。新世代カリフォルニアらしい意識の高いワインです。

 

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Sebastien Riffault
 Sancerre Akmenine 2012 
  3800

 メインストリームのサンセールはくっきりはっきりしたソーヴィニヨン・ブラン品種の個性を前面に出したワインです。しかしこのワインは10月半ばに収穫して貴腐が少しついたブドウを樽発酵した、相当に酸化的な味。無濾過無清澄SO2無添加で、色は濁った薄茶色です。これでINAOの検査が通ってサンセールのアペラシオンが取得できたことが不思議なぐらいです。2007年からビオディナミ。かのルネッサンス・デ・ザペラシオンのメンバーでもありますから、既に親しんでいる方も多いでしょう。

 これを飲んで思ったのは、パスカル・コタにも似ているな、です。コタは古典中の古典ですね。貴腐のサンセールも実はそんなにアブノーマルではなく、コタの95年を思い出します。伝統の味という側面もあるのです。50年前のサンセールを継承しているだけだと生産者は言っているそうですが、それは理解できます。とはいえさすがに酸化しすぎだとは思います。同じワインを樽熟成させずに、つまりホイリゲの形で飲めば、どんなにおいしいことかと想像してしまいます。ミネラルの高密度感に関しては、収量30hl/haということもあって、圧倒的ですから。

 大事なのは、サンセールは「サンセール」であって、「ソーヴィニヨン・ブランのひとつ」ではないと前提すること。そのあと、「ではサンセールとはいったいどんな味のワインであるべきなのか」を考えねばなりません。

 

 

Dsc02801 Mas de L’Escarida  Sote Mon Soleu Merlot 2015   2800

  Fai Virar Gamey 2015 3500

 

 2012年に創業、2014年に醸造所を建造したばかりという新しい注目の生産者です。産地はローヌですが、有名アペラシオンの居並ぶ場所からは遠く、モンテリマールの西側、標高500メートルのモンダルデッシュ自然公園の南にあります。ポジティブなエネルギーが感じられ、柔らかく広がる果実味のピュアさが素晴らしく、酸もソフトかつビビッドで、かつ能天気にならない陰影感もあります。標高の高い三畳紀の砂岩土壌、という味です。

 無清澄無濾過SO2無添加ですが、不安定さや混濁感はまったくありません。当主のローラン・フェルはオーガニック農業コンサルタントとしてキャリアをスタートさせただけあって、知性に裏付けられた情熱が感じられます。20年前にSO2無添加というと相当アヤシイものもありましたが、今ではほんとうにクリーンで安定したものが多くなりました。もはやSO2無添加は特殊動機用珍品ではなく、普通です。

 メルロは全房でMC法で発酵。ガメイもMC法で、フリーラン果汁を別のタンクに移して7か月かけて発酵し、残糖15g/lの時点で瓶詰めして発酵を進めた、最終残糖5g/lの弱発泡ワイン。特にメルロは構造がはっきりして凝縮度も高く、余韻も長く、高品位です。テロワールのポテンシャルが高いことが分かります。アルデッシュのワインに近年注目が集まっているのも当然だと思いました。

 

 

Mure Cremant d’Alsace Cuvee Prestige NV   3100

 ルファック村の老舗、デメテール認証ビオディナミ生産者ルネ・ミューレは既に確たる地位を築いています。彼らが造ったワインでおいしくないものを飲んだことがありません。

これは彼らが買いブドウで造るクレマンです。クレマン・ダルザスは案外とぺたっとした味のシンプルなものが多く、肩透かしになりがちですが、これは大変に複雑で、味に立体感があり、なおかつクレマン・ダルザスに期待したい抜けのよさと緊密なミネラル感があります。香りや酸等々いろいろな要素のバランスがよく、うまい造り手なんだな、と改めて思います。

輸入元オルヴォーの資料をそのまま引用させていただくと、

“キュヴェ プレステージ”は、平均樹齢30年の5種類のブドウを小樽と大樽を使用して、18ヶ月熟成させ、その後”ソレラ”のような方法で貯蔵したワインを加えてボトリング。2次発酵に移り、さらに18ヶ月の熟成を経て出荷されます。5種類のブドウをブレンドする事で、複雑な香りと味わいになり、シャンパンとは一味違うスパークリングワインに仕上げています。 ブドウ品種:ピノ ブラン(25%)ピノ オーセロワ(25%)リースリング(20%)ピノ グリ(10%)ピノ・ノワール(20%)

明らかにクレマン・ダルザスを代表する一本だと思います。

 

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La Maison Romanee
 Gevrey-Chambertin Le Justice 2013 12000

 ヴォーヌ・ロマネの異端児、パリ出身のオロンス・ド・ベレールが創立したネゴシアン。彼は同時にビオディナミに欠かせない馬による耕作のスペシャリストとして、ブルゴーニュの錚々たるドメーヌを顧客にもっています。

 インポーターの方に「彼は豚を飼っているでしょう」と聞くと、「この前訪問した時にその豚を食べさせてくれたのですよ!すごくおいしかったです。村の人にオロンスさんについて聞くと、『ああ、あの豚を飼っている人ね』と言っていました」。彼の豚は山の斜面の自然環境の中で(柵の中ではありますが)放し飼いです。狭い小屋に押し込められて死を待つかわいそうな豚ではありません。おいしいに決まっていますね!

 彼のワインはいかにも現代のスタイル。自然酵母による全房発酵で、抽出は極めて軽く、無清澄無濾過でSO2添加は極小。樽の存在を感じない、ふわんとした上品な香りと柔らかい旨みののった立体的な味わい。腰の強い地酒的温かみを感じないところが、昔からのブルゴーニュファンにとってはひっかかるところかも知れませんが、センスは抜群で、ポジティブな趣味性に溢れ、パリっぽい生まれ育ちのよい都会人の味ですから(それは例えばDujacにも言えることです)、高級現代フランス料理店のテーブルに似合いそう。

 久しぶりに飲みましたが、以前よりずっと完成度が上がっている印象。味のフォーカスが定まり、濁りが少なくなり、アイデア先行で実質が伴わない危うさが払拭されたと思います。特に畑を考えれば、この味は見事と言う他ありません。ジュヴレ・シャンベルタンの有名なヴィラージュのリューディ、ル・ジュスティスは、確かに悪い味ではありませんが、普通はもっとぼんやりとして水平的でタンニンの粒が大きく酸が緩く、果実味のタイプは黒系に偏ります。ところがこのル・ジュスティスは到底国道に接する平地の畑とは思えず、もっと上のほう、例えばフォントニーに近い畑かと思うような垂直性とくっきり感があります。ただ、余韻の長さそのものはヴィラージュの限界はいかんともしがたく、そこだけに着目するなら今のブルゴーニュの値段は高すぎます。それはインポーターの責任ではありません。世の中に素晴らしいワインは山のようにあるのに、ブルゴーニュのようなブランド産地、それもジュヴレやヴォーヌといった有名な名前しか覚えようとせず、そればかり買おうとする消費者の責任です。いい加減目を覚ませと言いたい。

 とはいえ、実は消費者を責めるわけにはいかない。世界数十か国の全アペラシオン全生産者全品種全ヴィンテージの味を記憶している人など原理的にいるはずもない。自分の好みのワインを世界から選ぶのは難しいばかりか不可能なのです。だから知っている範囲から選ぶ。他の商品を考えても、それはむしろ普通の消費行動です。

 ですから実際に試飲して買える機会は本当に大事だと思っています。それでも欲を言わせていただくなら、ブースに立つ人がより広く深い知識を持っていてほしい。ヴィニュロン・アンデパンダンのブースの何がよいかといえば、そこでワインを販売している人は実際にそのワインを造っている人だからです。質問には即答です。しかし今回の実例で言うなら、「これらのワインの中で畑で除草剤を使っていないのはどれですか」、「分かりません」、「では、これらのワインの中でドライファームはどれですか」、「分かりません」。これでは単なるワインの注ぎ屋さんになってしまい、生産者の代理人になりえませんね。

 あるワインがステンレスタンク熟成か否か、といった情報はネットで調べようと思えば調べられます。最近はワインショップで買い物をするときにスマホでワインを調べている人が多いですね。しかし「この20本の中で除草剤を使っていないワインはどれですか」という質問には答えてくれません。これを解決してくれる人がそこにいて、はじめてワインが選べる基盤ができてくると思います。

 

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