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2017.08.07

ジョージアワインと四川料理 at 沸騰漁府

 ジョージアワインはとても飲み心地がよく、一見パワフルには思いませんが、実は巨大な力が漲る大変に凝縮した味のワインです。

 ですからおおよそ、優れたジョージアワインを無意識的に料理と合わせてしまうと、ワインが勝ってしまうか、単に離反するか、で、到底おいしいマリアージュにはなりません。

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▲ジョージアでのある日の昼食。どう見てもジョージアワインの味より薄くて弱い。


ジョージアの国で料理とワインを味わっても、同じことが言えます。ジョージア料理はシンプルで素材そのままのものが多く出てきます。ワインを飲むと、ほぼ常にワインのほうが強く、濃く、大きく、アタックから後味までの全体を支配します。正直、ジョージアで食べるジョージア料理はワインがないほうがおいしいぐらいだと思いました。料理はワインのつまみになってしまって、料理を引き立てる役割としてのワインにはなりません。

別にそれがいけないと言っているのではないのです。誤解されたくないですが、そもそも料理とワインを合わせて飲まなければいけないという考えはこの100年のものですから、合わなくてもおかしなことではありません。そういう意識がないだけです。我々のうちの何人が、毎回異なる料理に合わせて何百もの日本茶を揃え、食事中に料理の数だけ異なった産地や製法や抽出法のお茶を淹れるでしょうか。原理的にはそうあっておかしくないのに、そうしないではないですか。

しかし、料理とワインを合わせて楽しみ、1+=3にするおもしろさを我々は知っています。ジョージアワインもいったんジョージアから離れて日本に来たら、その楽しみのための手段となりえます。とりわけジョージアワインを日本に根付かせるためには(そうなるべき存在だと信じています)、ジョージアワイン=クヴェヴリ発酵とか、オレンジワイン、とかの知的好奇心に基づいて鑑賞するだけではなく、普通にジョージアワインを実体に即してとらえ、実利的有用性を認識する必要があると思います。

ではジョージアワインが何に合うのかと言えば、まず思いつくのは四川料理です。四川料理はワインを選びます。生半可なパワーのワインでは、確実にワインが料理に負けてしまいます。また脂肪が多いので、ワインに粘りが必要です。そして中国料理は基本的に質感が柔らかいので(東アジア料理全般がそうですが)、ワインも柔らかくなければいけません。強いことと固いことは違います。ジョージアワインはフランスやイタリアと比べて固くありません。そして四川料理は、発酵調味料の味がたっぷりとします。旨みがたくさんあるということです。ジョージアワインの多くは(産地で言うなら特にカヘティのワインは)そういった特性を備えています。また、スパイシーさと甘さはよく合いますが、ジョージアの赤ワインは残糖があるものが結構多いのも重要な点です。

中国料理激戦区新橋にある沸騰漁府はいつも中国人のお客で混んでいます。日本風の繊細さや精密さではなく、大陸的なパワー、おおらかさ、逞しさが取り柄の料理を出します。ですから今回はこのお店を会場にしました。

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▲今回お出ししたワイン。

 料理とワインの組み合わせは以下の通りです。より固体的な料理には東ジョージア、より液体的な料理には雨の多い西ジョージアのワインを選ぶとよいということが分かります。

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1、ゆで豚バラ肉ときゅうり & ツヴィシ(西ジョージア)

ツヴィシは垂直的で、しなやかで、わずかに甘く、厚みがありません。豚肉ときゅうりを一緒に食べると味は垂直的になります。辛いソースをつけて食べるので、ワインの甘さがちょうどよく、また豚バラ肉の脂肪をおいしくします。

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2、湯葉と野菜のラー油あえ & シャフカピト(西ジョージア)

重心が若干上で柔らかいシャフカピトは、野菜のようなやさしい味(相対的には、ですが)に合わせるといい。

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3、よだれ鶏 & キシ 

  チキンは重心が上でソフトですから、重心が上でソフトで香り高いキシと。

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4、鶏角切りと青唐辛子の炒め & サペラヴィ

重心が上で、ぴしっとした構造をもつ料理なので、これは赤ワイン。しかし質感的には固くないので、ローム土壌系のワインのほうがいい。

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5、ラム薄切りと大根のスープ煮 & フヴァンチカラ (西ジョージア)

重心が上で繊細なラムに、同じ特性のフヴァンチカラを。普通ならフヴァンチカラは甘いのでデザートワインだと思われますが、デザートと一緒に飲むとキメの細かさや軽快さが減じられてしまいます。スープ煮のしっとり感とワインのしっとり感がぴったりです。適度な甘さがスパイシーさをやわらげ、ラムのおいしさに意識をフォーカスさせると同時に、甘さが臭みを消すのもいい点です。

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6、干鍋脆笋 & ヒフヴィ

タケノコも重心が上で、それなりの硬さがあります。ヒフヴィは今回のワインの中ではもっともおとなしい性格で、スケール感があまりありませんが、垂直性があり、またオレンジワインですからそこそこのタンニンもあり、タケノコに合います。

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7、重慶万州焼魚 & ルカツィテリ 

ルカツィテリは豚や魚のような重心が低い食材にぴったりです。質感は今回の他のワインと比べて若干粗いので、この料理の魚のように固く焼いた質感に合います。特にテミのルカツィテリはシスト土壌ですからより固く、魚に合い、もうひとつチョシャシュヴリは比較的ソフトですから、料理の魚以外の構成要素(豆腐等)により合っていたと思います。この料理は大変にパワフルですが、ルカツィテリのワインはそれを十分に受け止めてくれる腰の強さのあるオレンジワインです。

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8、ラムチョップのスパイス焼 & サペラヴィ

ラムチョップは肉の塊なので、重心が高く、実体感・構造がしっかりと備わったワインが大事です。それは、キンツマラウリのエリア(つまりシスト土壌)のサペラヴィです。ラムチョップの外側の厚いスパイスの層を貫き、しっかりとラム肉そのものに接点を作りだすためには、相当パワフルなワインが必要です。テミのサペラヴィは、エレガントですが、超パワフルです。

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9、韮入りパン & ヒフヴィ

やはりヒフヴィは野菜に合うようです。

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10、棗餅蜜かけ & キンツマラウリ 

  棗は赤ワインに合う食材です。甘いキンツマラウリにぴったり。

 

 ジョージアはアジアの西端です。ジョージアワインはオリエンタルワインです。四川料理との素晴らしい相性を見ると、つくづくそう思います。

ご参加くださった皆さんの感想は、「四川料理にはもうジョージアワイン以外考えられなくなった」。このような経験を全員が積み重ねていけば、ジョージアワインの楽しくおいしい使いこなしが理解されてくるはずです。

 

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