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2017.10.17

ルイ・ジャド

 いろいろ聞きたいこともあり、来日したルイ・ジャドの輸出部長オリヴィエ・マスモンデさんに会いに行きました。
 詳しくはまたお伝えしますが、2017年は7年ぶりに通常の収量と品質が確保できた年だそうです。しばらく低収量ヴィンテージが続き、7年で4年半ぶんのワインしか生産できなかったそうですから、生産者にとっては朗報です。
 私が興味があるのは2016年。どうみてもよさそうなヴィンテージです。陽性の朗らかな味という印象があります。マスモンデさんによれば、「ヴェルヴェット的な質感と2017年をずっと上回る凝縮度が特徴で、97年や99年に近い味」とのこと。ちなみに普通なら97年と99年は相当異なる味わいですけれど、ルイ・ジャドの97年のほうが例外的で、表面的で実体感のない飲みやすさに走りがちなワインが多い中、開放的なフルーティさと凝縮度と構造を兼ね備えていましたね。

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▲オリヴィエ・マスモンデさん


 ワインは数十種類テイスティング。同一生産者でこれだけいりいろなワインがあると、村ごとの違いが明快に分かり、ブルゴーニュの勉強ないし復習にはもってこいです。個人的にはルイ・ジャドは昔から赤より白のほうが好きなのですが、今回も同じ印象です。ヴィンテージは2013年や14年が主体でした。特に2014年は白にとっては文句なく素晴らしいヴィンテージ。ぴしっとしたフォーカス、抜けのよさ、疾走感、流麗さ、見晴らしのよさ、清涼感、ぜい肉のなさ、余韻に至るまでの乱れのなさ、といった特徴が、白にとっては特に効果的に働いています。2013年は凝縮度はあるのですが、そしてごりっとした実体感もいいとは思いますが、残念ながらスケール感と気品といった点では2014年が隣にあると見劣りしてしまいます。

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 試飲した中で特筆すべきは、写真の3本、Ladoix Le Clou d'Orge 2014, Pernand-Vergelesses Blanc Clos de La Croix de Pierre 2014, Savigny-les-Beaune Blanc 1er Cru Clos des Guettesです。どれもそのほか大勢とは異なるミネラル感と堅牢さと酸のビビッドさと余韻の安定感。これらの畑は農薬散布が少ないか、実質オーガニックなのかも知れません。そういう味がします。ムルソー、ピュリニー、シャサーニュよりも、今日はこのマイナーな村のワインがいいと思いました。
 Ladoix Le Clos d'Orgeは、ラドワ村の中では珍しく南向きでパワフル。同一名リューディで一級と村名のふたつがありますが、見た目では単に地続きです。昔、畑のオーナーとこのリューディを歩きましたが、彼も「何が違うのだろう、よくわからない」と言っていたのを覚えています。味も通常の村名のレベルを超えています。場所はコルトン・ロニェの目と鼻の先で、むしろ特級より日当たりがよいのですから当然かもしれません。 
 Pernand-Vergelesses Clos de La Croix de Pierreは赤は一級、白は村名のイレギュラーなワイン。先のラドワの畑は特級コルトンの北端の向こう斜面でしたが、こちらは西端であるアン・シャルルマーニュの目と鼻の先。これはペルナンとしては肉付きもあり(やはり赤の畑の白)、ハードコアなペルナンファンにとっては厳しさに欠けると言えるかもしれませんが、むしろ使いやすいバランスだともいえ、それでもペルナンですからびしっとタイトで、かっこいい味です。このワインも素晴らしいコストパフォーマンスです。

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 Savigny-les-Beaune 1er Cru Clos des Guettesは、村名サヴィニーとはまったく異なる引き締まり感が素晴らしいワインです。いかにもブルゴーニュの高級白ワインを飲んでる!といった満足感が得られるでしょう。しかし大変にお買い得(それでも6100円です。他が高すぎるとも言えます)です。とにかく、なんども言いますが、いい加減、昔の名前(ピュリニーとか)で飲むのはやめましょう。まあこの話をしていると長くなるので。


 しかし今回あらためて思ったのは、大半の白ワインの重心が高いことです。つまり、多くの魚介類には合いません。青魚ならいいと思いますが、その場合はもっとよさそうなワイン(ロワールとか)がたくさんあります。つまりは鶏肉用のワインばかりだということです。これでいいのでしょうか。いったいレストランでは何と合わせているのでしょうか。
 重心のみに着目してテイスティングするなら、今回の試飲ワインの中で、大半の魚介類と同じく下に位置するのは、ピュリニーのルフェールとクロ・ドラ・ガレンヌ、ムルソー・シャルム、シャサーニュ・モルジョだけです。標高を考えれば順当な結果です。身はふっくら皮はパリッと仕上げた鯛に白ワインソースを添えたものにルフェールとか、おいしそうですね!といってもこれらは13000円、15000円といった値段です。最近ブルゴーニュを買うのは千円と一万円の区別がつかない人でしょうから問題がないのかも知れませんが、常識的に考えるなら高いワインです(ルイ・ジャドはまだお買い得だと思います)。家庭では言うに及ばず、多くのレストランでもそうです。

 純粋に料理との相性のみから希望を言えば、千円台前半で重心の低い白ワインが必要なのです。それがないと、用途が極めて限られてしまいます。ブルゴーニュの底辺を広げるべく比較的安価なワイン、たとえばスティール・シャルドネ(樽を使わない低コストワイン)やソンジュ・バッカス(一級をブレンドした日本特別キュヴェ)を投入しようとも、使い途が少ないような味では効果が薄い。世の中、ソーヴィニヨンでもリースリングでもなくシャルドネに求めている個性とは辛口のリッチさであり、ボディ感であり、実体感なのではないかと思います。

 どうしてこうも重心が高いワインばかりになるのか。オートコートやボージョレのシャルドネなら標高の高さが理由と言えるでしょうけれど、明らかに標高が低い畑のワインでさえそうなってしまうひとつの理由は、収穫が早すぎることです。しかたありません。温暖化の中で常識的なアルコールと好ましいとされる酸度を得るには収穫を早めるしかない。どこもかしこも同じ問題ですね。消費者が、特にプロが、酸だ酸だとうるさいからこうなるのです。そのくせブルゴーニュのシャルドネを魚料理と合わせる。。。バカも休み休みに言え、と、ブルゴーニュファンのはしくれ(誰も認めてくれないでしょうけれど)としては、思いたくもなります。私はコルトン・シャルルマーニュのちょっとヴァンダンジュ・タルディーヴが飲みたい!

 ところでラドワやペルナンの畑の位置を確認すべくブースに立っている方に聞きました。すると、ブルゴーニュの全体図を見せて「ラドワはここにあります」と。うーむ、ラドワがどこにあるのか知らない人はここには来ないでしょうに。「いえ、ラドワの位置ではなく、このワインの畑の位置です」。「わかりません」。ブルゴーニュは何百もの畑違いでワインを造るわけです。品種は限られているし、つくり方も同じようなものです。遠くから見たら、どれもこれも似たようなもの。つまり畑違いの微細な差を商品価値に転化していかねばならないし、的確に個々の顧客のニーズに結びつけていかねばならない。ブルゴーニュは何百、何千もの畑別ワインの個性をしっかり理解しておかねば、ブランド価値、みせびらかし価値以外の、本来の食中酒としての実用価値が発揮されません。・・・・・というのは分かりますが、では私が理解しているのかといえば、もちろんそうありたいと思ってはいますが、記憶力の悪さがいかんともしがたく。しかし実際に売っているプロならば、少なくとも自社製品に関しては、完璧な知識と応用力が要求されるのが、ブルゴーニュだと思います。そうでなくては売れるべきものも売れません。

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