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2018.03.03

ボルドー Chateau Haut-Bergey

 レオニャン村にある地味なシャトー、オー・ベルジェイ。お買い得ワインとして認識はしていたものの、格別な印象はまったくなかった。ガルサン一族の所有するシャトーとしては、クロ・レグリーズやバルド・オーのほうが目立っていた。

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▲シャトーのレセプションエリアの、パンテオンのような天井。

 しかしオーナーの息子で音楽家のポール・ガルサンが2014年にシャトーに戻ってきてから、すべてが変わった。旧態依然とした体制を見限り、スタッフ全員を入れ替え、考え方を改め、2015年に一気にビオディナミへと転換した。祖父が所有する、同じくペサック・レオニャンにあるシャトー・スミス・オー・ラフィットの影響だろうか。ともかく英断である。それはオーナーしかできない。旧弊に骨の髄まで浸ってきた人間にもできない。若い世代のほうがオーガニックに関心を持っているというデータはよく知られている。私はそこに大きな期待を寄せる。ポールのような人が増えれば、ボルドーは明らかに変わる。

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▲最初にビオディナミの実験を始めた区画。まだ樹齢は4年。
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▲オー・ベルジェイの土壌は砂が多いようだ。軽やかでフルーティなワインを造るべき土壌だと思う。



 栽培責任者であるアンヌ・ローランス・ブーベ・ド・グラモンによれば、シャトー・オー・ベルジェイは2018年、ペサック・レオニャンで最初のデメテール認証ワイナリーになる。ビオディナミを行う困難は何かと聞くと、「600リットルという大きなダイナマイザーを持っていて、大量のプレパラシオンを作ることができるが、散布は一日12へクタールが限界で、時間がかかってしまう」ことだと言う。シャトー・オー・ベルジェイの畑は40ヘクタール。大規模なボルドーならではの悩みだ。ならば馬を買い足すなり、現在6人いる社員と4人いる不定期雇用者を増やすなりすればばいいのではないかと思うが、それは経営上の話だろう。「樽は赤ワインが300リットル容量、白ワインが300から500リットル容量。SO2の添加量も少なく、もちろんデメテールの許容量以下。これから白ワインに関しては無添加バージョンも造る」、等々、彼女の話を来ていると、いかにも現代的で、ラングドックやロワールの小さなドメーヌにいる気分になる。ペサック・レオニャンのワインがビオディナミ&SO2無添加になるなど、数年前ですら想像できなかった。

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▲栽培責任者のアンヌ・ローランス・ブーベ・ド・グラモンさんが案内してくだった。前職はシャトー・ギローの栽培アシスタントであり、そこでビオディナミを習得したそうだ。

 赤のグラン・ヴァン、シャトー・オー・ベルジェイ2015年は樽が強すぎ、味がほぐれず、まだ昔風の面影がある。しかし白の2016年は重心が下で、熟した果実のとろみや厚みがあり、力が横溢してスケールが大きく、リズム感や外向的な明るさがあり、あの戯画的ソーヴィニヨン臭ロワール・コンプレックス・ワインとは無縁の、本来あるべき南国味が感じられる。これを飲むと、やっとボルドーの白がまともなワインになってきたことが分かるだろう。


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▲醸造所の中。樽は写真ではよく分からないが、容量が大きい。

 圧巻は、キュヴェ・ポール2015年である。オーナーが自分の名前を冠するだけあって、思いの丈が違い、よりダイナミックで、よりポジティブだ。メロディーの横方向の流れの美しさとリズムの縦方向の切れが合体し、ノリがよく、飲んでいて分析的な気分にならず、常に総体を享受できる素晴らしいバランスがあり、楽しい。さすが音楽家の造るワインだ。黒系果実の熟してピュアな香りに適度にスパイスがのり、重心は下で、形は垂直的でいてしなやかに丸い。現代ボルドー、トップクラスのワインであり、ペサック・レオニャンというアペラシオンの本来の力量をまざまざと示すワインである。ビオディナミ転換初年度でこの質なら、数年後にはどれほどの高みに到達することか。

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▲シャトー・オー・ベルジェイ キュヴェ・ポール 2015年。

キュヴェ・ポール2015年は樽を使わず、コンクリートタンク熟成だと、アンヌ・ローランスは言う。私がキュヴェ・ポールのほうがずっとよいと伝えると、フランス国内ではこちらが人気だと言う。日本はどうなのだろう。樽風味=高級ワイン、樽風味=ボルドーという固定観念から脱却できるか否か、よりワインの内実を見つめることができるか否かが、現代ボルドーを正しく鑑賞するための前提だ。

 

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