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2018.04.06

ピーロート ワールドワインフェスティバルでのセミナー

 本当は私の出番ではなかったのです。
 ジェラール・ベルトランのアジア担当エクスポート・マネージャー、Jan Visserさんからメールがあり、フランスから来日してセミナーを行うはずだったワインメーカーのJean-Baptiste Terlayさんが、フランスの大規模な交通ストライキのせいで来日できない、と。彼は彼でディナーを仕切らねばならず、「ふたつの場所に同時にはいられないから手伝ってください」と。それは大変な事態。急遽六本木ヒルズで行われているピーロートのワールド・ワイン・フェスティバルに赴き、ジェラール・ベルトランのワイン造りの考え方や南フランスワインの本質とは何かについて、セミナーを行いました。一切下調べの時間なし、どんなワインをテイスティングするのかも始まるまで知りませんでしたが、ほっておかられたらまる一日は話し続けられるぶんぐらいの情報は記憶しているので、大丈夫!

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 Janさんから「今日のお客さんは素人だからエンタテーメントしてね」と言われました。ふーむ、エンターテイメントってなんだろう。まあ私はそもそも難しい話はできないし、エンタテーメントでなかったことはないと自分では思っているので、ワイン専門用語を使わないということだけを意識して、あとは普段どおりにその場で思いついたことをしゃべっていました。実際、細かいデータ等はさしあたってどうでもいいのです。「どの品種が何パーセントかとか、樽熟成期間が18カ月とか、セミナーだとそういう話になるが、それを聞いて意味が分かる人がこの中にいますか?各論は総論が分かってから聞いて初めて意味がある」。セミナーで私が語ったことをすべてここで書いていたら長大な文章になってしまいますから省きます。基本、今まで私がベルトランやラングドックに関して語ってきた内容です。
 南仏ワインについては、ひとつ、このように言いました。「北系ワインと南系ワインがある。北系は単一品種ワインであり、南系は複数品種ワイン。ラングドック・ルーションでも、ミュスカ等の少数を除いて、AOPワインは複数品種だ。単一品種ワインは、最高のブドウ品種だけを選んで、それ以外は排除するという思想だ。ブルゴーニュ公国のガメイ禁止令は知っているだろう。それが典型だ。すなわち、最も才能がある人間だけに生存が許され、それ以外は死ねというような社会だ。南仏には単体で味わえばくせっぽい品種も多い。しかしそれぞれの個性を生かして混ぜることで調和が生まれる。すなわち、人それぞれ長所もあれば短所もあるが、適所適材で生かせば全員が意味ある存在となり、組織として機能するという社会だ。前者のような世の中がいいと思う人は単一品種ワインを飲め。後者のような世の中が自分の思想にフィットすると思う人は南仏ワインを飲め。地中海文明とは、地中海を通じてつながりあういろいろな肌の色の人たちや宗教の人たちが共存し、お互いに影響しあって作り上げられてきたものだ。人種や宗教を問わず有能な人を登用した中世シチリア、ノルマン王朝時代の繁栄はその好例だ。すべてに白か黒かを決着づけようとしたら共存はできない。白と黒の味が北系のワイン。白と黒に加えて、それらの中間に広がるグレーゾーンのある味が南系のワインだ。そこが理解されねば、なぜジェラール・ベルトランが『平和、愛、調和』をクロ・ドラの標語にしているのかも分からない」。

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 多くの消費者は、こうした俯瞰的視点や本質論について話を聞いたり考えたりする機会が少ないものです。セミナーでは普通は各論ばかりになります。醸造担当者によるセミナーはとくにそうです。各論を100聞いても、そこから自分で一歩踏み出さない限りは、そのままでは総論には到達できません。しかしいったん総論を理解すれば、各論の解釈の仕方が分かるようになります。そのための手助けが少しはできたのではないかと思っています。
 

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