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2018.07.17

Birgit Braunstein, Leithaberg

 オーストリアのビオディナミ生産者のリーダーの一人、ビルギット・ブラウンシュタインさんの新しいテイスティングルームが出来たというので訪問しました。訪問するのはたぶんこれで十度めぐらいだと思います。これはワイナリー取材ではなく、挨拶というべき訪問です。

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▲ビルギット・ブラウンシュタインさん。既に二人の息子さんも彼女の手伝いを始めている。


 前回来た時はテイスティングルームはまだ計画段階。場所を見て、「ここではワインは美味しく飲めない。他の場所はないのか」と言いました。実際に完成した部屋に入って、「これはいかん。なぜ分からないのか!」。いや、彼女は分かっているのです。「この部屋だとワインがおいしくない」と言っています。言わんこっちゃない!しかしどうすればいいのかが分からなかったから、今まで放置していたのでしょう。この部屋では来客とのテイスティングは無論、ビオディナミに関するセミナーを行っているそうです。参加者も今まで何をしてきたのか。ビオディナミワインを扱うプロならこの部屋の問題が分からないはずがなく、分かっていて何も手助けしないのは冷酷無慈悲(そういう人が多いということ)です。

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▲これが問題のテイスティングルーム。力がある人なら写真を見ただけで何が悪いか分かるだろう。


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▲ビオディナミについてのセミナーの時に使われていただろう、プレパラシオンの解説が置かれていた。



 「到底こんな場所ではテイスティングできない」と言って私は中庭に出て試飲。そこではいつものように素晴らしいワインです。誤解しないで欲しい、ビルギットのワインは本当に素晴らしい、生きたワインです。生きているがゆえに、感受性が強いのです。だからテイスティングルームで飲むと。。。。困ったものです。

 私は「・・・・と・・・・を持ってきてください」と頼み、なんとか飲める状態に修正しました。もちろん彼女もその場にいた他の人も、効き目を確認。彼女は、「自分のベッドルームはあなたと同じ方法で処理しています」と言うので、「あなたと同じくあなたのワインも扱わねばなりません」。これではなんか私はエクソシストみたいですが、私は超常現象のたぐいを言っているのではありません。ほんと、それは私のような素人でもわかる常識的な話です。ビオディナミワインのファンにとってはさらに常識中の常識でしょう。ところが知識があってもその知識を使うべきところで問題そのものに気づかねば、知識は無駄になってしまいます。しかしそれはまだ対症療法でしかないので、そのあとヴィエヴィヌムで会ったブラウンシュタインさんにさらに根本的な解決方法を伝えました。それをやってくれるといいのですが。お金はかからないけれど手間はそれなりにかかります。自分では怖くてできません。
 彼女は、傑出した才能がある人に共通する問題を抱えているように見えます。それは周囲の無理解(とまではいかなくとも、誤解)と孤独です。ワインの味にその影がさしています。そもそも彼女ほどの感性がありながらもあのままテイスティングルームを放置していたというのは、身近に相談する人がいなかった、いやそれ以上に身近に本音を言う人がいなかったことの証左です。「あなたのワインをさらなる高みに到達させるためには、あなた自身が孤独から連帯へと脱却し、自らの正しさを自らがさらに強く信じられるようにならねばなりません。個人的な悩みの話は知らないが、少なくともワインに関しては悩みや問題意識や理念を共有できる人たちを作りなさい」と言うと、彼女の目に涙が。ああ、私はどうすればいいのか。「私は凡人だからあなたを導くことはできない。しかしあなたの味方であり続けることはできる」と言うのがせいいっぱいでした。
 何度でも言います。ビオディナミのワインは生き物です。いろいろな力に反応します。ゆえにビオディナミ農園主はそこに働く太陽や月や星の力を含めて正しいバランスをもたらさねばなりません。造られたあとも同じです。ビオディナミのワインを自分の店で売る人は、農園主と同じ責任があります。農園主と気持ちを揃える必要もあります。それがいやなら、つまりワインを貨幣と交換するための物質としか見れない人は、ビオディナミのワインには手を出さないほうがいいぐらいです。

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▲プルバッハの中心にあるレストラン、ブラウンシュタイン。

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▲アスパラガスとウィーナー・シュニッツェル。このレストランではターフェルシュピッツも試して欲しい。


 ちなみにテイスティングのあとはワイナリーのそばにあるブラウンシュタイン家のレストランに。ここもまたレストランで出すワインを造ることから歴史が始まったワイナリーです。このレストランは近隣で最もおいしいと思います。もちろんブラウンシュタインさんのワインを飲むには最適の場所。ショップも併設していますから、この界隈に行った時には是非試してみてください。

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