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2018.07.30

ロゼワイン

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 日本ではロゼの消費比率は3%台らしい。世界のロゼ生産比率は1割程度なので、少ないと言えます。
 だからロゼは伸びるとか、日本はまだまだだという意見もあるのですが、私は現実の状況下のロゼには懐疑的。なぜならおいしくないワインが多すぎだからです。
 品質平均値の低さは、少なくとも個人的経験からすれば否定しがたい。そればかりか、状態の悪いロゼが多すぎ。先日もちょっとテイスティングする機会があったのですが、ロゼだけは受容可能レベルを下回る状態。いたみやすいワインであることは確かでしょう。しかしどうしてロゼだと状態の悪さが目立つのか。逆に言うなら、ロゼはそれだけピュアで容赦ない、非寛容なワインだということです。だからロゼは難しい。状態の悪いロゼを飲んでロゼのファンなどになれるわけがない。まずは状態のよいロゼだけを飲んで判断することです。
 現在のロゼの主流は直接圧搾法です。あの色の薄いプロヴァンスタイプです。しかしあれは実際のところ色のついた白ワインです。若干白ブドウとはフレーバーが異なるだけで、シャンパーニュのブラン・ド・ノワールと同じく機能的には白。今回はそのタイプは出しませんでした。最上の土地から造られる直接圧搾法ロゼの緊張感のある味はもちろん素晴らしいものですが、私にとってのロゼの本領は違うところにあります。
 最初の2本はオーストリア。カルヌントゥムのラザー・バイアーのツヴァイゲルトと南スティリアのメンハルトのイザベル。ちょっと残糖があってほんわかチャーミングな、花見系とか女子会系とか素人向けとか言われる類のフルーティ・ロゼ。シリアスな構造とかミネラルとか酸とかとは関係ないところでの完成度。これはロゼでしかありえない世界。馬鹿にする人も多いのですが、私はこの女子会系ロゼが大好きです。もちろん私はこの表現がおぞましく思えるほど嫌いなのですが、いろいろな意味をこめてあえてそう言います。なんにも考えずに楽しい味。しかしこの二本はよく見ると見事なミネラル感があり、驚くほど余韻が長い。そこがかっこいいのです。産地も品種も違いますが、オーストリアはいかにもオーストリアの味です。濁りやもたつきのない、すかっとあか抜けたワインです。
 次の2本はヴュルテンベルクのムスカット・トロリンガーとシュヴァルツリースリング。ドイツの中でも私がとりわけ好きな品種。両方ともロゼには最適です。前者は香り高くキメ細かい。後者は朴訥さ、素直さが素晴らしいし、赤にするとタンニンが若干粗いのですが、ロゼにするとしっかりした腰のある味になると思います。オーストリアとは異なる温かみや鄙びた寛ぎ感がこれまた魅力的。白や赤と違ってロゼにはあからさまな力がない。ふわーんと漂い、さらーっと包みこみ、しなやかに染み入る。ヴュルテンベルクという土地、品種、2017年というヴィンテージ、そしてこのビオディナミ生産者のキャラクターが見事に揃った味わいです。
 次の2本は、グリブドウの赤ワインとしての“ロゼ”です。ロゼには黒ブドウの直接圧搾法、黒ブドウの短時間マセラシオン、赤ワインと白ワインのブレンドがありますが、もうひとつ可能性としてグリブドウを醸し発酵したロゼが考えられます。グリブドウを白ブドウと見なすならこれはオレンジワインですが、実際の見た目はロゼに近いし、風味もやはりロゼに近いものです。しかし味わいはがっしりとして赤ワインのよう。質感も粘りがあり、堂々としています。アルザスのリスネールのゲヴュルツトラミネールもフリウリのラ・カステラーダのピノ・グリージョも圧倒的な完成度。サラミや燻製した豚バラのハムにぴったりでした。このタイプのロゼ、グリワインは世の中にほとんどありませんが、大いに注目すべき新カテゴリー。グリワインを、白ワイン、赤ワイン、ロゼワイン、オレンジワインと並ぶワインのひとつのカテゴリーとみなすと、いろいろな可能性が見えてきます。
 最後はカタルーニャのエスコダ・サナフヤのロゼ。カベルネ・フラン、メルロ、サンソーの混醸、アンフォラ発酵、亜硫酸無添加、無濾過です。残糖があるので、相当な確率で瓶内再発酵します。ですからそれに備えて厚手の瓶に入って王冠で栓がしてあります。この生産者ならではの異次元のエネルギー感と厚みのあるピュアさ。この手の造りは癖っぽい味ではないかと思われるなら、是非エスコダ・サナフヤの2017年を飲んでみてください。しっかりと旨みや複雑さや構造があり、しかし渋みはなく、ロゼならではのしなやかさやチャーミングさも備わっています。現在最高のロゼのひとつ。そしてたぶん何千年か前のワインはこんな感じだったのではないかと思わせる確たる存在感と完成度があります。ある意味、白よりも赤よりも正しい感じがするのです。
 どれもよくあるロゼとは隔絶した世界。これらのロゼが普通に、状態よく売られているなら、世の中どんなによくなることか。薄くて酸っぱくて苦くて早摘み風味の(そして往々にして状態の悪い)直接圧搾法ロゼを美辞麗句で持ち上げて売ろうとする無責任の極みの行動をとる前に、まともなロゼを造り、まともな状態で売ることを考えねばなりません。

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