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2018.07.31

インターナショナル酒チャレンジ

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 インターナショナル酒チャレンジが7月30日に汐留コンラッドホテルで行われました。昨年は酒蔵でのコンサルティングを通していろいろと日本酒について勉強させていただいたので、今年は審査員として参加することにしました。
 150本ほどブラインドで試飲しましたが、個人的な感想をかいつまんで述べるなら、
1、あまりに多くのお酒が不自然でエネルギーがない。
2、全体に立体感、垂直的構造、ミネラル感に欠け、つまりはぺたっとつぶれた味がする。重心が高くて水平的な形。
3、余韻が短い。
4、アルコールが目立つ。つまりアルコール以外の要素が少なく、力がないから、アルコールだけが浮く。
5、大吟醸・吟醸カテゴリーは特にひどい。純米は上記の問題が比較的少ない。
6、生酛・山廃はさらに上記の問題が少なく、酸に力があるために余韻が生き生きしている。私の高得点は結果としては生酛・山廃が多い。速醸ばかりの状況は味の点からすればひどすぎ。
7、純米でも吟醸カテゴリーは焦点が緩く、味が小さく、もっともやる気を感じることができず、ポジションが不明瞭。
 いったい日本酒は何を理想としているのだろうかが見えないし、たぶん誰も共通見解を持っていないし、さらには議論の場もない。今回もなみいる日本酒の専門家が別々に評点をつけるだけで議論がない。これはいかん。ジャパン・ワイン・チャレンジでは皆が議論できる機会があるし、共通見解を形成するための教育プログラムもある。もし可能なら、酒チャレンジも少し手直ししてもらわねばなりません。
 インターナショナル酒チャレンジでは、通常の利き酒用蛇の目おちょこと並んで、リーデルが新たに開発した純米酒グラスが並んでいました。これは170人ものメーカーや日本酒の専門家が8年かけて作り上げたものです。
 ふくよかで柔らかい味わいを強調するグラスだと思います。しかしこのグラスで飲むと、どの酒も似た味になってしまう。相当にキャラクターが強いグラスです。これだけ大きいボウルだと広がり感は出ますが、反面中心密度は低下し、構造が乏しくなります。またアルコールが目立ち、重心が上がってしまいます。その点では純米酒が大吟醸の性格に近づくと言えます。
 これは日本酒関係者の総意のグラスと言えますから、逆に、彼らが日本酒に何を求めているのかがよく分かります。正直言って、これが純米酒の純米酒らしさだと私が思うところのもの、つまり米の旨み、腰、ミネラル感、グー・ド・テロワールを表現するグラスには思えません。...
 ちょうどリーデルの社長が部屋に入ってきたので、私の感想を伝えました。以下アンギャル社長との会話です。
「このグラスはあなたのような通のためのものではない。一般消費者がどのお酒でも楽しめるようなエピキュリアン向けグラスなのであって、どのお酒でもあなたが言ったような味になることは意図されたものなのだ」。
「リーデルは今まで品種とテロワールを軸にグラス開発してきたのではないのか。だとすれば山田錦グラスを作るほうが筋が通る。大吟醸グラスを作り、今回純米酒グラスを作ったということは、お酒を製法で分類するということであり、ワインに譬えるならステンレス発酵グラスとコンクリートタンク発酵グラスを作るようなものだ」。
「これを作ったのはあくまで酒造メーカーを中心とする170人であって、我々は彼らの要望を製品化しただけで、リーデルが主体的に提案したものではない」。
「主体的に提案しないでは業界のリーダーとしての責任が果たせない」。
「我々はふたつのタイプの製品を作る。ひとつは我々の方からの提案型。そして依頼されて作る受託型。これは後者。日本酒は我々にとって外国のものであって、ワインと違って経験の蓄積がないから提案するには時期尚早だ」。
「しかしボルドーグラスとかキャンティグラスを作っているではないか。オーストリアからすれば彼らも外国だろう。1957年にリーデルがソムリエグラスを作った時には誰の要望も意見も聞かず、自分で創造したではないか。作ったあとに世の中がついてきた。これがあるべきリーダーシップだ」。
「そのうち自分たちからの提案グラスを作ります」。
 おちょこで飲んだほうが味に一体感が出ましたが、今度は側面が直線の器独特のボスっとした広がりのない味になる。どちらもおいしくないので、私は途中から、水のみ用として部屋に置いてあったリーデルOのような形をした(それより背が低くて最大口径部分が真ん中にある)グラスで飲みました。完璧とは言えないにせよ、ひとつひとつのお酒の違いがより明確になりましたし、広がり感と密度感のバランスもよい。ほんと、グラスはおもいしろいものです。
 いずれにせよ、今回の純米酒グラスは“テイスティンググラス”ではないことは分かりました。とすると、それが審査会場に並んでいるのはへんな話です。
 

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