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2018.07.17

Raser-Bayer, Carnuntum

  レストラン兼ワイナリー、つまりホイリゲ。オーストリアならではの魅力。食とワインが、あとから偶然出会うのではなく、最初から共にあるということ。その意味は、考えれば考えるほど大きなものがあります。

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▲田舎のホイリゲの典型的なつくり。ウィーンからも近いので、グリンツィングの観光ホイリゲに飽きたらちょっと足を延ばしてみてもいいだろう。外国人はここまでは来ないのでローカルな雰囲気が味わえる。

 ホイリゲ=ウィーンではありません。ウィーン空港から東に車で20分ほどで着く産地、カルヌントゥムにあるラザー・バイアーも地元に根差したホイリゲ。そのワインは自分にとっては地元消費用オーストリアワインの典型といえるほど、素直で、欲張らず、お買い得で、もちろんおいしく、かつ認証オーガニックです。あなたの好きなオーストリアのワイナリーはどこか、と聞かれ、この名前を挙げたこともよくあります。もちろん私は世の中の評価本を賑わすタイプのワインもおいしいとは思いますが、オーストリアらしいオーストリアワインとは何かと思考をめぐらすと、1ホイリゲワイナリー、2、オーガニック、3、安価、4、輸出市場より地元重視、という指標が重要であるというひとつの結論に達します。1,3,4の要素を満たすワイナリーは多くとも、2も満たすとなるとなかなかないものです。     「輸出比率は何パーセントですか」と聞くと、「ゼロ。だからパーセントを計算する必要もない!」。いいですね。何度も言っているように、外国人観光客でにぎわう銀座の高級天ぷら屋より、外国人ゼロの下町の天ぷら屋のほうが、私にとっては基本であり、好きなタイプのお店です。しかし大半の人にとっては、前者のタイプのワインのほうがいいワインでしょう。実際にそういうタイプが日本には輸入されています。それはオーストリアに限ったことではなく、ドイツもそうです。いや、ドイツのほうがさらにそうかも知れませんが。不思議なのは、上記のような飲食店の譬えなら、「外国人より地元の人で賑わう店が本物」と誰もが言うのに、ことワインになると逆になってしまうことです。それはまだ多くの人にとってワインがよそ行きのもの、ええかっこしいのものだからです。

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▲ラザーさんに連れられて徒歩で畑に行く。土はご覧のように細かい粒子のレス。カルヌントゥムにはもう少しローム質な場所もあるが、ここはレスなので、ワインは軽やかでフルーティ。



 テラスでオーナー家族のひとり、ダニエラ・ラザーさんに話を聞いている最中も、中庭を兄、父、母、祖母が通りがかっていきます。本当に「ファミリー・ワイナリー」なのですね。ブドウだけでなく、大豆、小麦も栽培。もちろんすべてオーガニック。ワインだけに凝り固まっていると、農業産品としてのワインが俯瞰しにくいと思います。こうした経営形態だと、良識・常識から外れることがないはずです。
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▲ベーシックなワインのほうがむしろ抜けがよくて酸もビビッドでおいしい。オーストリアは価格と質が比例しないのが消費者にとってはとてもありがたい。ただその前提は、高アルコール&高濃度=高品質、とする一般的なな考え方から自由になり、ホイリゲワインとしての機能性を評価軸に組み込むことだ。

 数多い商品の中でお勧めは、ホイリゲ用の1リットル瓶のグリューナーとツヴァイゲルト、ウェルシュリースリング、そしてツヴァイゲルト・ロゼです。力を抜いているのに中身はしっかりミネラリーで品があります。そして大変に安い。私は残糖7グラムのチャーミングなツヴァイゲルト・ロゼが特に好きです。ハムやチーズやローストポークといったホイリゲの料理にぴったりです。

 ツヴァイゲルトの赤もありますが、ロゼのほうがおいしい。レス・ローム土壌の軽快さとロゼのスタイルが合っていると思いますし、ツヴァイゲルトの赤にありがちな泥臭い風味が感じられないのもいい。こういうワインは日本に輸入されないものです。なぜならワインが置かれている文脈が見えないからです。

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▲醸造所の中には調理器具も置かれている。レストラン兼ワイナリーならではの光景だ。

 

 

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