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2018.07.18

Schauer, Sud-Steiermark

 ズュートシュタイヤーマルクの中でもひときわ標高が高いキツェック・イム・ザウザルは、オーストリア最上のリースリング産地です。シュタイヤーマルク自体涼しい場所ですし、さらに600メートルですし、シストの急斜面ですし、灌漑不要ですから、当然美味しい。そのことに気づいたのは2001年ヴィンテージの頃ですから、もう15年以上前。ここを忘れるようではオーストリアワイン通ではない、と声を大にしたいところですが、いまだ日本では無名です。

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▲シュタイヤーマルクの中でもひときわ高地にある畑。土壌はシスト。見るからにリースリングのためにあるような畑だ。


 だいたいのところ、私が好きなエリアは日本では超マイナーなままです。アルテンブルクのツヴァイゲルト、レヒニッツのウェルシュリースリング、スピッツァーベルクのブラウフレンキッシュ、そしてキツェック・イム・ザウザルのリースリング。これを読まれている方で同感だと思われる方がいらっしゃるなら是非「私もそう思う」とレスポンスいただきたいものですが、きっとゼロでしょう。これはフランスで譬えるなら、アビムのジャケールやラ・クラープのブールブーランクが素晴らしいと言っているような常識的な話だと私は思うのですが。。。
 オーストリアでリースリングの銘醸地として挙げられる名前は日本ではヴァッハウです。ヴァッハウとキツェック・イム・ザウザルの違いは、川辺と山辺、片麻岩と片岩の違いだけではなく、灌漑か無灌漑か、でもあります。もちろん私は無灌漑のワインのほうが優れていると思っていますが、その意見が少数派である以上は、この話もなかなか理解されないでしょう。誤解されたくないですが、ヴァッハウがまずいわけではありません。ヴェイダー・マルベルクの一部やマッハヒェンドルの一部やPURのように無灌漑&オーガニックのワインは最高だと思っています。そして灌漑がすべていけないと言っているのではなく、マイポの例をとるならヴィーニャ・カルメンのように冠水灌漑をしたりアルマヴィーヴァやガンドリーニみたいに埋設灌漑をすればいいので、単純なドリップ灌漑ではミネラル感や下方垂直性やリズム感や心地よい緊張感が表現されにくい、と言っているのです。

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▲ワイナリーの中庭で地元の料理をつまみながらワインを飲むことができる。シュタイヤーマルクのワイナリーの多くはそういったブッシェンシャンクでもある。それだけ観光客も多いのだが、不思議とスレた感じ、観光客馴れした感じがない。


 さてシャウアーは、キツェック・イム・ザウザルのブッシェンシャンク(シュタイヤーマルクの居酒屋のこと)兼ワイナリー。現時点でも環境保全型農業ですが、来年からオーガニック認証プロセスを開始します。当主セバスチャン・シャウアーは「アルコールが高く酸が低くフルーティすぎるニーダーエステライヒのリザーブタイプのリースリングは好きではない。オーストリアのリースリングはストレートなミネラリーな味からリッチな味になりすぎた。昔のヴァッハウの味のほうがいい。自分のポリシーは、ルーツに戻れ、だ」と言います。私も同感なので、思わず握手しました。ドイツに譬えるなら、ラインガウのGGよりモーゼルのカビネットが好き、という人にお勧めしたい。

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▲小容量のステンレスタンクが所せましと置かれた醸造所の内部。


 その意味は2014年のRiesling Kabinettstuckを飲めばよく分かります。ものすごく酸が強く、それをきれいな甘さでバランスさせ、アルコールが低いこのワインは、リースリングのひとつの理想像です。とはいえオーストリアで中甘口カビネットは例外的。最近ではこの年しか作られませんでした。辛口のRiesling Kitzeck-Sausalの2017年の引き締まって張り詰めたボディ、垂直性、明快なリズム、しなやかでいて強靭な酸の輝き、抜けのよい香り、驚異的な余韻の長さは、今まで飲んだオーストリアのリースリングの中でも最も印象に残るもののひとつです。

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▲上写真は、「フルーティさよりミネラリティ―が大事」だと、しっかりとした考えを語るシャウアーさん。オーガニック認証を取得するのはいいことだ。下写真がリースリング。



 ムスカテラーも、シュタイヤーマルクの通常のものとは大きく異なります。特に上級キュヴェ、Gelber Muskateller Schiefergestein 2017はびしっとした辛口で、おしゃれな初夏のパーティー用ワインといった方向性ではなく、極めてシリアスです。爽快なまでの硬質さとすくっと伸びた背筋は、これぞキツェック・イム・ザウザルならではの表現!と快哉を叫びたくなる完成度。一度飲むと忘れられないでしょう。

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