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2018.07.15

Succes Vinicola (Conca de Barbera, Catalunya)

 2011年に若干20歳のMariona VendrellとAlbert Canelaによって創業された新しいワイナリー。以前は他のワイナリーと設備をシェアしていたが、現在のピラ村のインダストリアル・センターの一棟に移ったのは2016年である。ちなみにその建物は、写真のとおり、インダストリアル・センターと呼ばれるだけあって到底ワイナリーには見えない。番地表示も看板もない。相当迷ってたどり着いた。もし行かれることがあるなら、ピラ協同組合の斜め前だ。

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▲これがワイナリーだとは気づかない。最近はコンカ・デ・バルベラが人気なので、この周辺を訪れる日本人は多いと思うが、ここも是非立ち寄ってみることをお勧めする。



 マリオナさんによれば、コンカ・デ・バルベラはカタルーニャで最も涼しいDOだと言う。標高は350から600メートル。年間降水量は450から550ミリと、北隣のコステルス・デル・セグラと比べれば多く、なおかつ夏から秋にかけての雨が目立つ。土壌は基本的には三つに分かれ、石灰岩、砂利、シストである。すっきりしっとり型のワインが出来る土地であり、優れたパレリャーダ、またこの地だけに植えられているロゼ・カバ用の地場品...種トレパットの産地として、カバ生産者への原料供給地として知られている。
 地球温暖化によって、また“ロバート・パーカー”的なるもの(あくまでカッコつきの比喩表現だと思うが)の反対を好む最近の嗜好によって、コンカ・デ・バルベラが注目を集めている状況は、日本で普通に暮らしているだけでも伝ってくるはずだ。スペインワインといってリオハの味を条件反射的に思い浮かべる人にとっては、熟成リオハと対極的な味の産地がコンカ・デ・バルベラだと考えれば分かりやすいだろう。

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▲オーナーのマリオナさんとアルベルトさん。



 パレリャーダがまさにそうだ。カバ基本3品種の中で酸やエレガンスを担当する、実体感のない、さらっとした味の品種だ。アルベルトさんも「水みたいな品種」だと言う。だから栽培の質が悪いと本当に水みたいになってしまう。サクセス・ビニコラは、単なるカバの原料でしかなかったパレリャーダのポテンシャルを見抜き、自らの出身地であるこの地をまっとうなワイン産地として認めさせるべく、この品種で高品質スティルワインを造った嚆矢である。ブドウはアルベルトさんの父親から買う。だから法的な定義はともかく、実質的には自社畑であり、栽培は認証はないもののオーガニックだという。収量も低いためミネラル感が濃縮され、ただの水ではなく上質な湧き水のような繊細で複雑なおいしさがある。

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▲古木のパレリャーダの畑。地球温暖化によって高いアルコールが問題となる中、熟しても糖度が上がらないパレリャーダは世界的にもっと注目されていい。



 それがParellada Experienciaだ。畑は石灰岩土壌と砂利質土壌のふたつのブレンド。半分は25日間醸し発酵。しかし“オレンジワイン”には見えないし、そういう味もしない。それだけ色素がなく、タンニンもない、つまり水のような品種だということがよく分かる。こうした特徴の品種だとMLFなしですっきり感を強めそうなものだが、ここではMLFを行い、味の安定感を出している。またMLFのおかげでSO2添加もたった20ミリグラムと少ない。パレリャーダをカバの補助的役割の品種と捉えていた人にとって、このワインの登場はどれだけ衝撃的だったことか。これはコンカ・デ・バルベラのみならずカタルーニャにとって重要な位置にある白ワインだと思う。SO2無添加で砂利質の畑のみからできるEl Pedregal(石、の意味)は、野心的な試みは評価するものの、前者よりもシンプルで味の下支えがない。バルセロナのおしゃれな店では売れるようだが。
 このワイナリーに来た第一の目的はトレパット品種のロゼと赤だ。トレパットはアリカンテ・ブーシェ等と同じ、果皮のみならず果肉も赤い、タントゥリエ品種。「果皮の色は薄いが果肉の色が濃い」というから、相当な変わり種である。彼らはこの品種から、ロゼのPatxanga、樽なしのLa Caca de Llum、樽熟成のEl Mentiderを造る。


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▲若々しいセンスを感じさせるラベルデザイン。ワインの味わいはラベルよりずっとシリアスなものだが。


 El Mentiderは樹齢80年から115年の古木のブドウを用い、9カ月樽熟成させた、アルコール度数14度の力強いタイプ。しかしこれは古木の悪い面が出て、味が暗く、スパイシーであるが同時に泥臭く、重心が下で伸びがなく、樽のなじみが悪い。トレパットらしくないということでは知的な興味がわくワインだし、このコンカ・デ・バルベラにしかない品種(総栽培面積は1000ヘクタールだという)を他の一般的な黒ブドウと同じように扱ってフルボディの一般受けする赤ワインを造ったという意味で画期的ではあったと思うが、品種じたいが求めている方向性を無理やり捻じ曲げているように感じてしまう。「でもこれが高く評価されるのですよ」とマリオナさんが言うから、「そんなに樽が好きならコンカ・デ・バルベラを飲まずにリオハを飲めばいい」と答えた。この方向性をさらに強めたワインが、カベルネ・ソーヴィニヨン50%とトレパット50%を樽熟成した、アルコール度数14.5度のFeedback。正体不明のよくある“スペインワイン”な感じ。ないし昔懐かしいペネデスを思い出させる味。それは最大限オブラートにくるんだ表現だが。「他とは全然違う方向性で、サクセス・ビニコラとしてのブランド・アイダンティティにマイナスだと思う」と言うと、「こういう樽っぽくてパワフルな赤ワインが好きな人はけっこう多いのですよ」。「パワフルなワインが好きならリベラ・デル・デュエロを飲め、ですよ。なぜワインの品質に対する評価軸を多元化できないのでしょうね。それはあなたにも責任があります。コンカ・デ・バルベラとは何か、サクセス・ビニコラは何を目指しているか、というメッセージを明確に伝えきれていないからです。スペイン国内でそういう状況なら外国ではもっと大変でしょう」。「それに、アルベルトのお父さんがこれが好きなんです。彼の畑ですからね、彼の好きなワインも造らないと」。「ああ、それはしかたない。親孝行は大事です」。
 その点La Caca de Llumは、いかにもトレパットらしいくっきりして軽やかなタンニン、しっかりした酸、なめらかな質感、ブラッドオレンジと赤系果実とスパイスとミントのブライトな香りを備えた、ピュアでいて完成度の高いワインである。生産者自身もこれが好きだと言っていた。ワイン名は蛍の意味で、確かに夏の夜にふさわしい味わいだ。
 このような方向性の品種だから、ロゼのPatxangaが素晴らしいのは当然だ。「パチャンガは夏のパーティの時の歌のこと。例えば『恋のマカレナ』みたいな」。懐かしい名前だ。1996年ビルボード14週連続一位という驚異の大ヒット曲だから、ある年齢以上の方なら鮮明に覚えているだろう。これも正しい命名で、踊りたくなるような明るいブラッドオレンジやカンパリのような香りとリズミカルな味わい。軽快な縦方向の動きがあり、重心が上で、くっきりした酸が心地よく、余韻は溌剌として長い。カジュアルだがぺたっとしたダルい味、ユルい味ではない。つまり、トレパットは高貴品種なのだ。これからますます評価が高まるだろう。

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