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2018.08.26

初心者講座 カベルネ・ソーヴィニヨン

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 今季の初心者講座の第一回。テーマは、カベルネ・ソーヴィニヨンです。
 カベルネ・ソーヴィニヨンは世界で最も植えられている品種。341000haというとんでもない面積。売れないものは植えませんし、世の中の人が嫌いなものは売れません。ですからカベルネが世界で最もポピュラーだということは、常識的に考えて、みんなカベルネが好きなのです。
 カベルネの何がそんなにいいのか。それ以前に、何がカベルネのワインの味わいの特徴なのか。それをブラインドテイスティングを通して抽出していきました。
 最初はポルトガルのリスボンの近く、セトゥバルのひとつの生産者が造るシラーとメルロとカベルネの比較。どれがカベルネですか、と聞くと、ご参加6名のうちおふたりはシラーをカベルネと思い、おふたりはメルロをカベルネと思い、そしておふたりは正解。この3品種ならどれがカベルネだか分かって当然だろうと思われるかも知れませんが、こうしてブラインドで飲むと分からないものです。カベルネは有名すぎるほど有名で、初心者といっても過去たくさん飲んでいるはず。しかしカベルネの特徴とは何かに注目して飲んだことがないのが普通なのです。
 次に南アのカベルネ2種類とカベルネ・ブレンド1種。土地もヴィンテージも違いますが、こうしてみると、誰でも先ほどの三番目(写真の左から三番目)のワインが、それら南アのカベルネと一番似ているのだとわかります。そのあとの西オーストラリアやカリフォルニアを飲んでもカベルネはカベルネなのです。これらの共通点を抽出すれば、土地とヴィンテージを捨象したカベルネ・ソーヴィニヨンという品種の特徴が誰でも自動的に理解できます。こればかりは、カベルネとはこういう味です、と他人が言っても分からない。感覚や着眼点は個々人で異なり、その人がカベルネらしいと思うポイントを自分で探せないと、いつまで経ってもどれがカベルネだか分からないのです。それができる機会とやり方をお伝えすることが、初心者講座の一番大事なところです。
 普通、初心者講座でカベルネをテーマにすると、すぐにラフィット、ムートン、ラトゥール、マルゴーというカベルネ・ソーヴィニヨンが80%以上ブレンドされているような有名高価ワインの名前を挙げ、そのあとサッシカイアやペンフォールド707やヴィーニャ・チャドウィックの名前を挙げるでしょう。そのような高額商品の名前を知っていると、カベルネが理解できるのでしょうか。どれほどの人がカベルネを飲みたい時にラフィットを買うのでしょうか。そういうのが典型的な「うんちく」、唾棄すべき自慢用知識です。というか、なぜ多くの日本人はブランドから入るのが好きなのでしょう? 車で譬えるなら、デューセンバーグやイスパノ・スイザの名前を暗記すると、いま目の前にある荷物を店に届けるための車が運転できるようになるのでしょうか。車マニアにとっては、ブガッティ・タイプ35がタルガ・フローリオ5年連続優勝であるとかの知識は常識でしょうが、普通のドライバーにとってはなんの関係もないと同じように、ムートンの73年のラベルがピカソの絵であることは、カベルネはどういうときに使うワインなのかを知るべき初心者にとってどうでもいいことです。シラーとメルロとカベルネの区別がつけられるほうが、ムートンのラベルの画家はだれかという問いに答えられるより、ずっとずっと大事です。
 今回の限られた本数でも、カベルネらしいカベルネとは何か、という問いを立ててからブラインドで飲むと、値段と味は比例しないことがよくわかります。ブラインドでなく飲めば、たぶん、値段が高いもの、有名なものをおいしいと言う人が増えます。おかしな話です。そこにはほとんど病気といっていい強迫観念があります。そのような観念から自由になることが、つまり「私にとっておいしいワインは、私がおいしいと思うワインである」と自信を持って言えるようになることが、初心者にとっての重要な目標になります。対象と感覚と判断が一体化しないと、いくら文字情報的知識を蓄積させたところで、ワインが分かるようにはなりません。
 ちなみに私が好きだったワインは、南アのネイピアの安いほう、ライオン・クリーク・カベルネ・ソーヴィニヨン2013です。透明感があって垂直的できめが細かく堅牢で、見事に整った味。スタティックで内向的で淡々としたところもまたカベルネらしい。これが1400円ぐらいですから、たいしたものです。
 

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