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2018.09.16

アロース・コルトン村のワイン

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 9月15日にアロース・コルトン村のワインについて講座を行いました。
 ブルゴーニュファンと言われる人でさえ、大半は、ジュヴレ&シャンボール&ヴォーヌ&ピュリニー&ムルソー・ファン。アロース・コルトンのようなそれなりにメジャーな産地でさえ、知識はほとんどないというのが実態でしょうから、「アロース・コルトン村のワイン」という言葉を聞いてもイメージができないかもしれません。
イメージができない理由を考えると、
1、この村のふたつのグラン・クリュ、コルトン・シャルルマ―ニュとコルトンを飲んでも(両者を飲んだことがない人のほうが少ないのに)、アロース・コルトン(特に村名ワイン)とは味わい的にあまり関係がないからわからない。
2、両グラン・クリュは3つの村にまたがっているため、どれがアロース・コルトンの味だか相当な知識がないとわからない。
3、アロース・コルトンの村名ワインは、この村の名声ゆえにそれなりに高価だが、その味の魅力を理解していなければ価格の正当性がわからず、需要がなく、ゆえに日本ではあまり見かけず、ゆえに飲む機会が少ない。
 もったいないことです。アロース・コルトンの村名や一級は実に優れたワインです。風格と存在感があります。田舎風味の地酒ではまったくありません。また、これが重要ですが、アロース・コルトンという視点からコルトンとコルトン・シャルルマ―ニュを飲むと、その意味、よさ、問題点が明らかに見えてくるものなのです。
 今回お出しした赤ワインは、大変に上品な味わいで、非実体的な、抽象的といえるような側面を持っています。つまり、よく言われるような実体的なパワー感の味ではありません。そして気品ある赤という方向性の究極が、コルトン・シャルルマ―ニュの区画、すなわちコルトンの丘最上部のマルヌの箇所の赤ワイン。残念ながらそれは絶滅危惧種です。そこでは皆がシャルドネに植え替えてしまっています。今回のコルトンも、2010年が最後のヴィンテージです。グレート・ヴィンテージである2009年は隙のない完成度と抜けのよさ。2、3年前に飲んだ時よりさらにおいしくなっています。コルトン・シャルルマーニュの区画の赤ワインが滅亡していくという事態を見るに、いかに世の中でアロース・コルトンが理解されていないかが分かります。コルトンの赤の代表区画がブレッサンドなどと思われている状況では、私は情けなくてコルトンの話をする気すら失せます。
 コルトン・シャルルマーニュに関しては、今回お出ししたMoniot-Nieのランゲット区画のワインが圧巻です。普通コルトン・シャルルマーニュは重心が上で水平的でシンプルな、正直グラン・クリュとは言えないようなクオリティです。しかしランゲットは垂直的で高貴で複雑で、風格があります。私は昔からランゲット区画の優越性を繰り返し言っています。飲めば一発で分かる違いです。コルトンの丘の地図を見れば分かるように、ランゲットは真南に向かって突き出した部分。そこに立ってみれば、皆さんも「確かにここは特別だ」と納得されるでしょう。しかしこのことを理解している人はめったにいません。というか、そのよさが分からないのでしょう。お出しした生産者のワインは日本未輸入ですし、他のランゲット区画のコルトン・シャルルマ―ニュも見かけません。高名なネゴシアン、ビショーのコルトン・シャルルマ―ニュもランゲット区悪なので、この生産者のワインの中でも秀逸な出来だと思いますが、世の中の誰がアルベール・ビショーのコルトン・シャルルマ―ニュについて語っているでしょう?もちろんランゲットは白だけではなく、赤も素晴らしいのですが、シャピュイのコルトン赤は日本のどこにあるのでしょう?これだけブルゴーニュが日本ではポピュラーだというのに、実はこういった状況です。グラン・ジュール・ド・ブルゴーニュのコルトンの会場で、私はランゲット区画の生産者たちの前にどれだけ人が集まるものか観察していました。みな、スルーでした。私の味覚のほうがおかしいのかと思ってしまうほどでした。
 もうひとつのLudovic Belinのコルトン・シャルルマ―ニュは、シャルドネ単一ではなく、多品種混植混醸です。普通のシャルドネ単一の白ワインの味わいとは大きく異なる、ダイナミックにうねるような、着地点を自ら探しながらあちこちへと触手を伸ばすような、不思議な味。現存するワインの中で似たタイプを挙げるなら、ダイスのマンブールです。当然といえは当然でしょうけれど。混植混醸だった昔のブルゴーニュはこんな味だったのでしょう。ちなみに区画はル・シャルルマーニュの、アン・シャルルマーニュに接する部分です。ランゲットではないので、やはり形としては水平的で重心が上で、普通のコルトン・シャルルマ―ニュです。それでもこのワインは歴史証言として貴重。まだ残っているうちに経験しておかねばならないワインのひとつではあります。
 ところで先日、シャンピーの前社長ムルジェイさん自身のワイナリーに行った時、コルトン・シャルルマ―ニュが出てきて、「田中さんはコルトン・シャルルマ―ニュのエキスパートだからこれを飲んでもらいたい」と。以前にシャンピーに伺って彼と醸造長に会った時、彼らのコルトン・シャルルマ―ニュを飲んで、「これはいかん。ここに欠けているものが分からないか?ちょっと・・・のワインを持ってきてほしい」と言いました。そして私はそのワインをブレンドし、「コルトン・シャルルマ―ニュは・・と・・の合体から味が完成する」と言い、彼らにそれを飲んでもらいました。彼らは「おおー」と。ムルジェイさんはその時の印象が鮮烈だったようで、今作っているコルトン・シャルルマ―ニュはその田中式。もちろんおいしかった。生産者でさえ、コルトン・シャルルマ―ニュの理想像を明確に描き切れていないのが現実なのです。つまり、本来のポテンシャルはめったに表現されることがない、残念なグラン・クリュ。だから逆に、知る人は知る、趣味のワインだとも言えるのです。今回は、おいしいアロース・コルトンがどれほど素晴らしいかを皆さんにしっかり経験していただけたと思います。

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