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2018.09.08

Rodaro, Friuli=Venezia Giulia

 フリウラーノは役に立つワインだ。あまり強くないが比較的すっきりした香り。たっぷりとしたボディとソフトな質感と遅い流速と低い酸。イタリアの白ワインでそういうブドウ品種は少ない。多くは案外とタイトで酸が高いものだ。例えばチーズなりチーズソースのパスタに何を合わせるのかと問えば分かる。パッセリーナでもトレッビアーノでもフィアノでもカタラットでもない、フリウラーノこそが第一のチョイスだと言いたい。

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▲ロダーロでのテイスティングの時に出されたチーズプレート。地元名産のモンタージオとフリウラーノの相性があまりに素晴らしく、ついつい食べ過ぎてしまう。


同じフリウラーノでも堂々とした太さを求めたいならコッリオがいいだろう。しかし繊細さが必要ならばコッリ・オリエンターリということになる。ロダーロの畑はアルプスから50キロ、アドリア海からも50キロという、山と海のちょうど中間地点にある。このバランス感がいい。悪くいえば個性が弱いのかも知れないが、くせや過度な自己主張がなく、期待する特徴が素直に表現されているという点で、ロダーロのフリウラーノは基本の味といえるワインだ。

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▲パオロ・ロダーロ氏。迷いなく自らのスタイルを追及している。



現在の当主パオロ・ロダーロで6代目となる、1846年創業の老舗ワイナリー。所有面積は135ヘクタール、うちブドウ畑は57ヘクタールと、家族経営ワイナリーとしては相当な大規模である。輸出比率は40%と、規模を思えば少ない。しっかりと地元で評価されているワイナリーだし、だからこその順当で素直な味なのだ。個性が強い、コメントを並べやすいワインというものもあり、概してそういったワインが輸出市場では評価されやすい。いや、輸出市場ならずともイタリアの評価本でも事情は同じだ。個性が弱いワインはそこそこの品質で安価といったタイプ(1200円のピノ・グリージョとか)ならスーパーマーケット等で売られるだろう。だから輸出市場で最も目立たないのは、普通の味で、高品質で、相応の価格というワイン。寿司店を例にするなら、回転寿司と銀座のミシュラン星付き店のあいだの、地元に根差した、ランチのおきまり2500円といった店。しかしそれが確実においしいというのは経験上知っているはずだ。だから私はロダーロを訪れた。パオロは会うなり、不思議そうに、「なぜうちに来たのか」と聞いてきた。それはそうだろう。フリウリで外国人が行くワイナリーは決まっている。皆さんもご存じの3、40軒ほど。それだけでは私が知りたいことが知りえない。

 テイスティングはクラシコ法のスパークリングから。ブリュット・ナチュールはシャルドネ90%とピノ・ノワール10%のブレンド。収穫は820日だからフランチャコルタよりは遅い。なぜブルゴーニュ品種なのかと問うと、「最高品質のスパークリングは国際品種だから」。色が濃く、タンニンを感じ、相当酸が強い。「砂糖を入れると一杯以上飲めないから」ドザージュはゼロ。これは明らかに食事が必要なワイン。「他のコピーはしたくない」と言うが、確かに個性が強いワインだ。味としてはピノ・ノワールのロゼ(こちらもノン・ドゼ)のほうが完成度が高い。しかしコッリ・オリエンターリであえてシャンパーニュもどきを造る意味はどこにあるのだろう。

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▲基本となるクラシック・シリーズの白ワイン。ステンレスタンク発酵熟成のストレートな味わいがいい。


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▲フリウラーノ品種。撮影は6月7日。


次にいろいろな品種の白。ピノ・グリはフラットで薄いし、ソーヴィニヨンは単調で抜けが悪いのに苦い。シャルドネはおいしくないに決まっているからパス。こうしたワインを飲むと、つくづくフリウリの国際品種ワインが嫌いになる。それに対して当然とはいえ地場品種3つは見事な出来。エネルギー感が高く、安定感がある。リボッラとマルヴァジアはどちらも構造が堅牢で、コッリ・オリエンターリらしい引き締まった酸がある。そして予想していたとおり、フリウラーノが最も素晴らしい。ハーブとスパイスの香り、なめらかでとろりとした質感、キビキビしたリズミカルな酸。飲んだあとに味が持ち上がっていく余力と、絶妙な華やぎは、これまでのワインには見られなかった特質だ。「畑があるチヴィダーレ・デル・フリウリのロカリタ・スペッサは昔から最上のフリウラーノが収穫できる土地とされてきた」。問題は、そのようなフリウラーノにとって最上の土地で、他の品種のワインを植えねばならないことだ。彼らの責任ではない。消費者の無理解がこのような事態を招く。ポムロールはメルロを植えればいいのであって、シャルドネやマンサンを植える必要はないと誰もが知っている。それはマーケティングの成果であり、教育の結果である。グラヴナーがリボッラ・ジャッラのみに特化したように、誰もがそれぞれの土地で最上の成果を挙げるブドウに特化することができれば、フリウリワインの質は遥かに向上する。

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▲ロダーロの畑はどこも水はけ、日当たりに優れた斜面にあり、ワインには斜面特有の抜けのよさがある。環境保全型農業の認証を取得しているが、年に1回だけ除草剤を使う。これでオーガニックになれば、少なくとも除草剤を廃止すれば、どんなに品質が向上することだろうか。除草剤使用は残念でならない。


フリウラーノ以上に感心させられたのが地場品種の赤ワイン、スキオペッティーノ、レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ・ロッソ、ピニョーロだ。ロダーロの赤がこんなによいとは知らなかった。クリスプで垂直的できめが細かく香りがフローラルで華やかなスキオペッティーノ2012、キビキビとして品格が高く濃密な味(しかし色は案外と薄い)のピニョーロ2010。そして丸みがあって伸びやかでダイナミックなコクがあるレフォスコ2009。普通、この3つのワインはレフォスコが一番見劣りするものだが、ここではむしろレフォスコがいい。「これこそが私の品種」とパオロが胸を張るだけある。

これらRomainシリーズと名付けられた赤ワインは、すべて遅く収穫して2カ月から6カ月のあいだパッシートをかける。つまりはアマローネと同じ、また既に述べたモスキオーニと同じ製法である。そうするとアルコールっぽく感じられたり、フレッシュさが失われたりする可能性もあるが、ロダーロの赤はどれも鮮度感を失っていない。特にレフォスコ2009年に至っては既に長い熟成を経ているにもかかわらず、若々しいエネルギーがある。見事なワインである。

 

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