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2018.10.26

ラ・クラープのシャトー・リヴィエール・ル・オーのオーナー、エリック・ファーブル氏来日セミナー

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ラングドックのグラン・クリュのひとつ、ラ・クラープの有力な生産者のひとつが、シャトー・リヴィエール・ル・オー。輸入元であるトゥエンティーワンコミュニティの招きで、オーナーであるエリック・ファーブルが来日し、セミナーを開催しました。知人が輸入元にかけあってくれて、私もお話を聞くことができました。
 
ラ・クラープの名前はだんだんと知られるようになりました。ラ・クラープのおもしろさは、その特異な地質・地形にあります。私も既に十回ほどラ・クラープを訪ねているので、このアペラシオンに関してはそれなりに理解しているつもりです。地質図を見ていただくと一目瞭然、ラ・クラープだけ他とは異なります。ここはもともと独立した島であり、ナルボンヌを流れるオード川が運搬する土砂によってナルボンヌとのあいだの海が埋め立てられ、14世紀に大陸の一部となってしまったのです。地質年代は白亜紀です。ラ・クラープは温暖なオード県の太陽の味というより、白亜紀の冷たい質感と内向的な酸が特徴となります。海の近くなのに、確かに海の塩辛さを感じるのに、海の朗らかさや明るさを感じない、緊張感のある味。ですから私は決してラ・クラープがラングドックの代表だとは思いませんが、ラングドックの多様性を示すよい例のひとつだと言えるでしょう。
 
エリック・ファーブルはボルドー出身です。奥さまはシャトー・フルカス・オスタン(最近オーガニックになって素晴らしくおいしい!いま注目のシャトーです)のオーナー一族。そして彼は、1986年から1993年のシャトー・ラフィットのテクニカル・ディレクター。86年、88年、89年、90年と続いたあの偉大なラフィットは彼が作り上げたものです。節度があって引き締まって気高い味わい。まさにラフィットらしいラフィット。その偉業はどれほど強調してもしすぎることはありません。
 
ひとことで言えば、シャトー・リヴィエール・ル・オーは、ラングドックにおけるラフィットの味です。もし彼が選んだアペラシオンがブートナックやフォージェールだとしたら、ラフィットっぽい味など冗談でしかありません。しかし彼がラフィットをやめた94年から探してついに見つけた土地はラ・クラープ。ラフィットとある意味共通点がある味になるアペラシオン。ですからエリック・ファーブルのラフィットスタイルは違和感があるどころか、見事にラ・クラープの個性を引き出しているのです。
 
それは樽を使わないクラシックのほうに、より顕著。特に2005年には驚きました。熟していて重心が中心にあるのに、涼し気なミント、グラファイト、赤系果実の香りがあり、酸がくっきりとして、心地よい緊張感を漂わせます。まったく過熟風味がなく、かといって早摘みのせせこましさやうわずった重心とは無縁。完璧な収穫タイミング。そしてミントとグラファイトと赤系果実といえば涼しい年のラフィットではありませんか!クラシックの赤は、シラー、グルナッシュ、ムールヴェードルのブレンドです。ムールヴェードルが20%も入ると、南国的スパイシーさと粗いタンニンが目立つワインになるものです。しかしシャトー・リヴィエール・ル・オーは極めて流麗な質感。彼はムールヴェードルが好きで、この品種が成功する土地を選んだといいます。畑は海のすぐ近く。そう、ムールヴェードルは内陸だとごつくてマッチョな味になりますが、海のそばだと上品な味になるものなのです。
 
樽熟成しているグラン・ヴァンのほうはカリニャンが含まれています。しかしカリニャンはどうしても武骨なタンニンになります。こちらも明らかにラフィットの痕跡を感じるワインですが、ヴィンテージで言うならカリニャンのせいで95年的で、88年ではありません。私はこのグラン・ヴァンを飲んですぐにある重要なことに気づき、それが正しいかどうか質問しました。答えは私の想像した通りだったのですが、オフレコだと言うので書けません。しかしワイン通の方ならすぐに気づくことだと思います。
 
赤ももちろんよいとはいえ、ラ・クラープはどちらかといえば白の産地だと思っています。なぜならラ・クラープは、ブールブーランクを補助品種ではなく主要品種として用いる例外的なワインだからです。ブールブーランクは極めて晩熟で、今年のように暑い年でも十月中旬から下旬に収穫です。熟していないブールブーランクは酸っぱくて苦い味にしかなりません(それはそれで、ほんの少しブレンドするぶんにはいいメリハリ感を与えるよい素材です)。ところがラ・クラープではしっかりと熟すため、エキゾティックでスパイシーで表現力の高いワインになります。イタリアのマルヴァジア(というか、クロアチアの、と言うべきかも知れません)と近縁だと言っていましたが、さもありなん、です。シャトー・リヴィエール・ル・オーのグラン・ヴァンの白は、今まで飲んだラ・クラープの白の中でも最上の部類に属する大傑作です。
 

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