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2018.11.18

オーガニック・フランチャコルタ

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名前は有名でもいまひとつ必然性が見いだせないワインだったフランチャコルタ。概して高級イタリア料理店でのシャンパーニュ代替品的な位置づけ。シャンパーニュのイメージとブランド力が好きだがイタリア料理店でフランスワインを置くわけにもいかず、似たようなフランチャコルタで満足させる。それはシャンパーニュにもフランチャコルタにも失礼な態度だし、本当にイタリアワインが好きなのかという疑問さえわく。
 
フランチャコルタは食前酒にはならない。パワフルすぎる。それを重たいくどいとネガティヴに捉えるなら、どうぞ薄いシャンパーニュでも飲んでいて下さい。フランチャコルタは見事な食中酒です。単体で飲むと常に気になる苦みやゴツさは、料理と合わさるとそれがフックになって両者が乖離しない。そう捉えると、こんなに使いやすいワインもない。特にサテンの質感の穏やかさ、料理の味を強引に切らない節度ある炭酸ガスの量は、食中酒として傑出している性質だ。
 
2011年から産地を挙げて環境保全型農業を推進し、フランチャコルタコルタ委員会によれば、今では半分の畑がオーガニックないし転換中だというフランチャコルタ。フランチャコルタはオーガニックワインの世界的中心地の一つだ。オーガニック化は本質的な品質向上に明らかに寄与している。数年前までとは違う。ダイナミズム、スケール、ディテール、ライブリネス等すべてが違う。昔の印象を引きずっているなら大いに損をする。
 
今回はフランチャコルタの北端から南端のワインをテイスティングした。フランチャコルタは産地の創始者ベルルッキや最初期に参入したカデルボスコやベラヴィスタの畑があるモレーン土壌のワインと、最近流行りのイゼオ湖東側や産地東部の丘陵や南のモンテ・オルファーノの石灰岩土壌のワインに大別される。瓶写真左から1番目、2番目、4番目がモレーン土壌のワインだ。
 
石灰岩土壌のワインは、シャンパーニュ的な味になる。つまり引き締まった酸と硬質な骨格を備え、分かりやすいミネラルが特徴だ。それはそれでいいが、そちらの方がいいとする論調には反対だ。オリジナルのフランチャコルタのモレーンならではのソフトなフルーティーさ(温暖なイタリアで寒冷地ブドウを栽培して8月中に収穫するような産地なのだ)の魅力を忘れては、フランチャコルタを飲む意味が薄れる。スパークリング=シャンパーニュという一元的価値観に対して異なる美意識を偶然とはいえ提出したところにフランチャコルタの創造性があるのだ。ゆえにシャンパーニュ絶対主義への反動的回帰を目論む言説には警戒が必要だ。
 
ボノミはオーガニックではないが、熟成期間の短いロゼはかれらが除草剤や殺虫剤の使用をやめた後のヴィンテージのものなのでここに含めた。また産地南端の特徴がよくわかるワインだ。それ以外は全部オーガニックないしビオディナミ。どれも見事だ。ビオディナミの1701はワイナリーで試飲した時よりもずっとよい。その時は茫漠とした印象もあったのだが、テイスティングカップで飲むと隠れていたディテールが見えてきて、細かい味が一箇所に留まらずに自然なゆらぎが感じられる。まさにビオディナミである。
 
フランチャコルタ域内にありながら、発泡ワインではなく伝統的なメルロの赤ワインを作るピアノーラが、昔の修道院のワインを再現した、薬草浸漬甘口メルロは圧巻の出来。さすが受胎告知修道尼院の隣の畑。すごいエネルギー。飲んだ瞬間に元気になる感覚。昔の修道院は病院でもあったわけで、このようなワインを飲めば確かに元気になっただろう。これを飲むと、やはりこの地は発泡ワインではなくメルロ、それも甘口メルロを作るべきではないのかとさえ思う。極小生産量でワイナリーに行かないと買えないようなワインだが、ミラノから1時間かけて買いに行く価値は確実にある。

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