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2018.11.15

スイス大使公邸でのヴォー州ワイン試飲会

暑い年が続いているのはスイスも同じ。pHが3.7程度と大変に酸が弱いシャスラーのワインは、これ以上酸味を失わないために早摘みしたりMLFを止める傾向にあるようで、昔とはスタイルが変わってきていると感じます。私はシャスラーは酸がないのが魅力だと思っており、シャスラーをソーヴィニヨン・ブラン的に仕立てるのには反対です。皆、酸酸酸と言う。酸っぱければいいのか?それに、MLFしなければ必然的にSO2添加量は増えるから、味が小さくなる。つまり、日本のワインのプロの方々の多くが称賛する類の固い味(それはミネラルでもストラクチャーでもない)になる。だんだんとスイスワインまでもがそうなってきたかと思うと悲しい。

固くて酸っぱいワインはチーズフォンデュに合わない。しかしヴォー州ワインを評論する人がフォンデュに合うワインとはどういうものかを探求していないはずがない。フォンデュなきヴォー州ワインは考えられないし、フォンデュは我々日本人がヴォー州ワインを飲む必然的シチュエーションでもある。ソーヴィニヨンブラン、シャスラー...、リースリング、シャルドネと並べて相性を比較・評価すれば、昔ながらのほんわかしたシャスラーが一番合うことは明確です。酸があればいいのでもなく、酸がなければいいのでもなく、あるべきワインにあるのがいいのです。その見極めは、産地と品種の特性、美点の理解なくしては不可能です。

 

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会場には旧知の方が多くいらっしゃいました。Pierre LatineのGexさんのYvorneは、いかにもYvorneらしいタイトな構造。これがLa Coteならば固くて変と言いますが、これはYvorneです。同じシャスラーでもレマン湖東側の山に入っていけば当然流速が早くなり、酸の強くなります。彼はオーガニック栽培をしているのでワインの余韻の伸びやミネラル感が傑出しています。彼いわく、「やっとスイスでもオーガニックに注目が集まってきた。生産者も農薬に対して意識するようになった」。「やっと、ですか。そちらの畑の周囲の区画の所有者もオーガニックになってきましたか?」。「いやあ、まだまだ」。斜面の上の区画で農薬を使われたら流れてきてしまいます。これは産地全体で取り組むべき課題なのです。スイスは人件費も高いし、合法とは言えないような労働力に依存しようとする国ではありませんから、そして仕事が大変な急斜面が多いですから、オーガニックが難しいのは分かっています。しかし世界遺産であるラヴォーの畑は遠目にはきれいでも近くに行けば農薬まみれで幻滅してしまいます。消費者がさらに意識的になる必要があります。

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Domaine du MartherayのFechyのプルミエ・グラン・クリュはさすがに優れた畑の味。この村のワインは流れのきれいさと中心密度の高さのバランスがいいと、いつも思います。隣に駐日スイス大使がいらしたので、Fechyの素晴らしさについてお話していました。彼に「なぜスイスチーズとスイスワインをセットで訴求しないのですか。いま日本ではチーズブームですよ。フォンデュとラクレットはどこにでもあります。それらの料理にはスイスワインだというメッセージをもっと伝えるべきです」と言うと、「日本人はチーズには日本酒が合うとみな思っているからワインを飲まないではないか」、と。あらあら。チーズと日本酒の相性は恐ろしく難しいものです。だいたいは日本酒のアルコール感だけがあとに残ってしまいますし、多くの現在の日本酒は重心が上ですから根本的に合わないものが多いのです。それは日本酒の問題であって相性の問題以前だとは思っていますが。

以下のグラン・クリュは、定番ですが、さすがです。エペスの軽やかさ、デザレイの緊密感とパワー。久しぶりにヴォー州のワインを堪能しました。

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スイスのイベントだけあって全体の雰囲気は極めて上品。人も上品。この独特の品のよさに共感できるなら、スイスワインは高くとも他にかわるものがありません。

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