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2018.11.20

初心者講座 リースリング

 

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カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シャルドネと続いた初心者向け講座品種編の第四回目。リースリングについてお伝えしました。
    リースリングはワイン好きではない人にとっては日本の日常生活になくても困らない品種です。一所懸命「リースリングはフードフレンドリーだ」、「リースリングをカジュアルな集いの場に」と言ってプロモーションしようとしても、それは無理です。
   リースリングを日本食に合わせるのは相当難しい。なぜならリースリングは固く、日本食は柔らかい。リースリングは極めて垂直的で、日本食は水平的。リースリングは硬質なミネラル感が特徴で、日本食はジューシーな旨味が特徴。どんな観点からも合致しない。「繊細な日本食にはアルコールが低いリースリングが合う」といった説明を聞いた事があります。しかしそれが正しいなら、アルコールがワインより高い日本酒は合わないはずです。「日本食には酸がないので酸が強いリースリングを合わせるとバランスがよくなる」という、日本で一般的なマリアージュ理論に至っては、実際に試したことがあるのかと疑ってしまうほどです。例えば海老天ぷらと辛口リースリング(ラインガウのグローセス・ゲヴェックスとか)を合わせると、海老の甘みや粘りがなくなってしまい、天ぷらがまずくなる。天ぷらと古典的なビンテージの酸っぱいシャブリ(モンテ・ド・トネールとか)の組み合わせも最低ですが、それと並んでひどい。そして酸があるから日本食に合うというなら、酸がない日本酒は合わないということになる。それはおかしいと経験上分かります。つまり、ここで合う合わないを決めるのはアルコールでも酸でもないはずです。私は昔、日本を代表するワインジャーナリストの方々とドイツワインの代表者の方々がドイツの和食店で集まって、ドイツワインと寿司と天ぷらを合わせてそれがいかに素晴らしいマリアージュかを確認するという会でお話を伺う機会がありましたが、非常にインパクトのある会でした。最高の味覚を持つ方々というのは、こういう組み合わせの味を良いと言うのかと勉強になりました。ともあれ自分が美味しいと思えないものを美味しいとは言えません。私はノーコメントを通しました。
   リースリングは飲み手の意識を集中させる力と複雑さがあるため、カジュアルな集まりで歓談しながら飲めません。ベートーヴェンの交響曲がそういった場に流れていても邪魔になるようなもの。だからといってベートーヴェンの音楽が悪いわけではなく、それを流す人が間違いなだけ。適所適材はあらゆる文化的消費の基本です。
   つまりリースリングは高貴品種の中の高貴品種であり、ゆえにマリアージュやパーティーといった文脈依存を自己存立の前提としない。リースリングとはワインだけで鑑賞するに最高の品種。ゆえにワインファンにとってはなくてはならないが、ワインファンではない一般消費者にはなくても困らないワインである、という最初に述べた命題につながるのです。自分にとっては、これこそ初心者がリースリングに向かう際に最初に知っておくべき姿勢だと思っています。オーストラリアで8番目に栽培が多い品種だとかの情報から入っても仕方ない。
   
   最初は三本、リースリングを含めた3種類の品種のワインを出して、どれがリースリングですか、と聞きました。リースリングについて一切の情報がない人はさすがに初心者でもいません。リースリングとはこれこれの特徴があります、と誰かからどこかで聞いています。その特徴の代表とは、リースリングは酸っぱい、か、リースリングはフルーティ、でしょう。出した三本は、シャルドネ、リースリング、ヌラグスでした。シャルドネは相当酸っぱい。ヌラグスはフルーティ。この投稿を読まれている方は、どうしてヌラグスとリースリングを間違えるのか、と思われるでしょうが、それは先入観次第です。シャルドネもしかり。多くの人は、シャルドネは樽が効いたコッテリした味だと思っています。お出ししたのは樽を使っておらずマロラクティック発酵なしのマコンです。相当酸っぱい。そして酸っぱい=リースリング、と判断します。最大の問題点は、リースリング=ペトロール香という往年の教育の影響です。ペトロール香がしないものはリースリングだと思われません。ところが良いリースリングはペトロール香がしないものです。さすがに最近はリースリング=ペトロール香とは言いませんが、昔どこかでそう聞いてそのまま情報を上書きしていない人は、そう信じています。
   そのあとは五本のリースリングをテイスティング。本当に素晴らしいワイン。1番目のワインは完全に鑑賞用。完璧に近いリースリング。4番目はコッテリして中では料理向けの個性。3番目は明るい性格で、1番目と4番目の中間。それぞれ、ドイツ、フランス、オーストリア。いかにも。2番目はクレア・ヴァレー。タイトで生真面目。新世界のリースリングの代表の一つ。そして5番目は必ずしも最上と言えない場所であってもリースリングは高貴な性格を失わないという好例、グーツワイン。
   カベルネやピノはここで飲まずとも素晴らしいワインを飲む機会は沢山ありますが、リースリングの場合はそう多くはない。しかし最上のワインを飲んでおかないとリースリングは永遠に分かりません。なぜなら文脈依存型ワインではないからです。

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