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2019.02.08

ジャパン・ワイン・チャレンジ授賞式&ワイン・イントゥー・ウォーター、チャリティ・オークションー

汐留のコンラッドホテルでジャパンワインチャレンジのトロフィー受賞生産者や代表者の方々への賞状授与式。審査員代表として私がプレゼンターをさせていただきました。

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そのあと、高円宮妃殿下や各国大使のご臨席を賜わり、水のない国で井戸を掘る運動資金を作るためのチャリティオークション。高円宮妃殿下のスピーチのあとに、私がスピーチを仰せつかりました。ケンブリッジ大学を出られた妃殿下の美しい英語のあとで私のつたない英語とは申し訳ない。話したことは、世界各国には沢山の知られざる美しい個性があり、それらは一つの尺度で優劣をつけるべきものではなく、ひとつひとつの存在の中に踏みいって本質を見る努力をすべきである。そしてそうした未知の美しさを発見して世の中に知らせるのが我々の責務である。といった内容。目の前にアルメニアやクロアチアの大使がおられたので、ヴォスケハットやアレニ・ノワール、ポシップやブラヴァッチ・マリを例に挙げて話しました。例によって急に言われて即興スピーチですが。

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それにしても、こうしてトロフィーワインや日本酒を飲むと、ジャパンワインチャレンジとインターナショナルサケチャレンジがいかにユニークか分かります。普通ならトップにならない作品がトロフィーです。

例えばベスト日本ワインは、都農ワインのスパークリングうめわいん。甲州でもメルロでもなく、ブドウですらない、梅を発酵したもの。日本ワイン関係者全員が卒倒するか激怒するか嘲笑するか、でしょう。日本のワインのプロは、こうした作品がブラインドで出てくると、イレギュラーだから判断停止してしまうか、梅は補糖と加水なしにはワインにならず、不純であり、炭酸ガス注入式は邪道であるとして却下するでしょう。それは原理主義です。結果より理屈優先。しかしこのワインは、ミネラル感、構造、バランス、垂直性、余韻の長さといった普遍的評価項目において優れているだけでなく、純粋に美味しい。さらに、地元名産の果物の素晴らしさを知らしめる役割をしっかり果たしている。そして商品企画力、具体化の技術において卓越している。他にはないユニークな美味しさを初めて作り出したこと自体、絶賛されるべきものです。そもそも宮崎で無理してヴィティス・ヴィニフェラを栽培するのがそんなにいいことか。地元に育つ伝統的な果物を使う方がテロワールのワインとして正しくはないか。さらに言うなら、梅は自根だし、より自然な形で生えている果物ですから、ブドウより自然なエネルギーがある。よく出来たボルドーもどきやブルゴーニュもどきを日本で作っても仕方ない。ウソだと思うなら、このワインを買って試して欲しい。ちなみに外国人審査員は皆評価しました。彼らは美味しいものは美味しいと自信を持って言う。そしてこれが日本でしかあり得ないワインであることを評価する。生産者の方は、海外からの観光客に評価される、と。それは当然でしょう。

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日本酒もしかり。トロフィーを取った岩手の浜千鳥大吟醸は、通常なら評価されない類の酒。固くて厳しい味。しかし大吟醸なのに重心が真ん中にあり、立体的垂直的で余韻が長く、タイトでミネラリーで、しっかり背骨がある。いかにも岩手。兵庫の山田錦を使ってもこの強烈に岩手らしい味を出してくるのがいい。つまりどういう味なのか違う表現で言ってくれ、と、岩手めんこいテレビの方に質問されたので、「岩手短角牛の味、石割桜の姿」と答えました。日本じゅう同じ味のお酒では意味がない。土地の神さまに捧げるに相応しい、その土地らしい味でなければ。

梵の天使のめざめは更に過激な個性。「いろいろ受賞してきましたが、天使のめざめに賞を与えるのはこのコンテストぐらい。普通なら門前払いのお酒」だと。使用するお米は地元産のいろいろな品種ブレンド。山田錦ではなく、普通米さえ使っています。それをフレンチオークで10年熟成。アルコール度数18度、日本酒度マイナス15。日本酒かどうかさえ分からない味。あえて他に喩えるならリブザルト・ランシオ。ものすごいパワー、凝縮度、複雑さ、垂直性、構造、余韻、そして唯一無二の美味しさ。暴れた要素を熟成によってまとめ上げたダイナミックな構成。世に溢れる去勢酒の反対。私は20点満点をつけました。外国人審査員と私は高い点数、日本人審査員は低い点数。同じ話ばかりですみませんが、ユニークなものに対する評価が出来ないのが日本人です。ユニークなスタイルの中にある普遍的な美点に着目すれば、この作品が素晴らしいと即座に分かるはず。似たり寄ったりのお酒、減点法で成績のよい無難なお酒ばかりあってもつまらないばかりか、退化してしまう。今売れているタイプのモノマネをするのではなく、自分が正しいと思う酒を作らないといけない。

口では個性だ多様性だと建前を言いつつ、審査員がら実際にはユニークな作品を正当に評価出来ないなら、異分子排除、画一化に加担しているだけです。建前を言うだけたちが悪い。他人がどうあれ、いいものはいい、と主張できる自信を持つのが大事。欠点を指摘するより、長所を発見するほうが百倍難しいが、百倍世の中のためになるのです。

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