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2019.02.01

モルドバワイン

ソムリエ教本にも載るぐらいにポピュラーな存在になってきたモルドバワイン。ゆったりした厚みのある果実味とソフトなタンニンと酸は多くの人にアピールするし、価格も手ごろなので、一定の人気が出てしかるべき。2000円程度のワインの平均的品質は高いと思う。つまりハズレなし、素っ頓狂なワインなし。数年前と比べて樽の使い方も洗練されてきましたし、タンニンが細かく滑らかになって、ますます飲みやすい。

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▲会場には輸入元ごとにブースが設営されていたが、これはモルドバ大使館のブース。
 
しかし。。。そこまでは万国共通の技術でどうにでもなること。このままでは、メルローやカベルネやシャルドネといったメジャー国際品種の安価なワインというポジションのままです。数十本のワインを飲んでも、正直心躍るワインなし。フラットでエネルギー感弱く要素数少なく余韻短い。現代的洗練を増すと、ますます気になる。もっとキャラクターをしっかり出さないと。土地のポテンシャルはあるのはわかるだけに、大変にもどかしい。
 
単純なレシピを言うなら、甕発酵・熟成にすべき。安い昔風ドイツワインみたいなクリーンさの方向では将来がない。そして赤白品種混ぜて発酵すべき。中間色のアヤを増して、鍋物的な複雑さと一体感の両立を目指すべき。ブドウ価格も上がっているらしく、つまりは価格訴求も出来なくなるなら、将来誰があえて2000円のそこそこのシャルドネをモルドバから買うか。
 
日本では関係諸氏の多大な尽力のおかげでモルドバのほうがルーマニアより遥かにポピュラーだが、同じフェテアスカ・アルバやフェテアスカ・レガーラで比較したら、クリーン&フレッシュでモダンな方向性ならば、ルーマニアの方が標高の高さや石灰岩土壌ゆえに優位に立つように思える。ネガティブなことばかり言って申し訳ないが、逆に私は何故世の中じゅうモルドバをそこまで賞揚するのか分からない。口当たりのいいことを言うのは簡単。それは本心なのか。いまのうちに危機感を持たねば、鉄が固まってからでは形を変えるのが大変になる。モルドバのポテンシャルはこんなものではない。
 
モルドバワインの推進者、遠藤誠さんによれば、モルドバ人の奥さんの親戚たちの自家醸造自家消費用ワインが美味しい、と。そうだろう。黒海系ワインはどこもそうだ。クロアチアもそうだ。輸出用瓶詰めワインとは比較にならない美味しさだと容易に想像できる。つまり、もともと出来ないのではなく、やっていないだけ。なぜか。この問題こそ皆で真剣に考え、是正すべきだ。プロが揃って一元的なフランス中心的価値尺度をもってワインを評価する以上は無理なことだが。
 
会場にいらしたある指導的なワイン評論家の方に、「有名なワインのことばかり話してないでモルドバみたいなこれからの産地をサポートしなければダメだ」と言われた。私は怒って「マイナー産地を無視してきただと?本気で言っているのか?頭からワインかけるぞ、お前」。ここは怒るポイントですね。私は常に主流とは違う視点を提示してきたつもりだが、そんな風に思われているなら努力不足だということだ。しかし私にとってサポートとはその場限りのヨイショのことではない。

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試飲した中ではこの上写真のワインが印象的。カベルネ、メルロ、サペラヴィのブレンド。サペラヴィは強力な個性なので、ボルドー品種クサくない。地場品種ワインにストラクチャーを加える時にすぐにカベルネに頼るのは間違い。キャンティ・クラシコを反面教師にして欲しい。カベルネの代わりにサペラヴィだ。
 
最も素晴らしい点は、自然な質感と暖かみと包容力。木桶発酵、スラヴォニアオークの大樽熟成ならでは。ステンレスとバリックだけではモルドバのテロワール自体の美点を相殺することになる。何がモルドバの取り柄なのかを考え、それをどう技術的に実現するかを考える時、このワインのつくりは良い参考になるはずだ。この時の問題は、何がモルドバらしさなのか、というテーマでの突っ込んだ議論がないことだ。らしさの自覚、共有なくしてアペラシオンという意味での産地の形成はあり得ない。ただ物を生産しているだけではワイン産地とは言わない。
 
とはいえこのワインもやはりディテール、動き、余韻が弱い。モルドバにビオディナミワインはないのだろうか。
 
 

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