« ドメーヌ・ツィント・ウンブレヒト当主、オリヴィエ・ウンブレヒトのインタビュー | トップページ | Terroirs & Millesimes En Languedoc 2019 »

2019.04.08

エルヴェ・ジェスタンとの雑談

 醸造長を務めるシャトー・ダヴィーズのシャンパーニュを携えてエルヴェ・ジェスタンが来日した。「私はワイン醸造家であってプロモーションは自分の任ではない。プロモーションツアーなどには行かない」と言っていた彼が来るとは驚く。シャトー・ダヴィーズの輸入にかかわる人たち、そして日本のワインファンが、世界でもっともビオディナミとエルヴェ・ジェスタンについて理解しているからだ、と考える以外に説明はつかない。つまり、プロモーションではなく、魂と霊の交わりのために彼は来たのだ。

 既に多くの方々が来日したエルヴェ・ジェスタンの話を直接聞いたはずだ。私が何か付け加えて話すことがあるとは思えない。内容の濃いインタビューはこれから多くのメディアに掲載されるのだから、私が“インタビュー”するなど僭越だ。だからここではエルヴェ・ジェスタンと私の一時間半弱の軽い雑談を載せて、エンターテイメントの役に立とうと思う。


2

 

 

田中・お久しぶりです。何か月か前にメールしたじゃないですか、ブルゴーニュからパリにのぼる途中、エペルネで会えるかと。返事がなかったが。

ジェスタン「あの頃はセラーの仕事が忙しくてそれどころじゃなかったから」。

・その時に持参しようと思っていたカップとコースターを今持ってきた。

「ああ、このコースターは君の知り合いが私にこの前見せてくれた。レッヘル・アンテナで計測しようとしたらアンテナがまったく反応しない。不思議だ」。

・外乱要因を遮断してある種の閉鎖空間を作ろうというのがデザインの意図だから、アンテナが反応しないのは当然。というか、自分が考えたセオリーが実証されてうれしい。ペリエのグラスをコースターに載せる前と後で水のエネルギーがどう違うかを計測してみよう。

Photo_1



(レッヘル・アンテナで計測して)「載せる前は600。エネルギーがとても少ない」。

・計測するまでもなく飲んでみれば分かる。

「どのくらいの時間載せておけばいいのか」。

1分もあればじゅうぶん。

「おお、載せたら同じ水が16000になった」。

・ね、効くでしょう?載せる前と比べて味が大きくダイナミックに。しかし16000という数字が多いのか少ないのかわからない。

「普通のワインで12000、オーガニックワインで17000、ビオディナミワインで最高30000まで行く。先日DRCのコルトンを計測したら29000だった。コルトンの丘は古えの時代スピリチュアルな場所だったと思う」。・

・コルトンの丘はそうでしょう。それにしてもペリエで16000ならたいしたものだ。コースターが何かを与えているわけがないのであって、もともとワインなり水なりが持っているはずのエネルギーが外乱要因によって失われるのを防いでいると解釈している。どうしてこれを制作しようと思ったかと言うと、プロワインのような試飲会場で飲むワインの味がまずいから。あなたもそう思うでしょう?

「ああ、そう思う」。

・それでいいのか。ワイナリーで飲むとおいしいビオディナミワインがそういう場ではひどい味になるのはなぜか、と。

「これは売っているのか」。

・売ってくれと言われれば作るけれど。私の作ったコースターの話はそのぐらいにして、今日はあなたが最近気になっていることを教えて欲しい。

「クロ・デ・キュミエールはまだまだ整備されていないし、前オーナーの家は廃墟のままだし、、、」

・銀行はお金を貸してくれないのか。

「まだ何も商品を生産していないのだから、事業計画が受理されない。シャンパーニュは売れるまでに時間が長くかかるからしかたない」。

・南東の角のあの家はどのみち使わないのだから、あの区画は売却して原資にすれば整備がもっと進展するのではないか。

「それは絶対にありえない。クロの中に他人が入り込むなんて!」

・ならば時間がかかるのもしかたない。

「この前君がクロ・デ・キュミエールで話していた自根の計画は進めている。しかしブドウを自然の木に這わせて育てる話に関しては、適当な木を見つけ出せていない」。

・できることからやっていけばいいと思う。

「いま最大の関心事はアイリッシュ・タワーだ」。

・なんですか、それは。

「高さ最高2メートル、普通は06から15メートルほどのタワーで、バサルトでできている。その上には内角60度の三角錐が載っている。これを畑の中に置くと不要な電磁波が吸収される」。

・電磁波の悪影響は我々の共通の関心事。あなたと私はだいたい似たようなことを考えているものだが。

「あとはコスミックエネルギーを媒介するケイ素とテロリックエネルギーを媒介する火山硫黄との関係について」。

・ケイ素と炭酸カルシウムではないのか。私はそのふたつが対応関係にあるとみなしてきたが。

「いや違う、ケイ素と火山硫黄だ。あと最近研究しているのがラコフスキー・サーキット。これは第二次大戦前に活躍した医師ジョルジュ・ラコフスキーが発明した銅線で作るオシレーター。現在のブドウ栽培ではミルデュー対策に銅を使う。ビオディナミでも銅を使う。しかしその発想はどこかおかしい。生体バランスが崩れるから病気になるのであって、生体バランスを整える方法を考えるのが本筋ではないか。土に差した銅線を上にのばして環を作り、一部分は接触しないままオープンにして、その環の中にブドウの幹が入るようにする。開口部は通常なら北に向ける。君の作ったテイスティングカップも銅の環がついているね」。

・だから、別々のところで似たようなことをしているものなのですよ。銅には何かの特別な働きがあると思っていろいろと実験した。このカップの銅の環を用いて外乱をトラップしようと思った。銅を直接畑に散布するのは確かにおかしい話だ。私は誘引用ワイヤーを鉄から銅に替えて大地アースに繋ぐことでミルデューは相当抑制されるのではないかと、以前あるところで話したことがある。

「現在のビオディナミの方法に囚われていたらいけない。シュタイナーはアルコールを否定しているのだから、ビオディナミでワインを造ることには限界がある。シュタイナーの時代は大量生産の粗悪なアルコールが出回っていたから、それをもとにして彼は反アルコールの立場をとったのではないか」。

・シュタイナーが反対しているのはアルコールを目的としたアルコール飲料の摂取であってワインそのものではないと思う。コーランや旧約聖書の記述を見ても、酔っぱらったら礼拝所に入るな、といったことが書かれている。それは世界中の常識で、何か特別なことを言っているとは思わない。ワインを飲む意味とは、いわば礼拝所、会見の天幕に入ること。それは我々がより高次なものへとつながり、我々を進化させるための手段だ。

「それこそが我々がワインを造る意味だ」。

・ここを明確にしないままビオディナミの議論をするから混乱する。ニコラ・ジョリーは今年11月に来日してセミナーをする予定で、その時どんな内容の話にするかを彼と議論していた時、彼はSO2の問題を取り上げる、と。私は、それも大事だが各論であって、まず根本の意味を問い、そこから演繹せねばばらないと言った。

「当然だ。だからワインは2杯までしか飲むべきではない。2杯までは頭脳が覚醒する。それ以降は酔っぱらう」。

・私にはワインを飲んで酔っ払うということが分からない。ワインをなんだと思っているのか。さて、近年の温暖化への対処は急務。それについてのあなたの考えは?

「ヨーロッパの2018年は非常に暑く、多くのワイナリーで発酵が停止したり、一次発酵とMLF発酵が同時進行したり、揮発酸が発生したりという問題が生じた。私は果汁に石灰石を入れ、月の光を浴びせてから発酵することで対処した。

・太陽のエネルギーが強すぎる時に、多くの人は早く収穫することで対処しようとする。だから最近の多くのワインはおいしくない。ビオディナミ的に発想すれば、太陽のエネルギーが強いとは、その反対のエネルギーが相対的に弱いと考えるべき。だから太陽のエネルギーを減じるのではなく、月のエネルギーを強化しなければならない。石灰は月のエネルギーの媒介者となる。あなたの方法は完璧にビオディナミだ。それではあなたが造ったシャトー・ダヴィーズ・グラン・クリュ・ブラン・ド・ブラン2012年をテイスティングしてみましょう。・・・・・・・・おお、紛れもなくダイナミックなエルヴェ・ジェスタンのシャンパーニュであり、骨太で腰が強いアヴィーズの味。これはワイナリーの前の畑から?

Photo

「そう。2010年の初ヴィンテージは畑の農薬の影響が強く、自分たちで瓶詰めするに値する品質ではなかったからネゴスに売った。2011年は途中の段階」。

・ええ、分かっていますよ。2012年はビオディナミの味になっている。畑の地形を考えればなおさら驚くべき垂直性。大地から天空へと伸びる円柱のような、あるべきビオディナミ・シャンパーニュの姿だ。ではこれを私が作ったテイスティング・カップで飲んでみてください。三つある突起に指を触れるようにして。

「わあ、頭頂からさらに上のほうにぐわっと力が上がってくる」。

・地上性を離脱して天空につながる力がなければ本来のワインではない。もちろんそれはワインの中にあるのだが、通常のグラスでは表現しきれない。上に三つの突起、そして下に四つの足、これが大事。

「そうそう」。

・私もあなたから学ばせてもらった。あなたのセオリーをカップの形で具体化したつもり。だからもちろんあなたのワインは本来の味になる。ただ、これはステンレス発酵なのだろうか。味の広がり方がそんな感じがする。

「このヴィンテージの段階では樽三分の二、ステンレス三分の一。今ではすべて樽発酵。アンフォラ、テラコッタの類は好きではない。なぜなら土にはワインの風味に悪影響を与える鉄やマグネシウムのような金属、有害なアルミニウムのような金属が入っているからだ。発酵は高い位置で、熟成は低い位置で行い、発酵樽から熟成樽には重力で移動させることで、ワインに重力のエネルギーを与える」。

・発酵が高くて熟成が低いという考えには疑問がある。ブドウの死と再生=発酵と考えるなら、発酵は地下で行われるべきで、そのあとワインになって霊的な力を得ると考えるなら熟成は高い場所で行われるべきではないのか。それは以降の考察対象としておいておきたい。もうひとつの疑問はドサージュ。シャトー・ダヴィーズの2012年には4グラムの砂糖が使われているが、なぜ砂糖なのか。なぜムー・ド・レザンではないのか。

「私はムー・ド・レザンは絶対に使わない。発酵していないブドウジュースと発酵したワインのあいだには断絶がある。砂糖とワイン以上に関係がない。砂糖は熱を加えられて結晶化している。生のものはエネルギー・レベルが低く、ワインのエネルギーを引き下げる」。

・その説明は納得できる。それでも砂糖はブドウではないので、やはりワイン=ブドウを発酵したもの、という本義からは逸脱している。おいしいかまずいかではなく、ドザージュは哲学的問題を引き起こす。だから私は昔からノン・ドゼが一番と主張し続けている。ノン・ドゼである以上は純粋性議論に陥ることはない。

「毎年ドザージュは少しづつ減らしている。しかしドザージュはワイン自身が欲しているなら問題はない。レッヘル・アンテナを用いてワインに聞いてみればよい。ワインが望むなら1グラムとか2グラムといった砂糖を加える。人間よりワインのほうがものを知っているのだ。地球上の問題を解決するための宇宙からのメッセージは我々に送られている。宗教家とはそのメッセージを聞き取ることができる人だ」。

・その宗教家に盲目的に帰依したらカルトになる。私は宗教家でなくとも人間は誰でもメッセージを聞き取る力を持っていると考える。ただその力は多くの人にとっては休眠中の種子のようなものだ。ワインとはその種子を発芽させる契機なのだ。

「その通りだ!」

« ドメーヌ・ツィント・ウンブレヒト当主、オリヴィエ・ウンブレヒトのインタビュー | トップページ | Terroirs & Millesimes En Languedoc 2019 »

試飲会等」カテゴリの記事