« 南仏魚料理とラングドック白ワインの講座 | トップページ | オーストリアワイン大試飲会2019 »

2019.06.26

ポルトガルワイン試飲会 Tokyo Grand Tasting 

 毎年大盛り上がりのポルトガルワイン試飲会。今年もまた。

 正直、私はポルトガルワインのよさが、理念的な意味で混植混醸が多いからいい、という以外には、よく分かっているとは言えない。まずいワインは大変に少ないが、そして品質対価格比は優れているが、ゆえに商品として優秀だが、ワインファンとしてみるなら、「とてつもなくすごい、おそるべし、ああああ」と思ったことが、酒精強化ワインを除けば、悲しいかな、ない。純粋にワインと個人との相性なのだろうか。ひとつの決定的な問題は、ポルトガルワインはどれも小さいことだ。ワインを飲んでいる気はするが、ワインの大海に飲み込まれている感じがしないのは、その小ささゆえである。誰もそれが気にならないのか、それとも私の感覚がおかしいのか。果てしてどこかに真の宝石は眠っているのか。

Dsc07487-1

 輸入元探しのワイナリーが多数来日していたので、時間的制約もあり、それら日本未輸入のワインのみをテイスティングしてみた。ご存知のとおり、ワインは人の手を経るごとにその人の味になっていく。クルチエであれ輸入元であれ、ワインにかかわっている人は普通は強大なパワーを持っているので、なおさらその人の考えなり美意識なりがワインの中に入り込んでしまう。それはおいしいまずいの話ではない。生産者が自分で持ってくるワインは、他人の関与がミニマムなので、もともとの味がわかる。何を飲んでいるのかわからない状態のワインは、仮においしかったとしても、勉強の対象としては好適ではない。

 今回ひとつわかったのは、アレンテージョは8割ぐらいが灌漑しているということ。灌漑しているワインは“新世界的な”滑らかでリッチなフルーティさと水平的な形。そして無灌漑ワインは、“旧世界的な”堅牢なミネラル感とメリハリ感と垂直的な形。これに関してはポルトガルであるとかアレンテージョであるとかは二の次で、無灌漑か灌漑かの議論。灌漑してはおいしいワインにはなっても正しいテロワールの味を表現するワインにはなりにくいものだ。

望んでも無灌漑が難しいエリアもあるらしい。アレンテージョでも土壌が風化した花崗岩や砂利、シストで保水性が悪い場所ではたぶん難しいのだろうと思う。無灌漑のワイナリー、Dona Maria Julio Bastosの畑は石灰岩と粘土。つまり保水性の高い畑だ。とはいえ、アレンテージョの中心都市のひとつエヴォラの年間降水量を見ると、629ミリと、多くも少なくもない、ヨーロッパでは普通の数値。これで灌漑が必要なのか。彼らのTouriga Nationalはぴしっとした酸と緊張感のあるタンニンが心地よい、シリアスなワイン。驚くべきはPetit Verdot。晩熟の品種ゆえに、熟さなければ青臭くえぐくなるものだが、このワインはなめらかで濃密で気品がある。この通常ならば数パーセント加えられるだけのブレンド用品種が、単一品種ワインとしてここまでの魅力を放つとは驚きだ。アリカンテ・ブーシェも素晴らしい。タンニンばかりが目立って複雑性や余韻には欠ける、パワフルでも平面的なワインが多いと思うが、ここは違う。タンニンが熟していて果実味がしっかりして酸も力強いため、アリカンテ・ブーシェらしい積極性のあるパワフルなタンニンが浮足だつことなく、スケール感、複雑性、立体感につながっている。

Dsc07489-1

Dsc07490-1

 話はそれるが、ブースにビオディナミに詳しいお客さんがいて、この生産者にビオディナミに転換せよと説得していた。そういう時代になったのかと感無量。私はビオディナミのワインは好きではあるが、最低限の常識程度も知らないので、「お話中申し訳ありませんが、ビオディナミにお詳しいようで、今度11月にルネサンス・デ・ザペラシオンの試飲会セミナーがあるのですが、ビオディナミについての講演をしていただけないかと」と声をかけてみた。「私はたいしたことないが、それなら詳しい人を何人も知っている」と。さすが、ビオディナミ大国日本!

 さて最近のポルトガルワインブームをけん引するヴィーニョ・ヴェルデについて。Agri Roncao Vinicolaの方によれば、「最近はみな単一品種ワインを欲しがる。品種の個性を楽しむ、ないし品種の名前でワインを売るのが一般的になっている」。アヴェッソ、アリント、ロウレイロ、アザルと、単一品種ワインを飲んでみたが、正直大差ないし、あまりおいしくない。味の基本を決めるのは品種ではなく土地なのだから、大差があるほうがおかしい。よい土地であればあるほど品種の味は副次的になっていくものだし、それはワインファンならだれでも知っていることだ。ひとつ本来のブレンドワインがあった。これだけが別次元においしい。「やはりヴィーニョ・ヴェルデは伝統どおりにブレンドのほうがいい」と言うと、「私もそう思う」。「そう思うならそうすればいいではありませんか」。「それでは売れない」。いったいプロも消費者も何を考えているのか。伝統を破壊し、おいしくないワインを何種類も作らせて、いったい何がしたいのか。品種名でワインを飲まないという偉大なポルトガルの伝統を否定してポルトガルワインが好きだと言われても、私にはまったく理解できない。

Dsc07488-1

ポートワインについては、Pocas10 Years Old Tawnyが気に入った。もちろん20年ものもいいが、それは想定の範囲。普通10年ものは、フレッシュさもないし熟成による複雑さや凝縮感もない中途半端な味が多いと思うが、これは力強くビビッドな果実味を保ちつつTawnyならではの酸化熟成風味もほどよく備え、甘すぎず、スケールが大きく、張りがあって、見事なバランス。ルビーポートでさえ、投げやりな安酒ではなく、気合、情熱を感じる充実した味わい。これは大きな発見。小規模家族経営ポートワイン生産者のワインは探求すればおもしろそうだ。

Dsc07497-1

« 南仏魚料理とラングドック白ワインの講座 | トップページ | オーストリアワイン大試飲会2019 »

試飲会等」カテゴリの記事