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2019.08.01

フランチャコルタ・バーがオープン

有楽町阪急のメンズ館3階に、フランチャコルタ委員会が運営するフランチャコルタ・バーがオープンした。月替わりで10種類のフランチャコルタが、グラス1200円から楽しめる。グラスはボリュームのあるフランチャコルタ公式グラスだから、量的にも不足はない。

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この機会にレセプションがあり、フランチャコルタ委員会の方々に話を聞いた。

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日本ではワイン=女性のもの、と思われているようで、男性としては諸々奇異に思うところもあるだけに、場所がメンズ館、アルマーニなどのイタリアブランドの店に囲まれているというのが個性があっていい。フランチャコルタをミラノファッションと結びつけて男性に訴求するのは、ニッチなフランチャコルタ(有名だが実は小さいDOCG)にはなかなか効果的に思われ、特にシャンパーニュやプロセッコとの差別化には有効だ。フランチャコルタは、カッコいい、お洒落なワイン。そのメッセージは客観的に見て、そう訴求するしかないと言えるほど、戦略的に正しい。実際にミラノのラグジュアリーシーンに登場するワインは、フランチャコルタに決まっている。

会社帰りにふらっと気軽にフランチャコルタ、と委員会の人が言っていたが、それではプロセッコの訴求方法と変わらないではないか。何が違うのか。そう突っ込むと、「プロセッコとは質が違う」。「そうですか?これは、いいものもあればそうでないものもある、としか言えません」。安いフランチャコルタと一番高いヴァルドッビアーデネのプロセッコが大体同じ値段だろうが、どちらが質がいいかと聞かれたら、私はプロセッコと答える。そもそも、フランチャコルタとヴァルドッビアーデネのどちらがいいかの議論は不毛にして不適切だ。しかしマーケティングは異なる。フランチャコルタはミラノ郊外と言える開けた場所。行楽地だし、アウトレットもある。ヴァルドッビアーデネは最近でこそ世界遺産にもなって観光地だが、つい最近までは田舎の山の中。都会味か、田舎味か。それぞれに似合う場がある。

しかし委員会作成のバックグラウンド映像は、都会的とは程遠い畑の四季や、動瓶やオリ引き風景。絵をちらと見ただけではフランチャコルタなのかどこなのか分からない。その手の話は全産地同じだ。品質にこだわっているといったセリフをワイナリーのオーナーがしゃべっているが、それとて世界じゅう同じだ。品質がどうでもいいワインなどない。そもそも動瓶やオリ引きはシャンパーニュ製法なのであって、実際にその物まねであるフランチャコルタがいかにシャンパーニュ製法について語ろうとも、みなが思い出すのは物まねという事実である。だからこの映像は、事実のドキュメンタリーとしては正しくともメッセージにはなっていない。強化せねばならないのはイタリアファッションとの、また北イタリアのラグジュアリーとの関係性であり、それを想起させる映像を流すべきである。パーティの席ではプロシュート、パルミジャーノ・レッジャーノ、グリッシーニ、フォカッチアのサンドイッチ、オリーヴが並んでいたが、そのどこにスペシャルなロンバルディア性があるのか。なんとなくイタリアな感じ、でことが済む時代ではもはやない。それではフランチャコルタのラグジュアリーでスペシャルな感覚も伝わらないし、誇り高きミラノ近郊のDOCGであることも伝わらない。伏見のお酒のPRの席にいぶりがっこやなめろうを出すだろうか。

 

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ファッション以外に、フランチャコルタに関してはおおいに訴求しなければならないことがある。それはいまやフランチャコルタの7割もの生産者がオーガニックに取り組んでいるという事実だ。フランチャコルタはヨーロッパのオーガニックのリーダーのひとつ。これがファッション性・ラグジュアリー性との両輪をなし、フランチャコルタを単なる雰囲気もののお酒ではなく、地に足のついた、正統的な存在にする。

客観的にその味を見るなら、フランチャコルタはシャンパーニュよりフェノールを感じる。これを欠陥としての苦みではなく、料理との接点をもたらすストラクチャー構成要素として位置付ける必要がある。一般消費者にも分かるように簡単に言うなら、シャンパーニュは乾杯用にどうぞ、フランチャコルタは食事用にどうぞ、と。そして食中酒として見る時に、ガス圧の低いサテンというフランチャコルタ独特のスタイルの魅力も伝えやすくなる。委員会の人が言うには、「シャンパーニュのキューっとした強さを評価する人が多く、サテンは日本では理解されない。やはりアサヒ・スーパードライ的な飲み口が好きなのでしょう」。情けない話だ。いったいスパークリングワインに何を求めているのか。キューっなら、強炭酸水のほうがいい。

フランチャコルタのひとつの問題は、パッケージングの普通さ、さらに言うならかっこ悪さである。世界にあふれるシャンパーニュ的なワインと何が違うのか。フランチャコルタにとっては見た目は他のワイン以上に大事だ。飲む前からイタリア最上のファッションを感じさせねばならない。

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ちなみに写真のワインは私の好きなバローネ・ピッチーニ。やはり一番おいしかった。全体にフランチャコルタは緩い。モレーン土壌が多いのだから当然だ。その緩さとカッコよさの両立に、男心をくすぐるおしゃれ感があるのだと思っている。

 

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