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2019.09.11

NISHIGINZAでの三社合同試飲会

 銀座NISHIGINZA二階で行われた試飲会。最も印象的だったのは以下のラングドックのメルロ。

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 単一品種ワインだからAOPではないが、産地はカバルデス。しかしこの若い生産者、メゾン・ヴォントナックは常識的なラングドックワインを造る気はなく、ワイン名も、馬鹿、偏見、のけ者、と確信犯的。カバルデスらしいごりっとした芯のあるミネラル感と強いがドライにならないタンニンと高い密度の果実味が、驚くなかれ1800円で手に入るとは。

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 それにしても、輸入元ヴァン・ドールの解説(写真参照)が興味深い。「いわゆる南仏的な『大量生産』『複数品種のブレンド』『過度の凝縮感やアルコール感がある』ワインではない」。ああ!その言葉が意味あるものとして成立するためには、まさに南仏ワインが『大量生産』『複数品種のブレンド』『過度の凝縮感やアルコール感がある』ワインであるという共通見解と、それがよくないものであるという認識が日本の消費者のあいだで形成されている必要がある。ひどいものだ。南仏をひとまとめにするというのも乱暴だが、概して大量生産にならざるを得ないのは、5ヘクタール程度の小さな畑で生計を立てられるほどブドウやワインの売価が高くないからではないか。安く買い叩いているのは誰だろう?自分たちではないか。単価が低ければ生産本数を増やすしかない。それを批判するとは本末転倒だろう。

 複数品種のブレンドがネガティブに捉えられるのは、ブルゴーニュ=理想のワイン=単一品種、という幻想に侵された日本の病気である。南仏やボルドーやウィーナー・ゲミシュターサッツのファンからすれば、その病気を蔓延させた方々のことはいくら恨んでも恨み切れないと思うだろう。複数品種ワインの何がいけないというのか。以前、ポルトガルワイン試飲会に関する投稿の中で生産者の発言を書いた。「ヴィーニョ・ヴェルデは本来は複数品種ワインだし、自身もそれがいいと思っているが、日本の人は単一品種ワインを求めるから、単一品種で瓶詰めする」。皆さんはどう思う?出直してこい、だろう。メルロ単一品種より、自分の知る限り常に、カベルネ・フランをブレンドしたほうが結果はおいしい。私はカバルデスの隣のアペラシオンであるマルペールはブレンドしたことがある。メルロ単一では、当然ながら垂直性がなく香りの伸びも酸の勢いもタンニンの流麗さも劣る。カルカッソンヌの谷の北西の風も降水量も感じない。だからAOPではブレンドが要求される。それは否定すべきことでは絶対にない。

 この問題を生み出すもうひとつの元凶は、ワインを品種で理解させようとする日本のワイン教育である。今回の試飲会では、イスラエル、イタリア、フランスという生産国を問わず、トスカーナやカラブリアという地域を問わず、多くのワインがカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラー、シャルドネだった。つまりはワインを品種名で選ぶ消費スタイルの反映である。本来なら素晴らしいワインが出来るはずの産地でも、消費者が記憶している数少ない品種で単一品種ワインを造ることを強制させられ、二流扱いされる。それが誰のためになるというのか。

 過度の凝縮感とアルコール感という言葉も気になる。降水量が少なく水はけがよい斜面では味わいは凝縮されるのが当然なのであって、それはダメなワインではない。最近は薄いことがいいと思っている人が多いようだが、最近のブルゴーニュの薄さを見よ。収量が多い=薄い=高評価=高価格では、さぞ生産者は喜ぶだろう。とはいえ自然がもたらす凝縮感は、言葉の定義上、ナチュラルなのであって決して過度ではない。過度というのは通常、人為がもたらす。そして人為による凝縮感とは通常、抽出の強さと樽の強さによる外殻的刺激強度のことだ。よって、凝縮感と刺激強度を意図して混同する最近の日本の風潮は、製造原価低減と売価上昇による利幅の拡大を目的とした、生産流通サイドの策略としか思えない。多収量による緩く軟弱なワインが大手を振って歩く状況を改善するためには、凝縮度が高いのはいいことだが人為的に刺激強度を増すのは悪いことだ、と言い直す必要がある。

 南仏ワインが高いアルコールだという印象になってしまうのは、ようするに北の品種であるメジャー国際品種を暑い土地に植えるからだ。誰がそんな品種を植えさせているのか。地場品種でもアルコールが高い品種もあれば低い品種もある。グルナッシュやムールヴェードルは高いしカリニャンやサンソーは低い。だからブレンドしてちょうどよくなるというのが伝統的な知恵だ。しかし単一品種ワインを望むなら、この4品種のうちのどれで造らせるだろうか。それは最も有名なグルナッシュだ。アルコールが高い品種だ。それなのにアルコールが高いと文句を言うのは、これまた本末転倒だ。このような全体を俯瞰できる視点と情報を消費者に与えて正しい消費行動を主体的に行えるように補助するのが教育であって、ワインを品種で理解する、みたいなふざけた考え方で消費者を洗脳するのが教育ではない。

 ちなみに、ワイン名に馬鹿だとかのけ者だとかネガティブな言葉をつけるのは、人名に悪魔とかつけるのと同じく、間違っていると思う。なぜならそのような言葉はワインをまずくするからである。嘘だと思ったら、カバルデスのワインを2本用意し、ラベルをはがし、一本には「カバルデス」と書き、もう一本には「馬鹿」と書いて、ブラインドで二つのワインを飲んでみるとよい。前者のほうがおいしいはずだ。ワインは言葉を理解する。ワインにとってテロワールが大事だと言っているなら、そのように行動しなければならない。

 他に印象的だったワインは、イスラエルのマルセラン。カベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュを交配したこの品種のワインをおいしいと思ったことはなかったが、このワインは今までで一番おいしい。シラーも悪くはない。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロとシャルドネはひどい。ガリレーでは当然だろう。

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 カラブリア、テヌーテ・フェッロチントのグレコ・ビアンコもよかった。このクリーミーさと強さと重心の高さは、バターチキンカレーにぴったりだと思う。同じ生産者のアリアニコのロゼやマリオッコも印象的。どれもこれもカレーっぽいので(カラブリアだから?)、試飲会場の近くのディーン&デルーカでキーマカレーパンを食べた。素晴らしいイメージ・マリアージュだ!

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