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2019.09.06

フランス大使館でのサヴォワ・ワインのセミナー

ワイナリーからの直販比率55パーセント。国内市場95パーセント。フランスにおける地元密着型ワインの代表サヴォワ・ワイン。海外市場狙いの“よく出来たワイン”が氾濫する現在、単に美味しいだけでは面白くない。いかにその土地らしいかが大事だ。フランス産地の中でもとりわけ多い23もの品種が織りなす多彩な味わいは、サヴォワ以外ではあり得ない魅力だ。

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美味しい、面白い、値段も手頃、地産地消的で現代の農産物トレンドにもフィット、フランス屈指のチーズ産地でもあり食文化的にも訴求力大、となれば、売れない方がおかしい。と、私個人は思うのだが、なかなか日本では見かけない。フランスではあちこちでサヴォワ料理店を見かけるから(個人的にはパリ・リヨン駅前やモンペリエで愛用)、それが独自のレストランカテゴリーとして確立されているのが分かるが、日本ではフランス料理はフランス料理であってサヴォワ料理店は検索しても出てこない。それではサヴォワワインの販売拠点もない。だからこうしてサヴォワから生産者たちが来日してイベントを行ってくれるのは有難い。こうでもしないと、いつまで経っても日本ではボルドー&ブルゴーニュで塗りつぶされたままだ。選択肢にすらなっていない状況から少なくとも一歩進んで、サヴォワワインも存在することを知って欲しい。低すぎる望みとはいえ、まずはそこからだ。

サヴォワには6,7回訪問し、そのワインの講座は日本橋浜町ワインサロンでも数回行ったことがある。私が最も好きなフランスワインのひとつ、アルテッスとモレットから造られるセイセル・ムスーも何度かお出ししたことがある。クレピー、セイセル、エーズ、アビム、アプルモン、アルバン、サン・ジャン・ド・ラ・ポルト、クルーエ、シニャン、マレステル、ジョンジューといった産地、そしてジャケール、アルテッス、シャスラー、ルーサンヌ、グランジェ、モレット、モンデューズ・ブランシュ、モンデューズ、ピノ・ノワール、ガメイといった品種。産地名とワインの味を記憶するのはけっこう大変だが、努力しがいのあるワインだ。

 

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今回の発見は、2015年に発足したデノミナシオン、クレマン・ド・サヴォワ。クレマン・ド・ジュラ、クレマン・ダルザス、クレマン・ド・ブルゴーニュ、クレマン・ド・ディー、クレマン・ド・リムー、クレマン・ド・ボルドー、クレマン・ド・ロワールに続く、8つめのクレマン。可能性は大きい。なぜなら、先に述べたように、サヴォワは数多くの品種が使えるからだ。ジャケール40パーセント以上、ジャケールとアルテッスで60パーセント以上という品種規定も順当だ。ジャケールはアルコールが低く酸が高いからスパークリングワインに好適だし、そのスッキリとした風味に対してトロピカルでクリーミーなアルテッスは丁度相補的な役割を果たす。そこにいろいろな品種をアクセントとして使用すれば結果のバリエーションが増す。似たり寄ったりになりがちなクレマン・ド・ブルゴーニュより遥かに面白い。少なくともポテンシャルとしては。写真のクレマンは4品種ブレンドだが、今まで馴染んでいたサヴォワの一般的な単一品種ワインより複雑性と垂直性がある。

 

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複数品種のサヴォワワインは極めて少ない。だが、これは開発しがいのあるワインだ。写真の品種名なしヴァン・ド・サヴォワもクレマンと同じく、今までとは違う可能性を感じさせる。ひとつのレストランやショップでいくつもの品種のサヴォワワインを扱うのは非現実的だとしても、そして単一品種ワインはマリアージュがピンポイントになって使いにくいとしても、これなら便利だ。アルザスのエーデルツヴィッカーやウィーンDACと並んで、ワインにこだわらない和食や中華などの店にお勧めしたい。

 

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写真のアプルモンは今回の白眉。1907年に植えられた自根のジャケール。スッキリサッパリの一言では到底済まない圧巻の力強さとミネラル感と安定感。これはすごい。この生産者の畑には一部花崗岩の礫を含むのも興味深い。通常の石灰だけの畑のワインよりふわっとした空気感や滑らかさがある。つまり結果としては硬軟陰影織り交ぜたワインになる。

参加者の方々は「各生産者の話が淡々と終わってやる気なし」と言っていた。フランス大使館の方曰く、「いつも割り当て時間を超過して喋りまくる南の人に私が慣れすぎたか。事前に短く簡潔にと言い過ぎた」。「リハーサルしてなかったんでしょ?」、「してません」、「それはダメ、あれは話せばいいってものではない」。ワイン生産者は普通、「何年に創業、何ヘクタール所有」みたいな話しかしない。それは資料に書いてある。話さねばならないのはそんな情報ではない。それでサヴォワワインの何が分かる?仕切り役が大事だ。

ちなみにサヴォワのチーズにはジャケール。生産者も口を揃えてその言うし、実際いろいろと試してきた結論もそう。これは分かり切ったことなので、チーズ料理店なら迷わずジャケールを買うべし。

太陽を感じるふくよかなミッドと涼しげな酸を軸とする余韻のコントラストをしなやかな質感が包み込む。それがサヴォワワインの基本的佇まいだ。そこを生かして食卓で楽しんで欲しい。

〈田中克幸〉

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