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2019.11.21

未輸入フランスワイン試飲会

通な味のワイン、フランスワイン好きのためのフランスワイン、つまり肩肘張らないフランスの普通の街場レストランに似合いそうなワインは、フランス大使館商務部が行うこのような試飲会にある。この言葉だけで、日本がかかえる問題を伝えたつもりだ

写真のワインが気に入った。どれもそれぞれのアペラシオンの個性をきちんと伝える、基本の味。消費者はこれらのワインを飲んで産地のイメージを正しく持つべき。しかしそういうワインほど輸入されない。私は周囲のプロ中のプロがどういう感想を語り合っているか耳をそばだてていた。いいんだけどこういうのは売れない、と何度も聞いた。日本は安いか、クセのあるビオか、メジャー品種か、売り文句満載か、のワインの国なのか。普通や基本が不在のまま珍奇に走れば、産地アイデンティティばかりか食文化が破壊される。タピオカ入りではないあんみつはいらない、チーズの入っていない明石焼は売れない、アボカド入りではない海苔巻きはだめ、と言われたらどうする?

 

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写真のロゼはプロヴァンスでは珍しく重心が低い。クロ・デュ・タンプル型。当然この味でなければ多くの魚介類に合わない。しかし日本は、プロヴァンスロゼ=薄い酸っぱい重心高い、を良しとするようで、どれもそうだ。で、ブイヤベース等と一緒に飲んでまずいと言う。なぜ美味しくて料理に合うワインを、変な類型への忠誠から自由に、選べないのか。いまや日本のプロは薄くて酸っぱいワインしか良いと言わない。それを彼ら彼女らは、エレガント、きれい、酸がいい、と言う。ウンザリだ。

 

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カオールは写真一番左がテラス2、残りがテラス3。10本ほどある中で、まずテラス3だけ試飲したいと言うと、何故3かと聞かれた。しかし3が平均して美味しいのは常識。3のボディ感と厚みと適度な骨格と重心中央が、和牛焼肉にぴったり。もちろんそこに4のミネラル感が加わると高級な味わいになって一番いいし、赤身熟成牛肉ステーキ的になるが、4はなかなかない。流行りの9は重心が高く硬くなかなか上下の立体感が出ないから、シンプルな鴨のグリル以外に料理がすぐには思いつかない。2はサッパリシンプル、土が軽い味でチキン的だった。

 

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Lavauというネゴシアンの一連の南ローヌはキャラクターが明確で良い。ムッチリしつつ酸がリズミカルなラストー、第三紀と白亜紀のブレンド(たぶん)でボリューム感と緊密さのバランスがよいジゴンダス、シラー比率が高くメリハリがあるヴァケラス、アペラシオン西部の典型的な味わいのシャトーヌフ。ドメーヌ・レ・グラン・ボワのラストーもゆったりして温かく、いかにも。冬になるとラストーの味噌味の鍋物っぽさがますます恋しい。ドメーヌ・ド・フヌイエのボーム・ド・ヴニーズは特徴的な華やかな香りと引き締まったミネラルのコントラスト、冷たさと流麗さがたまらなく魅惑的。優れた内容と知名度の落差が南ローヌで最も大きいアペラシオンだ。クロ・デ・カゾーのヴァケラスとジゴンダスは素直な性格で、それぞれの個性がはっきり。そして7ユーロ、9ユーロと大変にお買い得。前者にはラムもも肉ロースト、後者には鴨。これぞ普通のフランス料理のための正しく普通な、ごちゃごちゃ理屈のいらないワインだ。

 

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シャトー・ガイヤールのモルゴンは除梗タイプなのでフルーティ、かつ花崗岩なのでソフト。フルーリーに近い。イレギュラーとはいえ、こういうモルゴンもいい。そもそもフンワリタイプの畑のボージョレは全房発酵すべきか疑問だ。これまた完璧にビストロ味。勝手に頭の中で食卓の風景が描かれる試飲会だった。

 

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