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2019.11.19

イタリア、スローワイン試飲会

今年はなんでこんなにイタリアワイン試飲会があるのか。一回に何十人が来日し、それが毎月あるのだから、集合イベントと個別イベント合わせてゆうに年間千回のイベントか。今の日本はイタリアワインが売れて仕方ないようだから、彼らもますます積極的になる。いいことだ。数万、数十万種類の選択肢がある。ただし三千の品種と数え切れないアペラシオンとヴィンテージと造りを理解して日本に溢れる数万のイタリアワインから最適なワインを適材適所で選ぶには、ひたすら試飲し、何十年間も勉強するしかない。だからワインは楽しい!

今日はスローワインとイル・ヴィーニ・デル・ピエモンテ共催の試飲会が表参道ザ・ストリングスで行なわれた。ただ美味しいだけでなく、環境、歴史文化、伝統といった価値を重視したワインを選びのがスローワインだから、出展60余ワイナリーの多くはオーガニックかそれに準ずる栽培。結果として、通常の試飲会を遥かに上回る平均品質。彼らの選択眼は基本的に正しい。

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百本近くをテイスティングして特に印象的だったワインが写真のもの。なぜかトスカーナのレベルが低い。たくさん出品されていたが多くは早摘み味。中で最も印象的だったのはリエチネ。昔のボルドースタイルから随分と変わり、とてもナチュラル。エノロゴのカルロ・フェリーニがいない間に醸造責任者がのびのび作ったリエチネ・ディ・リエチネは、技術的な未熟さ(VAの多さ)はあるものの、ワイン自体の自由なエネルギーを発露させるままにする方向性は正しい。カルロが戻ってこれからどうなるか楽しみだ。

 

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写真のバローロ二本は、それぞれのクリュの個性がよくわかる。フンワリした表層の滑らかさ、優しさの中にがっしりしたダークなパワーと鉄っぽさを秘めるAurelio Aettimoのロッケ・デッラヌンツィアータ、かっちりと滲みのない構成と疎密のむらのない充実度のスタイリッシュなFranco Conternoのブッシア。ロッケ・デッラヌンツィアータを最後に飲んだのは十年近く前、ブッシアは五年前だが、テロワールが変わるわけではないのだから、記憶の中の味わいと当然ながらそっくりだった。いつかピエモンテでのバローロの試飲会には行ってみたいものだ。もちろんバローロもいいが、値段の大差を考えると、Anna Maria AbbonaのLanghe Nebbioloが特に気に入った。チャーミングな赤系果実と花の香りにまろやかな酸。ふわっとした広がりがいい。バローロは、というか多くの樽熟成ワインは内向きの力が強くなりすぎてスケール感・気配の広がり感が出ない。

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プロセッコはValdobbiadeneのBorgoluce、ConeglianoのBaldi、AsoloのCase Paolinがそれぞれの土地のキャラクター、つまりすっきりとした垂直性と流れのよどみのなさ、ふくよかな広がり感と適度な骨格、緊張感のある硬質なミネラルと酸、といった個性を大変によく表現している。ワインだけで飲んでいると、個人的にはAsoloの拒絶的なかっこよさが結構好きだが、これだけの硬質さに対しては砂肝の焼き鳥以外、正直なんの役に立てればいいのかは悩む。プロセッコが通常登場する文脈においては、つまり前菜、つまみ系の小ポーションの比較的柔らかい料理に対してはConeglianoが一番適合性があるだろう。Baldiは今年からオーガニック認証がおりる、注目の生産者だ。畑は斜面。そこがポイントだ。それにしてもプロセッコは、プロセッコという名前にあぐらをかいたワインが多すぎて困る。本来は実に繊細で上品で細やかなディティールのあるワインだが、農薬に依存していてはディティールが出てこないからただの軽い泡でしかなくなる。オーガニックであることは前提だ(BorgoluceとCase Paolinはオーガニック)。

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フリウリではコッリオのRobert Princicのマルヴァージアがよかった。というか、最近マルヴァージアの出来がどこでもよい。昔はこの品種は不愛想で固くて本来備えている華がなかなか出てこなかったが、地球温暖化ゆえによく熟すようになったのか、以前よりふくよかさが出てきて酸のバランスも向上。それでもアルコールはフリウラーノのようには高くならない。

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エミリア・ロマーニャではCantina della VoltaのLambrusco di Sorbara Trentasei 2014のビビッドな酸とミネラルを軸とした精悍な辛口の味わいが気に入った。そしてI Sabbioniのベーシックなステンレス熟成のサンジョベーゼ、I Voli Dei Gruccioni 2016。ワイナリー名から分かるとおり、砂質土壌。しなやかでチャーミングで軽やか。飲んだ瞬間、「ああ、ロマーニャのサンジョベーゼ!なんとスムースで上品な味!」と言うと、オーナーの女性は「でしょう?トスカーナとは違うでしょう?」と。その通りであって、トスカーナ=サンジョベーゼであってもサンジョベーゼ=トスカーナでは決してない。LurettaのGutturnio Superiore 2016も素晴らしい。バルベーラとボナルダのブレンドであるこのDOCのワインは、単体で飲んでいるとやたらにごつく感じる。バルベーラは酸が強いし、ボナルダはタンニンの粒が大きい。オーナーは「Gutturnioを知っているのか、小さなDOCだし無名だ」と言うから、「大好きですよ。行ったこともあります」と言うと、オーナーは「それは珍しい」。「このワインのよさは、単体だとワイルドなのですが、脂肪の多い食品と合わせるとこのごつさが脂肪と噛み合わさっておいしくなること。イタリアワインは料理が分からないと理解できない」。「それがイタリアワインだ。Gutturnioはサラミやチーズと合わせるワインだし、それを前提としている」。

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プーリアのAmastuolaのPrimitivo Lamarossa 2015 は、よいテロワールの味がするプリミティーヴォ。この品種がジャミーでシンプルと思ったら間違い。ここは石灰岩の山のふもとで、ワインはしっかり石灰の味がする。

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アブルッツォはValori、Tenuta Masiangelo両者ともにモンテプルチアーノもいいが、さらにペコリーノがよかった。ペコリーノは魚料理には必須。酸っぱすぎず、適度なグラもあるから、脂ののった日本の魚にはぴったりだろう。正直、昔はペコリーノの表層性が好きではなかった。というか、マルケで成功したからアブルッツォに移入された、ある意味で外来種だから、ワインに深みが欠如していた。今では落としどころが分かってきたようだ。

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シチリアのTenuta di CastellaroのNero Ossidianoはコリント・ネーロ品種の赤ワイン。黒系果実と黒系スパイスの香りで、タンニンは強いもののまろやかで、質感に厚みがあり、けっこう神経質さのあるネロ・ダヴォラやネレッロ・マスカレーゼよりアジア的寛容さがあって親しみやすい。ギリシャやトルコにもある品種だが、追求する価値がある。

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今回のベストを選ぶなら、ピエモンテ、La Colomberaのティモラッソ品種のワイン、Il Montino 2017だ。イタリアの白はすっきりさっぱり固いものが多く、重厚な冬のメインディッシュ向きではないが、これはリッチで腰が落ち着いて、熟成チーズやクリーム系ソースの料理向き。シャルドネと似たところもあり、しかしシャルドネより親しみがあって香りが華やか。もっと知られるべきワインだ。

 

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