70年代のカベルネ、80年代のシャルドネ、90年代のメルロ、2000年代のピノ、と、カリフォルニアの流行りの変遷の後、この10年は伝統復興、マイナー品種、オーガニック、無灌漑、混植混醸といったキーワードで語れるだろう。いまだカベルネ、シャルドネ、ピノだけが、それも高得点系高額ワインがちやほやされる日本の状況は、時代遅れというか、情けないし、つまらない。試飲会に行ってもその三品種が幅を利かせ過ぎだ。ワインショップでも当然同じ。それが日本のニーズの反映なのだから。
現代的動向の中で再評価されるのがジンファンデルだ。伝統品種だし、多くの畑が混植だし、無灌漑だ。あれこれ世界のワインを経験し、多面的な見方を獲得したなら、カリフォルニアの基本はジンファンデルだと思うだろう。純粋に品質を見ても、特に同じ価格では、ジンファンデルのほうがカベルネやピノより余韻が長く複雑で立体的だと思えることは多い。
しかしジンファンデルならなんでも良いわけではない。平地の土系ワインはアルコールが目立って構造が緩くフレッシュさに欠ける。ジンファンデルは岩要素が必要だ。そのような分析的見方をすれば、ナパの平地のローム土壌のフログス・リープは、無灌漑オーガニックとはいえやはりフラットで短いと気付いてしまう。
そもそもジンファンデルを皆どう捉えているのか。アルコールが高くてジャミーでタンニンが強くて樽っぽい下品な品種、ないしちゃちなホワイトジンファンデルとでも思っているのではないか。そういうワインが多いのは事実だ。消費者がそう思っているならそういうワインばかりが輸入される。私はその手のジンファンデルは嫌いだ。しかしそれが正しい認識か、またそれが本質かどうかは別だ。事実上のジンファンデルと、理念的なジンファンデルの間に巨大な溝があると思える。
ではどこのジンファンデルがいいのか。ここで注目すべきがパソ・ロブレスだ。カリフォルニア全産地中最高と言われる日較差(昼は暑いし、夜が信じがたく寒い!)、充分な降水量、そして白亜紀の石灰岩土壌。メリハリ、フレッシュさ、そして傑出したミネラル感。とはいえ101号線の西側にしか石灰岩はない。東は基本、ミオセーンの砂岩や沖積土壌の熱く乾燥した平地。行けば分かるが、西と東では風景が違いすぎるほど違う。というか、東はこの地域では普通の乾いた風景だが、西は緑豊かな丘陵でマコネみたいだ。この西側パソ・ロブレスこそジンファンデルの聖地である。
パソ・ロブレスは11の区域に分かれる。単一区域ワインのラベルにもそれが記されている。西側石灰岩区域は、アデライダとヤロークリーク。テンプルトンギャップとサンミゲルも一部は西側だが、地質的には新しいようだ。標高が高い小区域ヨークマウンテンはパソ・ロブレスではなく独立AVAだ。今回は、パソ・ロブレスとしては、西側あちこちのブレンドであるポロロ、ヤロークリークの超老舗ロッタとアデライダの比較的新しいピーチー・キャニヨンを出した。
ではどこのジンファンデルがいいのか。ここで注目すべきがパソ・ロブレスだ。カリフォルニア全産地中最高と言われる日較差(昼は暑いし、夜が信じがたく寒い!)、充分な降水量、そして白亜紀の石灰岩土壌。メリハリ、フレッシュさ、そして傑出したミネラル感。とはいえ101号線の西側にしか石灰岩はない。東は基本、ミオセーンの砂岩や沖積土壌の熱く乾燥した平地。行けば分かるが、西と東では風景が違いすぎるほど違う。というか、東はこの地域では普通の乾いた風景だが、西は緑豊かな丘陵でマコネみたいだ。この西側パソ・ロブレスこそジンファンデルの聖地である。
パソ・ロブレスは11の区域に分かれる。単一区域ワインのラベルにもそれが記されている。西側石灰岩区域は、アデライダとヤロークリーク。テンプルトンギャップとサンミゲルも一部は西側だが、地質的には新しいようだ。標高が高い小区域ヨークマウンテンはパソ・ロブレスではなく独立AVAだ。今回は、パソ・ロブレスとしては、西側あちこちのブレンドであるオポロ、ヤロークリークの超老舗ロッタとアデライダの比較的新しいピーチー・キャニヨンを出した。
圧倒的である。これを理解せずしてカリフォルニアを語るな、ましてジンファンデルについて勝手にネガティブなイメージを持つな、である。似ているワインはシノンやソーミュールかも知れない。つまりは白亜紀石灰岩の味であり、適度な降水量、斜面、冷涼気候の味だ。なんという品格、なんと整った佇まい。しかしオーガニック自社畑ムスタング・スプリング・ランチのピーチー・キャニヨンは日本に入ってこない。ほぼ会員用で、ワイナリーにもないと言われたが、そこをなんとかと頼んで、キャップシールを付けていない瓶を一本売ってもらった。私は最低限の常識としてピーチー・キャニヨンぐらいは知っていたからここを訪問したまでで、別にピーチー・キャニヨンでなくとも探せばこうした素晴らしいワインはいくつもあるはず。しかし探すべき場所を知らないならば探しようがない。アデライダとウィロークリークの名前は覚えておいて欲しい。さもないと店やレストランにあっても看過する。
ともあれ最近のカリフォルニアワインは昔と違う。昔を引きずった思い込みを上書きしないといけない。このジンファンデルの講座を最初に告知したのは6月だったか。以降毎月募集していたが申し込みゼロ人が続き、今回やっと4人の申し込みがあって開催出来た。お見えになった方は思ったはずだ、なんでこんなに素晴らしいワインに皆興味がないのだろう、と。私はこの講座のためだけにパソ・ロブレスに取材に行っているのだから、しょうもないワインなど出さない。