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2019.11.17

日本橋浜町ワインサロン講座 韓国料理とロワールワイン at 『ヨプの王豚塩焼』

今年行ったレストランの中でも特に気に入ったのが新橋の『ヨプの王豚塩焼』。味のフォーカスが決まっていて鮮烈で精悍。味に力があって上品で香りが伸びやか。そして野菜が多く、酸がしっかり。ロワール的洗練。だからここでロワールワインのマリアージュ講座を開催した。もやっとした小づくりで手をかけすぎた料理が嫌いだし、ワインに合わせにくい。こういう直截な料理とワインの組み合わせから生まれるエネルギーがいい。

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  ▲これらはソーミュールとアンジューのふたつの地域のシュナン・ブランとカベルネ・フランの個性を理解するには最適のワインだ。

 

アンジューとソーミュールのあいだで決定的に味の方向性が異なるというのが、ロワールワインの使いこなしの上では必須了解事項。多くの人は「ロワールのシュナン・ブラン」、「ロワールのカベルネ・フラン」とまとめてしまう。それがすべての誤解のもとだ。アンジューのシュナンとソーミュールのシュナンではまったく異なる。ひとつの料理にソーミュールのシュナンが合うとすれば、ソーミュールのカベルネ・フランでも合うのであって、アンジューのシュナンでは決してない。これは経験してみないとなかなか分からない。仮に誰かが「この料理にはロワールのシュナンが合う」と言ったなら、私はその人はロワールワインファンでもなんでもなく、勝手なイメージでものを言っているだけだと理解する。しかしアンジューとソーミュールには共通点もある。大西洋の影響はロワールを東にさかのぼってソーミュールまでは確実に感じられるため、ワインの味はやわらかく酸が穏やかでフルーティ。この店の料理には、より内陸の大陸性気候の影響が強くなる産地のワインは合わない。

ご参加の方に、韓国料理とロワールワインの組み合わせなんて絶対に思わない、と言われた。それは繊細で気品ある韓国料理に対する誤解だし、ロワール=ミュスカデ、シノン、ヴーヴレ、サンセール、だと思ってしまう日本独特のロワール観(ワインスクールの罪は大きい)の弊害である。

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キムチ、ナムル、熟成キムチ鶏鍋には重心上ですっきりしたソーミュール。そして看板料理である熟成岩中豚肩ロースのサムギョプサルには重心下でこってりしたアンジュー地区のワイン。ニコラ・ジョリーの堂々としてコクがあって重心が下のサヴニエール・レ・ヴュー・クロが最高の相性だった。丘の斜面上部にあるクーレ・ド・セランは重心が高めなことが多いが、斜面下のヴュー・クロは確実にどっしりした豚肉的味だ。どうやってニコラ・ジョリーのワインを使っていいか分からない人が多く、ニコラ・ジョリーという名前でワインを買うだけの人もいると思う。そういう人はこの店で試してほしい。私は食べながら、あまりにおいしくて話すことを忘れてしまいがちになった。今年のベストな相性のひとつだ。こういう経験ができるからワインは楽しいし、勉強のしがいがある!

ご参加くださった2名の方にもご満足いただけたはず。2名の方にしかこの素晴らしさを、またロワールの使いこなしについてお伝えできずに残念。来年またこの店で違う産地のワイン(たぶんブルゴーニュかオーストリア)をテーマに開催したいと思う。

ちなみにこの店は無化調。それが重要なのは言うまでもない。

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