日本橋浜町ワインサロン講座 オーストラリアワインの基本
普通の、現地の人がそれぞれの産地らしい、と思うようなワインをテイスティングしながら、オーストラリアワインの基本を学習。海沿いと内陸、土と岩、火山岩・変成岩・堆積岩といった基本的指標でワインを比較。これをやらないと、オーストラリアという広大な大陸のワインを、単一の「オーストラリアワイン」として捉えてしまい、結局事実とは異なるイメージを消費するだけになる。同じシラーズでも当然産地によって大きく性格が異なる。多くの人がシンボリックに表現する「オーストラリアのシラーズ」など存在しない。
困ったことに、オーストラリアワインについての概論を知る機会は日本では少ない。結局それは国なり産地なりのマーケティング予算に依存するからである。マーケティング機関ワインオーストラリアは日本市場はさじを投げたようだ。シドニー在住のワインオーストラリア日本支部の前代表はいまはカリフォルニアワインの共同代表。彼のような才能がオーストラリアからカリフォルニアに転職してしまう状況がすべてを物語る。俯瞰的で公平な視点から語られる概論の理解なくして個別論は理解できない。しかしオーストラリアワインに関して何かイベントがあるなら、それは通常ひとつのワイナリーの宣伝目的、つまり完全な個別論だ。これはいかん。概論を理解していれば、それこそレストランのメニュー30品目すべてにオーストラリアワインだけで合わせられるのであり、消費者もプロもそれが出来るようになるべきだが、現状はほど遠いようだ。
今のオーストラリアワインは多様で、新しい試みも多くなされ、大変に面白い。しかし変わり種を楽しむには基本をまず知ることだ。今回のワインは、オーストラリアでいろいろ聞いて、またインターナショナル・オーストラリア・ワイン・チャレンジで山のように試飲した結果、持ち帰ってきたもの。品種は絞り、山系ピノと海系ピノ、そしてマーゲレット・リバー、ヒースコート、マクラーレン・ヴェール、クナワラのシラーズ(バロッサは基本だが、この前の講座で取り扱ったので除外)シドニーのチェーン系ワインショップっぽい。私個人が自分用に買いたい味では必ずしもないが、ここで個人の嗜好に走っては基本が分からなくなる。実際、〝らしい〟味だった。自分にとっても勉強になった。驚きはクナワラのシラーズ。クナワラ=カベルネだが、シラーズでもクナワラではカベルネ的な味になる。つまりあのタイトで濃密な味はクナワラのテロワールの個性なのだ。
料理はラムビリヤニを出した。ラム肉とヒースコートのシラーズが恐ろしく美味しい。ご飯にはマーガレット・リバーのシラーズ。オレンジのピノはそれだけで飲めば、典型的に良く出来たピノで、十分に美味しいのに、料理と接点がなく、むしろ料理に負ける。ギプスランドのピノはしっかりと食い込む。分かる人には自明のこと。ワインを試飲した段階で美味しいまずいと言っているだけでは仕方なく、どんな料理とどのように何故合うのか予見できなければ、試飲しても意味がない。テイスティングの際にどこを見なければいけないのか、お伝えした。
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