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2019.12.13

テラヴェール イタリアワイン試飲会

激しく玉石混交。イタリアらしい。多くは早摘みで似たような味。うーむ、テラヴェール取り扱い生産者に限らず早摘み強迫観念病で困ったものだ。早摘みでは土地の味が出ない。本来土地の味を表現するためのビオディナミなりオーガニックなりが、いつのまにか造りのスタイルという表層的な記号にとってかわられ、それもSO2量という物理データの話になり、それが少なければナチュラルだと単純化され、少なくするためにpHを下げ、そのために早摘みせざるを得ず、結果、どれも同じ味。百者百様の自然の味を鑑賞しわけることが大切なはずなのに、同じいかにもなスタイルの味を皆で賞賛。ワイナリーの自画自賛のセリフが紙面を踊れど、結果が同じ表層的スタイルに終始しては意味がない。とはいえ反早摘みを主張する人はいないに等しいから、事態は進行するのみ。そもそもあちこちのビオディナミワイン輸入元は、テロワールではなく生産者が大事と言う。ビオディナミがテロワールのためでなく生産者のエゴのためだと言うのか。

話が逸れたが、しかし、今回の試飲会でも、いいワインは本当にいい。

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まずはジョコリのキャンティ。トレッビアーノやマルヴァジアを含む地場7品種の一部混醸、一部ブレンド。セメントタンクと古樽熟成。軽やかでディテールに富み、鮮度が高く、抜けがいい。理想的キャンティ。高くてまずいクラシコが氾濫する現在、これこそが救い。私はずっと黒白混ぜろと言い続けているが、やっとこうしたワインが普通になってきた。

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トスカーナの山中で放棄された長年無農薬の畑を手入れし直し、ビオディナミで作られるサゴナのマルヴァジア、プリミ・パッシのミネラル豊かな地酒感も素晴らしい。カッコつけた金満トスカーナや無理したファッションビオに辟易している人にとって、これは泣けてくるほど昔の朴訥なイタリアの美意識が残る。

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ツィダリッヒのマルヴァジア・レーテ。厳格なカルソらしいミネラルを軸としつつ、マルヴァジアの色気と緻密さと気品を加え、醸し発酵でコクや弾力性を出した見事な完成度。カルソというと皆ヴィトフスカの話しかしないのはもったいない。正直私はヴィトフスカがそんなに偉大な品種だとは思わない。このエリアの地場品種ならテラーノのほうが好みだし、マルヴァジアのほうがずっと高貴ではないか。余韻が違う。まあ日本のイタリアワインファンにヴィトフスカは大した品種ではないと言ったら夜道は歩けないかも知れないが、そういう人には、トリエステはオーストリアに戻るべきだと言って火に油を注ぎたい。この前トリエステに行った時に、街並を見ながら頭の中でヴィトフスカとマルヴァジアの味を思い浮かべ、どちらが似合うか考えていた。つまりはどちらがオーストリアっぽいか、だ。ま、夜中にぐだぐだやるにはいい話のネタだとは思う。ところで値段は今や9200円。

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イタリア国境から900メートルのところにあるオレンジワインの生産者、スロヴェニアのクリネッツ。ガルデリン(品種はピノ・グリージョ)の厚みとポジディブなパワー感は食欲を増す。ヴェルドゥッツ(品種はヴェルドゥッツォ)2003はひたすらにすごい。白だが強烈なタンニンを持つ品種ゆえ、ここまで熟成できるし、熟成すると暴力性が精神的エネルギーに転化し、包容力と気品が出てくる。しかし19800円。勧めることに気がひけるぐらい高い。

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イ・クリヴィのフリウラーノ・ブラッツアンはいかにもコッリオな重厚感。しかしミネラルの躍動感とキビキビした酸があって重たくならない。よく考えられたワインだ。この生産者はコッリオとオリエンターリの丁度接点のところにあり、両アペラシオンのワインを造るが、私はコッリオの底支え感や温かみが好きだ。

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エミリア・ロマーニャのヴィッラ・パピアーノがアンフォラ発酵させるアルバーナのオレンジワイン、テッラ。アルバーナの構造の確かさ、風格を感じさせ、クセなく、完成度が高い。

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パラッツォーネの5品種ブレンドのオルヴィエートは、相変わらずの安定感。ある意味普通のワインだが、このさりげない多面性が食卓の上のワインとして極めて重要。日本料理店にも是非。フラスカティとオルヴィエートの有用性は再認識されるべき。今は単一品種ワインばかりが多すぎる。

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マテオ・コレッジャのロエロのしなやかさ、上品さは相変わらず。これは定番だろう。

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オーガニック協同組合カッシーナ・イウリのベーシックなバルベーラの素直さ、伸びやかさ。バルベーラはこういうタンニンが弱く、肩肘張らないワインのほうが好き。

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バローロ系ではブリッコ・ボスキス2015の隙のない構成美と充実感に魅了された。他のバローロ、バルバレスコは今回は不調。モンプリヴァートさえも、だ。2013年が多いから仕方ない。

発泡ワインでは、ラ・カウドリーナのアスティ・スプマンテは、普通に上質。無理なく、いかにも、アスティ。それでいい。パネトーネと一緒に家族親族集まって飲むのに相応しいか、が評価基準だ。

帰り際、「昨日、田中さんが部屋の環境が悪いと言っていたから今日は処置した」と言われた。確かに抑圧感がない。昨日も今日も根の日だからその違いではない。やれば出来るなら常にやろう。

 

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