テラヴェール フランスワイン試飲会
テラヴェールのフランスワイン試飲会。ビオディナミワインが沢山。しかし若手の多くは早摘み味。ブドウが完熟していなければせっかくのビオディナミも意味が薄い。亜硫酸を減らすために無理矢理pHを下げようとするのはやめてほしい。とはいえ大半の人は酸と亜硫酸量を見て評価するから仕方ない。
早摘み味ではないワインを選ぶと、おすすめワインは写真のアイテム。撮り忘れたシャンパーニュ、ドラピエのノン・ドゼ、サン・スーフルも。
シャンパーニュはエルヴェ・ジェスタンの造るルクレール・ブリアンが圧巻。ダイナミックで太いミネラル感があり、余韻がリズミカル。リードギターやフルートやハイハットみたいなワインは沢山あるが、ジェスタンのワインにはきちんとベースギターとバスドラムが効いている。いったんそのことに気づくと他が表層的に思える。写真はベーシックなキュベだが、これがいい。
クラマンのリルベールの低ガス圧(4気圧)ワイン、ペルルは、クラシックなブラン・ド・ブラン中最良のワインのひとつ。昔はもっと一般的だった低ガス圧。今では4人しか造らない。通常のシャンパーニュよりずっとナチュラルな味がする。クラマンの品よく柔らかいふくよかさを増してくれるのがいい。
ロワールでは、ブルーノ・チョフィ(ヴィルジニー・ジョリーのパートナーでもある)が引退したシャトー・ラ・トゥール・グリーズの独特な微甘口スパークリング製法を引き継いだZe Bulle Zero Pointe が素晴らしい。さすがニコラ・ジョリーの実質的娘婿にしてマーク・アンジェリの片腕(一時は後継者とみなされた)、つまり、アンジュー二大巨頭の背後には彼がいる。シャトー・ラ・トゥール・グリーズ時代よりさらに美味しく、高密度。そして安い。クーレ・ド・セランも彼がヴィルジニーと関係を始めた2014年以降は確実に味が違って美味しくなった。それがブルーノの影響だとしたら、彼は次元が違う天才なのだろう。
ジュラは昔から好きなモンブルジョのレトワールの独自の個性がいい。シャトー・シャロンより厚みがあり、ダイナミック。老舗にして押しも押されぬレトワールの代表ドメーヌだが、着実に品質が向上している。
アルボワは全体としては個人的には味が暗くて好きではないが、ドメーヌ・ド・ラ・パントのオレンジワインの完成度には驚かされた。すごいパワー。しかし洗練されている。これで初ヴィンテージとは信じがたい。しっかりビオディナミ味。このドメーヌを現在の偉大な地位に高めたのも(昔は普通の味だった)、ここで十年醸造長を務めたブルーノ・チョフィ。
ブルゴーニュではコンブランシアンのアントワンヌ・リエナルトのバレルセレクト、アンファゼが見事。ビオディナミ、低収量、全房発酵、短いマセラシオン、瓶詰めまでの亜硫酸無添加と、典型的現代ブルゴーニュ。しかし早摘みではない。
ボージョレではチャーリー・テヴネのレニエ。軽い土壌のレニエらしいチャーミングなフルーティさに、傑出した厚みと滑らかさ。
コンドリュー屈指の生産者、クロ・ド・ラ・ボネットのIGPのヴィオニエとシラーは、到底IGPレベルの味ではない。コンドリューとコート・ロティのキャラクターを常識的価格で欲するなら、これ。さらっとした造りがむしろテロワールとブドウの質をよく伝える。
タヴェル最上のビオディナミ生産者バラジウ・デ・ヴォシエールの赤ワインは相変わらず突き抜けた個性とエネルギー感。亜硫酸無添加のよいところだけ感じる。
コルシカを代表するビオディナミ生産者、コンテ・アバトゥッチは、ベーシックキュベ(ファウスティーノ・ルージュ)でもさすがの出来。素直さの中の風格とディテール感。無理無く力強い。
しかしテラヴェールの素晴らしいワインは、困ったことに試飲会では十全には本領発揮しない。試飲会場の会議室がいまひとつ。会議室は会議室、ということ。同じワインでもうちで飲むと美味しいのはテラヴェールの取締役が認めている。いつも言っているが、ビオディナミワインは生き物なので場と人の影響を大きく受ける。残念ながらそこまでワインは傍若無人ではないし、自律的にいかなる環境にも対応して不変の自我を主張するわけでもない。試飲環境はある程度は制御可能なことなのだから、しっかり配慮しないとワインが可愛そうだ。とはいえプロなら、ましてテラヴェールの試飲会に来るようなビオディナミワインの専門家なら、本来はどんな味かは推測できるはずだ。
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